2020/11/23

COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析 [11月23日]

COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析 [11月16日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Hokkaido [November 23th, 2020]

   
北海道のCOVID-19新型コロナウィルス感染症の感染者数について,本日11月23日発表までのデータを使用して,感染者数のプロファイルを解析しました。第3波の日別の感染者数のピークは11月17日となりました。
 
北海道のデータについては,前回11月16日に"COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析"において,ピークを14日頃としてこのブログで記載しました。その後,日別の感染者数が11月20日には304名の最大数を記録し,18日からの200名越えが継続しています。ロジステック関数でプロファイルを最適化する方法で今回の解析は前回と同様に行いました。
 
本日は休日の月曜日で,報告される感染者数が少ないと予想されましたが,206名が報道されました。昨日までの感染者数を用いた解析に比して,本日までの数値による解析ではピークの日時が約4時間遅くなりました。この差は小さいと判断し,以下では本日までのデータによる解析の結果を述べます。
 
図1に7月1日から本日までの日別の感染者数(日別obs),日別感染者数の7日間移動平均値(日別ave)を示します(7月以前のプロットについてはこれまでのブログをご覧ください)。累計calcは最適化によって得た累計値の計算値,日別calcは累計calcから算出した日別感染者数の計算値です。
 
急峻に立ち上がっているプロファイル6が第3波(急峻)は,本日の解析では11月17日がピークとなりました。前回のブログからは3日遅くなりました。日別aveが13日から傾きが小さくなり,先週末にピークが来ています。まだピークからの日数が少ないので,解析パラーメータの変動はまだありえます。
 
第3波(急峻)のプロファイルは,環境収容力は6,940名(前回は4,350名),基本再生生産数の相当値は2.0(初期には1週間で2倍の増加ペース)となりました。ピークは17日,"再生産率"もこの日に1.0を切り,本日は0.65と算出されました。第3波(先駆)第3波(急峻)と合わせて本日までに5,500名の感染者数をカバーしており,第3波(先駆)がほぼ収束段階にあることから,今後は第3波(急峻)の分として約2,300名の感染者が見込まれます。この数だけでも4月の第1波の3倍近い大きさです。さらなるクラスターの発生などがあると見込まれる数が大きくなります。
 
日別の感染者数のピークは,実際に感染を引き起こす感染者の数のピークを1週間程度先立ちます。報告される感染者数がピークに達した後の1週間は,感染の増大を引き延ばす,クラスターを発生し易いなど,とくに注意が必要です。
 
図1. 北海道の感染者数プロファイルの詳細と再生産率[図のクリックで拡大]

Data source: 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報: 北海道オープンデータポータル https://www.harp.lg.jp/opendata/dataset/1369.html

図1には,再生産率をプロットしてあります。この再生産率は日別感染者数の計算値から求めたもので,詳細は"COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [10月11日]"(図の見方,説明などもこちら)をご覧ください。

再生産率は,1人の感染者が新たに引き起こす感染者の数,すなわち,実効再生産数に相当する値です。 図2の再生産率を見ると,その高いところの値は基本再生産数の相当値に対応して現れていますが,プロファイルが重なっているために鈍化して低めの値となっています。再生産率が1を越えると日別の感染者数が増えだし,1を切って小さくくなるところでピークを迎えて減少し始めます。COVID-19の感染の拡大・縮小期では,ある時点での感染者数に再生産率を乗じた数の感染者が,1週間後の新たな感染者数の目安となります。 

第3波は,9月5日に再生産率が1を越え,10月24日以降は1.5を超える日々が続きました。11月2日には最大の1.72に達して減少に転じ,17日にようやく1.0を切りました。なお,再生産率は,減少する第3波(先駆)と第3波(急峻)の和が寄与したもので,第3波(急峻)のみに着目したときは,基本再生産数相当値の2.0が初期の値となります。 

再生産率(実効再生産数)は感染の拡大・縮小の目安となる指標ですが,規模の大小を示すものではありません。感染のプロファイルではその幅(ピークまでの期間)と高さが規模を表し,これをまとめた指標が環境収容力です。 このブログの解析では,累計の感染者数から,環境収容力,内的自然増加率(基本再生産数を与える)と変曲点(ピークの時刻)を算出しています。 最大となるピークの日別感染者数は (環境収容力)×(内的自然増加率)/4 で得られます。ピークを概ね1週間経過するまではロジステック関数の最適化の精度が充分ではないので,第3波(急峻)の今後の推移にはご注意ください。

図2 北海道の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [図のクリックで拡大]
 
図2には,最適化解析の詳細として,各プロファイルの日別感染者数の計算値(第2波プロファイル4についてD f1 calc,第3波(前駆)プロファイル5についてD f2 calc,第3波(急峻)プロファイル6についてD f3 calc)などを示します。
 
図2での感染者数の累計値は,累計数の直近の値(最大値)で除して1となるように規格化して累計obs',最適化した累計値も同じ値で除して累計calc'としてプロットしてあります。この2つのプロットがよく重なっていれば最適化が良好であることを意味します。 第3波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は,第3波(先駆)に第3波(急峻)を組み込んだものです。値は,日別感染者数をプロファイルの累計感染者数で除したものに感染惹起期間τを乗じたもので,平均は感染者数の移動平均値(日別ave),増幅率は最適化から得た計算値(日別calc)を,それぞれ累計の計算値で除して算出しています。
 
τ×平均は実質的な増加率であり,前回よりも,最適化で得られるτ×増加率をよく追随するようになりました。これは計算モデルが適切であること,モデルが実際を充分に追跡できていることを意味しています。図2の矢印は,直近の計算値の追随性について留意すべき箇所(赤い矢印)を指します。 
 
図の見方などは,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"もご覧ください。

2020/11/17

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [11月17日]

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [11月17日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Tokyo [November 17th, 2020]

 
東京都が本日11月17日に発表した感染者数は298名です。週の初めは報告される感染者数が少ないのですが,このことを念頭においても,東京都の場合,第3波の累計感染者数の規模は小さく(第2波の約1/3),13日には感染者数プロファイルのピークに達し,現在は収束の段階にあるといえます。

前回のブログ(11月11日)に記載した"東京都の感染指数プロファイルの解析"では,第3波に入ったようだと述べました。本日までの確定日別の感染者数をもとに,これまでと同じ方法でロジステック関数の最適化を行ないました。

図1に,日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),本ブログの解析による日別の感染者数の計算値(日別calc),そして"再生産率"を挙げます。第2波の主要なピークの計算値は7月23日に記した"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"のプロファイルとほぼ同じです。
 
図1. 11月17日発表の東京都の確定日別データ(11月16日まで)に基づいています [図をクリックすると拡大]

図1の"再生産率"は"実効再生産数"に相当する値で,1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1よりも小さければ小さいほど収束に向かう傾向が大きくなります。

再生産率は,10月26日に1よりも大きくなり,11月5日には1.47の最大値となりました。12日と13日の間で1.0を切ってプロファイルのピークに達しました。直近では0.55に近い値となっています。第3波のプロファイル自体の基本再生産数の相当値は2.4程度と得られましたが,10月下旬からの再生産率は,減少傾向の"第2+γ波"と重なっていることから,かなり小さく得られていました。直近では,第2+γ波と第3波がともに減少傾向なので,再生産率も速やかに減少しています。

第2波の主要なプロファイル(日別感染者数はD f1 calc),"第2+β波"(D f2 calc),"第2+γ波"(D f3 calc),さらに"第3波"のプロファイル(D f4 calc)も計算に含め,これらを合成した計算値(日別calc)を図1と図2に示しています。感染者数の累計値(累計obs')に計算値を最適化した結果(累計calc')は図2に示してあります(最新の累計感染者数で除して最大値が1となるように規格化した値です)。

最近の日別感染者数は,ほとんどが第2+γ波と第3波のプロファイルの和で,第2+γ波の寄与が次第に減少し,第3波の寄与が増加しています。

図2. 東京都の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [クリックで拡大]

図2に東京都の感染者数プロファイルの詳細を示します。第3波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は,第2+γ波(主要な第2波とほぼ同じ基本再生産数の相当値です)に第3波を組み込んだものです。τ×平均は実質的な増加率であり,最適化で得られるτ×増加率を追随しています。

第2波の主要なプロファイルの環境収容力(プロファイル全体の累計感染者数)は17,080となりました。第2+γ波はまだ十分には収束していませんが,環境収容力は約9,270,ピークに到達したばかりの第3波については確度が低いのですが,環境収容力は約5,140と算出されました。第3波の基本再生産数の相当値が2.4程度と大きいことから,急峻な増加をたどり,ピークを過ぎると減少もまた速やかです。なお,減少傾向の第2+γ波との和として,感染者数の減少はやがて緩やかになります。

第3波のプロファイルが急峻な増加を示したこと,これに第2+γ波の寄与が加わったことから,第3波の規模は大きいのでは危惧されました。しかし,第3波の経過日数の広がり(プロファイルの幅)が小さいこと,基本再生産数相当値の大きさに比して立ち上がりの傾きが小さいことからピークの高さが小さくなり,結果としての環境収容力は第2波の約1/3と小さい値となりました。

第2波はピークを過ぎて日別感染者数がピークの半分に近くに減ってから,再生産率が1近辺の値に留まり,収束には至りませんでした。日別の感染者数がピークを過ぎても,実際に感染を惹起する感染者数はさらに1週間程度は増え続けます。したがって,今後2週間程度は感染が再度広がってしまう,クラスターが発生し易い,など感染プロファイルを変えてしまう要因がまだまだあります。プロファイルに沿った感染者数の減少となることを願っています。
 
補足: このブログで定義している再生産率は,実効再生産数に相当する値で,プロファイルから算出(累計感染者数の2階微分)されているので滑らかに変化します。再生生産率が1を越える大きな値となってから下降し始めたら,再生産率のカーブを延長してその先が1を切る日をピーク日の目安とすることができます。この目安の日は,後日に解析が進んだ段階の日よりも少し遅めになりますが,簡便にピークを知るには役立つでしょう。
 
図の見方は,以下,あるいは,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご覧ください。

2020/11/16

COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析 [11月16日]

COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析 [11月16日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Hokkaido [November 16th, 2020]

 
北海道のCOVID-19新型コロナウィルス感染症の感染者数について,本日11月16日発表までのデータを使用して,感染者数のプロファイルを解析しました。急速に増大した第3波は11月14日頃に感染者数のピークに達しました
 
北海道のデータについては,前回11月11日に"COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析"としてこのブログで記載しました。日別の感染者数が11月9日には200名に達し,12日からは230名を超える日が続きました。ロジステック関数でプロファイルを最適化する方法で今回の解析は前回と同様に行いました。

図1に7月1日から本日までの日別の感染者数(日別obs),日別感染者数の7日間移動平均値(日別ave)を示します(7月以前のプロットについてはこれまでのブログをご覧ください)。累計calcは最適化によって得た累計値の計算値,日別calcは累計calcから算出した日別感染者数の計算値です。
 
9月上旬までの感染者数と解析したプロファイルについては,これまでのブログの内容から大きな変更はありません。図1では,日別感染者数の計算値も第3波(先駆)として,9月中旬からのなだらかな幅広いプロファイル5をプロットしています。急峻に立ち上がっているプロファイル6が第3波(急峻)です。 

第3波(急峻)は,本日の解析では14日にピークに達したようです。ただ,ピークからの日数が少なく,1週間程度を経過しないと,得られたパラーメータの精度はまだ充分ではありません。

なだらかな第3波(先駆)のプロファイルは,環境収容力(得られたパラメータが継続するとしたときの全感染者数)は1,470名に達し,基本再生生産数の相当値は1.5,ピークは10月17日頃となりました。第3波(急峻)のプロファイルは,環境収容力4,350名,基本再生生産数の相当値は2.4ととても大きいもの(1週間で2.4倍に増加)です。増大が急峻なだけに,減少も速やかなはずです。ピークは14日頃,"再生産率"もこの日に1.0を切りました。本日の再生産率は0.72と算出されました。

第3波は,第3波(先駆)第3波(急峻)と合わせて,本日までに3,900名の感染者数をカバーしており,4月の第1波の4.5倍を既に超えています。この2つの環境収容力の合計は5,800名ですから,今後でも2,000名の感染者を少なくとも生ずることになります。さらなるクラスターの発生などがあるとこの数を越えてしまいます。

日別の感染者数のピークは,実際に感染を引き起こす感染者の数のピークを1週間程度先立ちます。報告される感染者数がピークに達した後の1週間(今週)は,感染の増大を引き延ばす,クラスターを発生し易いなど,とくに注意が必要です。

1. 北海道の感染者数プロファイルの詳細と再生産率 [図のクリックで拡大]

Data source: 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報: 北海道オープンデータポータル https://www.harp.lg.jp/opendata/dataset/1369.html

図1には,再生産率をプロットしてあります。この再生産率は日別感染者数の計算値から求めたもので,詳細は"COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [10月11日]"(図の見方,説明などもこちら)をご覧ください 。再生産率は,1人の感染者が新たに引き起こす感染者の数,すなわち,実効再生産数に相当する値です。

図2の再生産率を見ると,その高いところの値は基本再生産数の相当値に対応して現れていますが,プロファイルが重なっているために鈍化して低めの値となっています。再生産率が1を越えると日別の感染者数が増えだし,1を切って小さくくなるところでピークを迎えて減少し始めます。COVID-19では,ある時点での感染者数に再生産率を乗じた数の感染者が,1週間後の新たな感染者数の目安となります。
 
第3波は,9月5日に再生産率が1を越え,10月26日以降は1.5を超える日々が続きました。11月3日には最大の1.83に達して減少に転じ,14日にようやく1.0を切りました。なお,再生産率は,減少する第3波(先駆)と第3波(急峻)の和が寄与したもので,第3波(急峻)のみを見ると2.4から始まる大きな値でした。
 
再生産率(実効再生産数)は感染の拡大・縮小の目安となる指標ですが,規模の大小を示すものではありません。感染のプロファイルではその幅(ピークまでの期間)と高さが規模を表し,これをまとめた指標が環境収容力です。このブログの解析では,累計の感染者数から,環境収容力,内的自然増加率(基本再生産数を与える)と変曲点(ピークの時刻)を算出しています。ピークを概ね1週間経過するまではロジステック関数の最適化の精度が充分ではないので,第3波(急峻)の今後の推移にはご注意ください。
 
2 北海道の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [図のクリックで拡大]
 
図2には,最適化解析の詳細として,各プロファイルの日別感染者数の計算値(第2波プロファイル4についてD f1 calc,第3波(前駆)プロファイル5についてD f2 calc,第3波(急峻)プロファイル6についてD f3 calc)などを示します。

図2での感染者数の累計値は,累計数の直近の値(最大値)で除して1となるように規格化して累計obs',最適化した累計値も同じ値で除して累計calc'としてプロットしてあります。この2つのプロットがよく重なっていれば最適化が良好であることを意味します。
 
第3波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は,第3波(先駆)に第3波(急峻)を組み込んだものです。値は,日別感染者数をプロファイルの累計感染者数で除したものに感染惹起期間τを乗じたもので,平均は感染者数の移動平均値(日別ave),増幅率は最適化から得た計算値(日別calc)を,それぞれ累計の計算値で除して算出しています。

τ×平均は実質的な増加率であり,最適化で得られるτ×増加率を追随しています。これは計算モデルが適切であること,モデルが実際を充分に追跡できていることを意味しています。図2の矢印は,直近の計算値の追随性について留意すべき箇所(赤い矢印)を指します。

図の見方などは,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"もご覧ください。

2020/11/11

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [11月11日]

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [11月11日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Tokyo [November 11th, 2020]

 
東京都が本日11月11日に発表した感染者数は293名で,8月21日以後の最大数となりました。第3波に突入したと言えます。

前回のブログ(10月25日)に記載した"東京都の感染指数プロファイルの解析"では,感染者数の減少の兆しがありました。本日の解析では,第3波に新たなロジステック関数を割り当ててプロファイルを最適化した結果を用い,最新日のものとしました。感染者数は10月25日には増加に転じており,先週からは拡大の傾向が明瞭となりました。

図1に,日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),本ブログの解析による日別の感染者数の計算値(日別calc),そして"再生産率"を挙げます。第2波の主要なピークの計算値は7月23日に記した"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"のプロファイルとほぼ同じです。
 
図1. 11月11日発表の東京都の確定日別データ(11月10日まで)に基づいています [図をクリックすると拡大]
 
図1の"再生産率"は"実効再生産数"に相当する値で,1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1よりも小さければ小さいほど収束に向かう傾向が大きくなります。

再生産率は,9月4日以降10月25日までは1.0+/-0.08の範囲にありました。その後は1よりも大きくなり,直近では1.25に近い値となっています。10月下旬の再生産率は,減少傾向の"第2+γ波"の影響によって,第3波本来の特質である基本再生産数(1.8と見積もりました)よりは小さくなっています。

第2波の主要なプロファイル(日別感染者数はD f1 calc),"第2+β波"(D f2 calc),"第2+γ波"(D f3 calc),さらに"第3波"のプロファイル(D f4 calc)も計算に含め,これらを合成した計算値(日別calc)を図1と図2に示しています。感染者数の累計値(累計obs')に計算値を最適化した結果(累計calc')は図2に示してあります(最新の累計感染者数で除して最大値が1となるように規格化した値です)。

図2. 東京都の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [クリックで拡大]

図2に東京都の感染者数プロファイルの詳細を示します。第3波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は,第2+γ波(主要な第2波とほぼ同じ基本再生産数の相当値です)に第3波を組み込んだものです。τ×平均は実質的な増加率であり,最適化で得られるτ×増加率を追随しています。第3波については,様子が明瞭となってから1週間程度なのでパラメータの確度はまだ低いままです。

第2波の主要なプロファイルの環境収容力(プロファイル全体の累計感染者数)は17,160ですが,第3波の環境収容力はこの値に近づいていますが,変曲点(ピーク)が来週以降と見積もられ,まだ見通すことはできていません。基本再生産数の相当値は1.8程度と見積もられ,主要な第2波の1.5よりもかなり大きな値です。第2波の7月16日頃のプロファイルの傾きと,現在の第3波の傾きを比べると,第3波の拡大がやや急であるようです。減少傾向の第2+γ波と重なっていることから,第3波の拡大は図の見かけの増加傾向よりも大きいことに注意です。

"第2波"と"第2+β波"は既に収束し,"第2+γ波"は収束に向かっており,第3波が多くを占めています(図2)。第3波の累計感染者数への寄与は既に2,600を越えており,変曲点がいつになるかでプロファイル全体の感染者数が決まりますが,早ければ来週半ば,遅ければ12月に食い込むかもしれません。遅ければ感染者数は第2波(主要)の2倍を超えてしまいます。実効再生産数(再生産率)よりもむしろ,いつピークが来るかに注目です。
 
図の見方は,以下,あるいは,COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご覧ください。

COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析 [11月11日]

COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析 [11月11日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Hokkaido [November 11th, 2020]

 
北海道のCOVID-19新型コロナウィルス感染症の感染者数について,本日11月11日発表までのデータを使用して,感染者数のプロファイルを解析しました。11月7日以降は大きな感染者数となり,急速に増大した第3波はまだまだ先を見通すことは困難です
 
北海道のデータについては,前回11月2日に"COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析"としてこのブログで記載しました。11月4日までは感染者数が最多を更新することはあっても,100名を越えることはありませんでした。しかし,8日には200名に達するなど,以後は大きな数が続いています。ロジステック関数でプロファイルを最適化する方法で今回の解析は前回と同様に行いました。

図1に7月1日から本日までの,日別の感染者数(日別obs),日別感染者数の7日間移動平均値(日別ave)を示します(7月以前のプロットについてはこれまでのブログをご覧ください)。累計calcは最適化によって得た累計値の計算値,日別calcは累計calcから算出した日別感染者数の計算値です。
 
9月上旬までの感染者数と解析したプロファイルについては,先の2つのブログの内容から大きな変更はありません。図1では,日別感染者数の計算値も第3波(先駆)として,9月中旬からのなだらかな幅広いプロファイル5をプロットしています。急峻に立ち上がっているプロファイル6が第3波(急峻)です。このプロファイル6はまだピークに達していないようで,得られたパラーメータの精度は詳細を記述するには充分ではありません。

第3波(先駆)のプロファイルは,環境収容力(得られたパラメータが継続するとしたときの全感染者数)は1,160名に達し,基本再生生産数の相当値は1.6,ピークは10月12日頃となりました。第3波(先駆)と第3波(急峻)のプロファイルは,本日までに2,770名の感染者数をカバーしており,4月の第1波の3倍を既に超えています。

第3波(急峻)の基本再生産数の相当値は2.1程度(1週間で倍増するペース)と大きい値が見積もられました。第3波(急峻)のピークの時期は未だ見越せないのですが,第3波全体としての環境収容力が7,000名に達すると,第1波の約8倍,第2波の約14倍と大きな数になります。これはピークが来週の初めにあるとしたときの見積もりで,ピークが後になるほどさらに大きな数となります。

1. 北海道の感染者数プロファイルの詳細と再生産率 [図のクリックで拡大]

Data source: 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報: 北海道オープンデータポータル https://www.harp.lg.jp/opendata/dataset/1369.html

図1には,再生産率をプロットしてあります。この再生産率は日別感染者数の計算値から求めたもので,詳細は"COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [10月11日]"(図の見方,説明などもこちら)をご覧ください 。再生産率は,1人の感染者が新たに引き起こす感染者の数,すなわち,実効再生産数に相当する値です。

図2の再生産率を見ると,その高いところの値は基本再生産数の相当値に対応して現れていますが,プロファイルが重なっているために鈍化して低めの値となっています。再生産率が1を越えると日別の感染者数が増えだし,1を切って小さくくなるところでピークを迎えて減少し始めます。COVID-19では,ある時点での感染者数に再生産率を乗じた数の感染者が,1週間後の新たな感染者数の目安となります。
 
第3波は,9月6日に再生産率が1を越え,11月3日に1.78に達し,本日は1.5とまだとても大きい値です(2週間で倍増のペース)。この1.5は,減少する第3波(先駆)と第3波(急峻)の和が寄与したもので,第3波(急峻)のみを見ると2.1から始まる大きな値です。
 
再生産率(実効再生産数)は感染の拡大・縮小の目安となる指標ですが,規模の大小を示すものではありません。感染のプロファイルではその幅(ピークまでの期間)と高さが規模を表し,これをまとめた指標が環境収容力です。このブログの解析では,累計の感染者数から,環境収容力,内的自然増加率(基本再生産数を与える)と変曲点(ピークの時刻)を算出しています。このパラメーター数3のの3倍の日数の感染者数のデータがあれば,パラメータの確度は良好となります。しかし,ピークを概ね1週間経過するまではロジステック関数の最適化の精度が充分ではないので,第3波(急峻)の推移にはご注意ください。 
 
2 北海道の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [図のクリックで拡大]
 
図2には,最適化解析の詳細として,各プロファイルの日別感染者数の計算値(第2波プロファイル4についてD f1 calc,第3波(前駆)プロファイル5についてD f2 calc,第3波(急峻)プロファイル6についてD f3 calc)などを示します。

図2での感染者数の累計値は,累計数の直近の値(最大値)で除して1となるように規格化して累計obs',最適化した累計値も同じ値で除して累計calc'としてプロットしてあります。この2つのプロットがよく重なっていれば最適化が良好であることを意味します。
 
第3波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は,第3波(先駆)に第3波(急峻)を組み込んだものです。値は,日別感染者数をプロファイルの累計感染者数で除したものに感染惹起期間τを乗じたもので,平均は感染者数の移動平均値(日別ave),増幅率は最適化から得た計算値(日別calc)を,それぞれ累計の計算値で除して算出しています。

τ×平均は実質的な増加率であり,最適化で得られるτ×増加率を追随しています。これは計算モデルが適切であること,モデルが実際を充分に追跡できていることを意味しています。図2の矢印は,直近の計算値の追随性について留意すべき箇所(赤い矢印)を指します。
 
図の見方などは,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"もご覧ください。

2020/11/02

COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析 [11月2日]

COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析 [11月2日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Hokkaido [November 2nd, 2020]

 
北海道のCOVID-19新型コロナウィルス感染症の感染者数について,本日11月2日発表までのデータを使用して,感染者数のプロファイルを解析しました。最新のプロファイルとして,第3波について,前回までのプロファイルを先駆部とし,急速に増大しつつある新たなプロファイルを急峻部として導入しました。
 
北海道のデータについては,10月18日に"COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析",10月25日にも"COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析"として,このブログで記載しました。感染者数が多い状況が続き,月曜日は報告される感染者数が通常は少ないのですが,本日は96名と最多を更新しました。ロジステック関数でプロファイルを最適化する方法で今回の解析も同様に行いました。

図1に4月20日から本日までの,日別の感染者数(日別obs),日別感染者数の7日間移動平均価(日別ave)を示します(2月10日からのプロットは10月18日をご覧ください)。累計calcは最適化によって得た累計値の計算値,日別calcは累計calcから算出した日別感染者数の計算値です。
 
9月上旬までの感染者数と解析したプロファイルについては,先の2つのブログの内容からの大きな変更はありません。図1では,日別感染者数の計算値も第3波(先駆)として,9月中旬からのなだらかな大きいプロファイル5をプロットしています。

感染者数は10月23日から大きく増えはじめ,とくに先週から本日までは感染者数がさらに増えました。第3波(先駆)のプロファイルのみでは感染者数の動向を表現しきれなくなったので,前回のブログで述べたように,新たに第3波(急峻)としてプロファイル6を導入しました。このプロファイル6はまだピークに達していないようで,得られたパラーメータの精度は詳細を記述するには充分ではありませんが,最近の3週間の感染者数をよく反映しています。

第3波(先駆)のプロファイルは,環境収容力(得られたパラメータが継続するとしたときの全感染者数)は890名,基本再生生産数の相当値は第2波と同じ値の1.7,ピークは10月7日頃と得られました。第3波(急峻)のプロファイルは,本日までに660名の感染者数をカバーしており,ピークは1週間程度先と算出されました。したがって,感染者数が多い状況が3週間程度は続くのではと,とても危惧されます。

第3波(急峻)の基本再生産数の相当値は2.1程度(1週間で倍増するペース)と大きい値が得られています。第3波全体としては,2つのプロファイルの和なので,ピークの時期と環境収容力はまだ精度が充分ではないのですが,和としての環境収容力は3,600名と算出され,第1波の約4倍,第2波の約7倍と大きな数です。これまでに報告された感染者数として,第3波に帰属される感染者数は約1,470名で,9月7日以降の感染者数に対応します。

1. 北海道の感染者数プロファイルの詳細と再生産率 [図のクリックで拡大]

Data source: 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報: 北海道オープンデータポータル https://www.harp.lg.jp/opendata/dataset/1369.html

図1には,再生産率をプロットしてあります。この再生産率は日別感染者数の計算値から求めたもので,詳細は"COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [10月11日]"(図の見方,説明などもこちら)をご覧ください 。再生産率は,1人の感染者が新たに引き起こす感染者の数,すなわち,実効再生産数に相当する値です。

図2の再生産率を見ると,その高いところの値は基本再生産数相当値に対応して現れていますが,プロファイルが重なっているために鈍化して低めの値となっています。再生産率が1を越えると日別の感染者数が増えだし,1を切って小さくくなるところでピークを迎えて減少し始めます。COVID-19では,ある時点での感染者数に再生産率を乗じた数の感染者が,1週間後の新たな感染者数の目安となります。
 
第3波は,9月6日に1を越え,10月28日に1.63に達し,本日は1.5とまだとても大きい値です(2週間で倍増のペース)。この1.5は,減少する第3波(先駆)と第3波(急峻)の和が寄与したもので,第3波(急峻)のみを見ると2.1から始まる大きな値です。なお,ピークを概ね1週間経過するまでは最適化の精度が充分ではないので,第3波(急峻)の推移にはご注意ください。
 
2 北海道の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [図のクリックで拡大]
 
図2には,最適化解析の詳細として,各プロファイルの日別感染者数の計算値(第2波プロファイル4についてD f1 calc,第3波(前駆)プロファイル5についてD f2 calc,第3波(急峻)プロファイル6についてD f3 calc)などを示します。

図2での感染者数の累計値は,累計数の直近の値(最大値)で除して1となるように規格化して累計obs',最適化した累計値も同じ値で除して累計calc'としてプロットしてあります。この2つのプロットがよく重なっていれば最適化が良好であることを意味します。
 
第3波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は,第3波(先駆)に第3波(急峻)を組み込んだものです。値は,日別感染者数をプロファイルの累計感染者数で除したものに感染惹起期間τを乗じたもので,平均は感染者数の移動平均値(日別ave),増幅率は最適化から得た計算値(日別calc)を,それぞれ累計の計算値で除して算出しています。

τ×平均は実質的な増加率であり,最適化で得られるτ×増加率を追随しています。これは計算モデルが適切であること,モデルが実際を充分に追跡できていることを意味しています。図2の矢印は,直近の計算値の追随性について留意すべき箇所(赤い矢印)を指します。
 
図の見方などは,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"もご覧ください。

2020/11/01

COVID-19 大阪府の感染者数プロファイルの解析 [11月1日]

COVID-19 大阪府の感染者数プロファイルの解析 [11月1日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Osaka Pref. [November 1st, 2020]

 
大阪府の新型コロナウイルス感染症COVID-19の感染者数(大阪府発表,11月1日現在)の増加が急峻なことから,感染者数プロファイルをロジスティック関数への最適化により解析しました。使用したデータは,大阪府が公表している「大阪モデル モニタリング指標の状況」からの感染者数です。
 
解析の手法と結果の見方などについては,9月11日の"東京都の感染者数プロファイルの解析"のブログをご覧ください。
 
図1に, 日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),累計の計算値から得られる日別の感染者数の計算値(日別calc)をプロットしました。第2波の主要なプロファイルの日別calc,そして全期間の"再生産数"も図に示してあります。
 
このブログでの大阪府のCOVID-19の第1波は,環境収容力(そのプロファイル全体の感染者数)は1,790名,ピーク(変曲点)は4月13日,基本再生産数の相当値(1人の感染者が引き起こす新たな感染者の最大数の目安)は1.94でした。第2波の主要プロファイルは,環境収容力は5,370名,ピークは8月4日,基本再生産数相当値は1.90で,既に収束状態にあります。第2波に重なるように第2+α波のプロファイルが現れ,環境収容力はおよそ4,000名,ピークは9月6日頃,基本再生産数相当値は1.47で,なだらかな減少傾向が続いています。なお,第2+α波のプロファイルは,主要な第2波と次のプロファイルの橋渡し的かつ連続的なもので,計算では変動し易くて確度の低いものです。
 
10月11日を過ぎた頃からかなり急峻に増加するプロファイル(第2+γ波)が現れ,まだ増加の傾向にあります。現時点ではまだプロファイルの解析精度は十分ではないのですが,基本再生産数相当値は1.7程度と大きく,概ね1,700名の感染者数が本日までに現れたことになります。ロジスティック関数は対称的なので,3,400名を超える環境収容力となります。なお,ピークを1週間以上は過ぎないと,感染者数などのパラメータの見積もりの精度は低いので,ご注意ください。
 
図1. 大阪府の感染者数と最適化による計算値 [図をクリックすると拡大]
 
Data source: 大阪府が公表している「大阪モデル モニタリング指標の状況」http://www.pref.osaka.lg.jp/iryo/osakakansensho/corona_model.html
 
図1の"再生産率"は"実効再生産数"に相当する値で,1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1ならばその状態が継続,1よりも小さければ小さいほど収束に向かう傾向が大きくなります。1を切る時点がピーク(変曲点)です。
 
第2波の再生産率は,拡大期では最大で1.78で,8月6日頃に1.0となって第2波は減少に転じました。その後,8月18日頃に0.68まで低下しましたが,以後は第2+α波が1に近い値で経過しました。10月7日頃には1を越えて日別の感染者数は増加に転じ,第2+γ波のプロファイルが顕著に優勢となりました。この再生産率は10月26日に1.42に達し,現在はピーク(再生産率は1)に向かって減少に転じたように見受けられますが,確定的ではありません。
 
累積の感染者数(累計obs)について最小二乗法により3つの関数プロファイルを最適化しました。図2は,各プロファイルからの日別感染者数の計算値(第2波の主要な分がD f1 calc,第2+α波がD f2 calc,第2+γ波がD f3 calc)と,これらを合成した計算値(日別calc)を示します。感染者数の累計値(累計obs')に計算値を最適化した結果(累計calc')は図2に示してあります(最新の累計感染者数で除して最大値が1となるように規格化した値です)。
 
図2. 大阪府の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [クリックで拡大]
 
第2波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は,第2+α波と第2+γ波を組み込んだものです。τ×平均は実質的な増加率であり,最適化で得られるτ×増加率をよく追随しています。
 
図の見方などについては,COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご覧ください。