COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [8月28日; 2021年]
Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Tokyo [August 28th, 2021]
東京都が発表した確定日別の感染者数を用いて,感染者数のプロファイルを解析しました。8月28日のデータによると,感染者数のピークは8月17日(報道発表の速報データの日付では18日)で,減少の傾向が明瞭となりました。第5波の全期間の感染者数は20万名を越え,昨年初めからの数の半数を越えてしまいます。
前回のブログ(8月21日)の"東京都の感染者数プロファイルの解析"では,"第5波"を3つのプロファイル5A,5Bと5Cで表していました。日々の累計の感染者数をロジステック関数の和で表し,第4波と第5波のプロファイルに相当する各々のロジステック関数のパラメータを最小二乗法により最適化しました。最適化の具体的な方法は従来の解析と同じです。
図1には,日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),本ブログの解析による日別の感染者数の計算値(日別calc),そして"再生産率"を示しています。また,前回の解析での第5波の3つのプロファイルの和を"第5波8/20"としてプロットしてあります。"再生産率"は"実効再生産数"に相当する値で,1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1でピーク(増加時。減少時には底の値),1よりも小さければ小さいほど減少・収束に向かう傾向が大きくなります。
第4波のプロファイルは,5月3日が変曲点(ほぼピークに相当)で,基本再生産数相当値(R0)は1.48,環境収容力(期間全体の累計感染者数)は約46,000名です。これらのパラメータ値はこれまでのブログからは変化がありません。本ブログの日付は確定日ベースで,報道発表データ(当日分の数は1%程度,前日分が約80%,残りがその前の日付の分です)よりは概ね1日早くなります(報道発表の日付としては1日を加えて考えてください)。なお,実効再生産数は感染が生じた日が基準なので,"再生産率"を実効再生産数に対応させる際は,日付から7日を差し引いてグラフをご覧ください。
再生産率は,日別の感染者数が最小となった6月11日から1を上回りはじめ,第5波となりました。6月30日には再生産率は1.28まで増加し,ほぼ横ばいとなりました。これはプロファイル5Aが寄与したもので,"アルファ型"(イギリス型)の感染プロファイルを反映していると考えられます。その後,7月11日頃から急激な増加を見せ始め,24日には1.75まで大きくなりました。これは1週間でおよそ1.75倍の日感染者を生ずる大きな値です。この様子を反映しているのがプロファイル5Bと5Cで,"デルタ型"(インド型)の感染力の強さと,出現の割合を示唆しています。
再生産率は8月3日には1を切ってひとまずピークを迎えたました。その後は微増に転じました。これは第5波プロファイルBからCへの移り変わりを反映しています。再生産率は1.14まで増えた後,16日には1を下回りました。この日のプロファイル5B(R0が3.21ととても大きい)の値はピーク時の1/30まで小さくなっていて,この時点の感染者数の挙動にはプロファイル5Cが寄与しています。5CのR0は1.82と5Bりも小さいので,減少のペースは5Bよりは低下しています。
第5波の最新のピークは8月17日となり,ピークから既に10日は経過しているので,プロファイルの確度は高くなっています。現在のプロファイルは,8月14日,21日の解析ともプロファイルはよっく対応しており,図1の"第5波8/21"よりはピークは1日早くなりました(解析する日々のデータの変動から,ピークに近い日々では1日程度はばらつきます)が,概形はよく合致しています。8月14日以降の日々の解析では,プロファイルには目立った変化が無いことから,解析の確度は充分に高いと考えています。
プロファイル5Aは,変曲点が7月16日,R0は第4波よりも少し大きい1.54,環境収容力が約34,700名です。5Bは,変曲点が7月31日,R0は3.21,環境収容力が約19,800名です。5Cは,変曲点が8月17日,R0は1.82,環境収容力が約153,800名です。5Aの最大の日感染者数は約670名,5Bは約1,600名,5Cは約4,450名です。これらが重なった8月16日には約4,680名の最大の計算値となっています。
現在では,第5波はプロファイル5Cが主体となり,5Aは僅な日別感染者数,5Bはほとんど終息の状態です。第5波の全期間の全体の感染者数は21万8千名となりました。第5波は第4波のプロファイルよりもはるかに大きい4.75倍です。東京都の累計の感染者数は8月28日現在で33万5千名あまりで,第5波これまでで17万名あまりなので,すでに第5波が累計感染者数の半数を越えています。
図2に東京都の感染者数プロファイル解析の詳細を示します。第4波のプロファイル(日別感染者数はD f4
calc),第5波のプロファイルA(D f5A
calc),B(D f5B
calc)とC(D f5C calc),これまでのすべてのプロファイルを合成した計算値(日別calc)を示しています。感染者数の累計値(累計obs')に計算値を最適化した結果(累計calc')も図に示してあります(最新の累計感染者数で除して最大値が1.0となるように規格化した値です)。
第5波Cについての"τ×平均"と"τ×増加率"の2つの指標もプロットしてあります。"τ×増加率"は内的自然増加率の理論的な変化を表し,実際のデータからの"τ×平均"が,最適化で得られるτ×増加率をよく追随していれば,解析モデルと実際のデータの一致が良好であることを意味します。第5波プロファイルCは合致が良好で,感染の形態(変異株の構成が単一,など)が対象の期間にわたって一様であることを示唆していました。図の第5波Cについては,"τ×平均"と"τ×増加率"の値が初期の半分を過ぎる時点が変曲点なので,すでにピークを過ぎています。
図の見方は,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご参考ください。
解析では,できるだけ少ない数のロジスティック関数を用いて,関数の和として累積の感染者数へ最適化しています。用いているデータは暦日(日付,曜日,休日)についての過去の累積感染者数のみです。 したがって,予測ではありません。新たなプロファイルが現れた時には,過去のプロファイルからの乖離としてその出現を検知できます。プロファイルの確度は出現の初期には低く,おおむね変曲点を1週間を過ぎると信頼に値する確度になります。もちろん,新たな出現とその性状は見通すことはできません。また,結果も報告(公表)されるデータの性質と正確さに依存しています。結果の解釈は,結果を観る観点にも大いに依存していますので,ご留意ください。
図3に,3月末から現在までの日別の感染者数(日別obs),累計感染者数(累計obs),解析で得た日別感染者数の計算値(日別calc),累計感染者数の計算値(累計calc),日別感染者数の7日間移動平均値(日別ave)を示します。累計obsは累計calcとよく合致していることから,図では重なって見取ることはできません。日別aveは,1月以降は,休日や曜日の変動を補正してから平均化しています。これまで,12個のロジステック関数を採用しています。累計calcと日別calcの計算は9月13日まで行いました。実際の感染者数は,新たなプロファイルの発生などから,計算値よりも多くなると考えられますが,12日時点でも,第4波のピークの日々に相当する日別の感染者数が見込まれます。
図3. 東京都の感染者数とプロファイルの時系列 [クリックで拡大] |
0 件のコメント:
コメントを投稿