2021/09/04

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [9月4日; 2021年]

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [9月4日; 2021年]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Tokyo [September 4th, 2021]

 

東京都が9月4日に発表した確定日別の感染者数を用いて,感染者数のプロファイルを解析しました。第5波のプロファイルは8月15日の解析以降はほぼ一定で,28日の解析結果とはより近いものなので,今後の推移を見通すうえでの確度は高まっています。
 
前回のブログ(8月28日)の"東京都の感染者数プロファイルの解析"と同じ方法で,日々の累計の感染者数をロジステック関数の和で表し,第4波と第5波のプロファイルに相当する各々の関数パラメータを最小二乗法により最適化しました。
 
図1には,日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),本ブログの解析による日別の感染者数の計算値(日別calc),そして"再生産率"を示しています。また,前回の解析での第5波の3つのプロファイルの和を"第5波8/27"としてプロットしてあります。"再生産率"は"実効再生産数"に相当する値で,1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1でピーク(増加時。減少時には底の値),1よりも小さければ小さいほど減少・収束に向かう傾向が大きくなります。

本ブログの日付は確定日ベースで,報道発表データ(当日分の数は1%程度,前日分が約80%,残りがその前の日付の分です)よりは概ね1日早くなります(報道発表の日付としては1日を加えて考えてください)。なお,実効再生産数は感染が生じた日が基準なので,"再生産率"を実効再生産数に対応させる際は,日付から7日を差し引いてグラフをご覧ください。
 
再生産率は8月16日には1を下回りました。この日のプロファイル5B(基本再生産数相当値(R0)は3.3ととても大きい)はほぼ終息の状態となり,現在の感染者数の挙動にはプロファイル5Cが寄与しています。5CのR0は1.79と5Bよりも小さいので,減少のペースは5Bよりは低下しています。
 
第5波のピークは8月17日と変わらず,ピークから既に2週間を経過しているので,プロファイルの確度は高くなっています。現在のプロファイルは,8月14日,21日の解析ともプロファイルはよく対応しており,図1の"第5波8/28"とはとりわけよく重なっています。
 
プロファイル5Aと5Bのパラメータには目立った変化はありません。5Cは,変曲点(ピーク)が8月17日,R0は1.79,環境収容力(プロファイルの終わりまでの累計の感染者数)が約156,300名,第5波の全期間の全体の感染者数は22万名で,これらは前回とほぼ同じです。

1. 東京都が9月4日発表の確定日別データ(9月3日まで)に基づく [図をクリックすると拡大]
 
図2に東京都の感染者数プロファイル解析の詳細を示します。第4波のプロファイル(日別感染者数はD f4 calc),第5波のプロファイルA(D f5A calc),B(D f5B calc)とC(D f5C calc),これまでのすべてのプロファイルを合成した計算値(日別calc)を示しています。感染者数の累計値(累計obs')に計算値を最適化した結果(累計calc')も図に示してあります(最新の累計感染者数で除して最大値が1.0となるように規格化した値です)。
 
図2. 東京都の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [クリックで拡大]

第5波Cについての"τ×平均"と"τ×増加率"の2つの指標もプロットしてあります。"τ×増加率"は内的自然増加率の理論的な変化を表し,実際のデータからの"τ×平均"が,最適化で得られるτ×増加率をよく追随していれば,解析モデルと実際のデータの一致が良好であることを意味します。第5波プロファイルCは合致が良好で,感染の形態(変異株の構成が単一,など)が対象の期間にわたって一様であることを示唆していました。図の第5波Cについては,"τ×平均"と"τ×増加率"の値が初期の半分を過ぎる時点が変曲点なので,すでにピークを過ぎています。

図の見方は,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご参考ください。

図3に,本年3月末から現在までの日別の感染者数(日別obs),累計感染者数(累計obs),解析で得た日別感染者数の計算値(日別calc),累計感染者数の計算値(累計calc),日別感染者数の7日間移動平均値(日別ave)を示します。累計obsは累計calcとよく合致していることから,図では重なって見取ることはできません。累計calcと日別calcの計算は9月27日まで行いました。実際の感染者数は,新たなプロファイルの発生などから,計算値よりも多くなると考えられますが,先週の日別aveが計算値よりもわずかに大きくなっており,その兆候が見とれます。

週内の変動を考慮して,日別感染者数が500名台となるのは,まず9月12日,それから数日は高めとなってから9月15日,先行7日間移動平均値については 19日頃です。26日頃には日別感染者数は100名台と見積もられます。

図3. 東京都の感染者数とプロファイルの時系列: 確定日ベース [クリックで拡大]

報道発表の速報データを用いる感染者数プロファイルの解析も行っています。速報データは発表時点までの過去の未集計分も含んでいるため,誤りもあり,日別の新規感染者数のデータとしては正確さに難があり,解析した結果も確定日データよりも確度は下がります。

図4は,図3に相当する速報データのもので,先週の"第5波8/28"もプロットしてあります。9月5日以降の黄色の塗の"日別obs”は計算値です。20日以降は休日が2回もあるため確度は低くなります。 7日間平均で500人台になるのは22日頃以降です。これから発表される速報の感染者数をこのグラフにプロットしてみると,プロファイルからの偏差,新たなプロファイルの発生,などを知ることができるでしょう。

図4. 東京都の感染者数とプロファイルの時系列: 報道発表の速報ベース [クリックで拡大]

 

 

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