2020/12/19

COVID-19 茨城県の感染者数プロファイルの解析 [12月19日; 1月8日更新]

COVID-19 茨城県の感染者数プロファイルの解析 [12月19日; 1月8日更新]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Ibaraki Pref. [December 19th, 2020; updated Jan. 8th, 2021]

茨城県の新型コロナウイルス感染症の感染者数のプロファイルをロジスティック関数への最適化により解析しました。使用したデータは,茨城県が公表している「新型コロナウイルス感染症陽性者一覧」で,本日12月19日までの最新の累計感染者数です。第3波は11月24日にピークを越え,ピーク時の約3割まで日別の感染者数が減少し,収束に向かっています。

2021年1月8日更新: 年が明けて5日以降,感染者数が増えて8日には127名が報道されました。これらを反映して,第3波Cのプロファイルが増大するものとして,解析を更新しました。パラメータを駆動する日数が4日程度なので暫定的な結果ですが,環境収容力は5,500名と驚くほど大きな値です。基本再生産数相当値は2.1と変化がなく,変曲点(ピーク)は1月20日と得られました(図0-3)。8日現在の再生産率は1.80で,プロファイルに変化がなければ,変曲点での値1.0に向かって減少していきます。

第3波Aと第3波Bの環境収容力の和は1,530名となりました。第1波は170名,第2波の主要部は410名(付随した部分が別に180名)でした。始まったばかりの第3波Cのプロファイルは,さらに大きくなるかもしれない兆候(増幅率)がありますので,くれくぐれも推移にご注意ください。

図0-3. 茨城県の感染者数と最適化による計算値: 2021年1月8日暫定結果 [図をクリックすると拡大]
 

2021年1月1日更新: 第3波Cのプロファイルについて,暫定的な結果として,環境収容力は935名,基本再生産数相当値2.1,変曲点(ピーク)は1月2日と得られました(図0-2)。第3波Aと第3波Bの環境収容力の和は1,304名です。

図0-2. 茨城県の感染者数と最適化による計算値: 2021年1月1日暫定結果 [図をクリックすると拡大]
 

12月28日更新: 先週のデータを見ると,収束の途上にあったプロファイルに新たな傾向が現われました。図0-1の"第3波BC"の先週の部分に,増加の傾向となっているプロファイルの"第3波C"に注目です。このプロファイルC(1,180名)は,関東地方で最近増えている状況の影響を受けている可能性があり,第3波のAとBの合計(1,110名)に匹敵する累計感染者数になるかもしれません。まだデータの日数が少ないので,解析結果は暫定的です。

図0-1. 茨城県の感染者数と最適化による計算値: 12月28日暫定結果 [図をクリックすると拡大]

茨城県については,11月27日に"COVID-19 茨城県の感染者数プロファイルの解析 [11月27日]"にてこのブログで採り上げ,22日頃が第3のピークと指摘しました。その後,12月4日には85名もの感染者数が報道されましたが,ブログで指摘したように収束傾向は続きました。ただ,収束の傾向は,感染拡大時とは異なる緩やかな減少を示したので,第3波としては2つのプロファイルを採ることにしました。以下では,前回と同じ方法で感染者数のプロファイルを解析しました。

図1に,日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),累計の計算値から得られる日別の感染者数の計算値(日別calc)をプロットしました。クラスターの発生に起因する日別obsの大きなばらつきが,日別aveでは滑らかになっています。1日ないし2日の鋭く棒状に増えている日別感染者数は典型的なクラスターの発生を示唆します。なお,7月1日以前のグラフについては10月25日のブログと,以下の図3をご覧ください。

第3波プロファイルについて,プロファイルAとBの日別感染者数の計算値の和を図示しています。図の"再生産数"は,実効再生産数に相当する指標で,再生産率が1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1ならばその状態が継続,1よりも小さければ小さいほど収束に向かう傾向が大きくなります。1を切る時点がピークです。

第2波の主要なプロファイルの環境収容力(そのプロファイル全体の感染者数)は約400名,基本再生産数の相当値(感染の初期において1人の感染者が引き起こす新たな感染者の数の目安)は1.7,変曲点(日別感染者数のピークの日時)は8月7日でした。第3波のプロファイルAは,環境収容力は約680名,基本再生産数の相当値は2.2,変曲点は11月22日と得られました。プロファイルBは,環境収容力は約840名,基本再生産数相当値は1.8,変曲点は12月4日と得られました。現在はプロファイルBが感染者数の大部分を占めています。合計した第3波の環境収容力は1,520名で,第2波(主要)の4倍近い規模です。基本再生産数相当値は2.1でした。合計した第3波のうちこれまで出現した数は1,380名なので,今後に見込まれる感染者数は140名となります。

第3波は,再生産率が10月17日頃から急に大きくなりはじめて20日頃には1を越えました。増加のペースは速く,11月3日頃には1.96の最大値を示しました。この値は,プロファイルAと,ほぼ同時進行したプロファイルBの寄与の分を反映しています。その後は減少に転じ,11月24日には1を切りました。ここが日別感染者数のピークです。このピークを越えてからはプロファイルBの寄与が大きくなり,再生産率の低下は緩やかなり,本日12月19日の再生産率は0.42近くにあります。感染の拡大は再生産率が1を越えた状態なので,拡大の期間が1ケ月間以上も続きましたが,その後の収束状態ももうすぐ1ケ月続くことになります。

図1. 茨城県の感染者数と最適化による計算値 [図をクリックすると拡大]

Data source: 茨城県が公表している「新型コロナウイルス感染症陽性者一覧」https://www.pref.ibaraki.jp/1saigai/2019-ncov/ichiran.html

累積の感染者数(累計obs)について最小二乗法により4つの関数プロファイルを最適化しています。図2は,各プロファイルからの日別感染者数の計算値(第2+γ波がD f2 calc,第3波のAがD f3A calc,BがD f3B calc,合計がD f3 calc)と,これらを合成した計算値(日別calc)を示します。感染者数の累計値(累計obs')に計算値を最適化した結果(累計calc')は図2に示してあります(最新の累計感染者数で除して最大値が1.2となるように規格化した値です)。

図2. 茨城県の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [クリックで拡大]

第3波について"τ×平均"と"τ×増加率"を図2に示しています。これらはプロファイルAにBの寄与を組み込んだものです。τ×平均は実質的な増加率であり,最適化の計算で得られるτ×増加率を追随しています。

図3は,2021年1月1日までの累計の感染者数の計算値(累計calc)と日別感染者数の計算値(日別calc)を挙げました。計算には最適化で得られたパラメータを使用しており,予測ではなく,むしろ過去のプロファイル挙動の表示です。12月10日以降は日別感染者数の減少が緩やかになっています。この状況は,首都圏で今だに拡大し続けている第3波の後方側プロファイルに対応するのかもしれません。この漸減状況を脱することができれば,収束はより速やかになるでしょう。

図3. 茨城県のプロファイル関数の最適化と計算値の詳細(1月1日まで) [クリックで拡大]

図の見方などについては,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご覧ください。

2020/12/17

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [12月17日]

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [12月17日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Tokyo [December 17th, 2020]

 
東京都が本日12月17日に報道発表した感染者数は822名でした。16日の678名に続いて最大数の更新で,とくに本日は初めての800名越えでした。確定日ベースの感染者数を用いて,感染者数のプロファイルを解析しました。
 
前日データ取り扱いの変更: 11月25日頃にはいったんピークに達した後も日別の感染者数の増加が続いています。データの変動は著しくなっています。確定日別のデータでは最近の経過はさらにすさまじく,過去に遡る修正も多く,前日分が占める割合が0.79から0.65程度まで低下しています(東京都のの集計の質が低下した?)。これまでは発表日の80%が前日分であることから報道発表数を前日のものとして計算に用いていました。発表日の確定日ベースの前日と当日の和を0.664で除した数,発表日の報道発表の数のいずれか小さい数,これら2つの数の平均値を確定日ベースの前日の当座の値とすることに変更しました(12月31日)。この方式では,16日の確定日ベースの感染者数は822名ではなく,804名となります。報道発表ベースの感染者数は,およそ66%が前日分で(13%や40%台の日々も最近にはあった),残りのほとんどはそれ以前の日の分です。以下の日付は,これらに最新の修正が施された確定日のデータに基づいています。

前回のブログ(12月6日)に記載した"東京都の感染者数プロファイルの解析"では,暫定的な結果として,
日別感染者数が21日頃にほぼピークに達してからも漸増にあり,30日頃がそのピークとなったようだと考えました。第3波が2つのプロファイルから成るモデルとしたときの後の方のプロファイルBが増え続けている様子を述べました。これまでと同じ方法によってロジスティック関数の最適化を行ない,結果を検討しました。
 
図1に,日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),本ブログの解析による日別の感染者数の計算値(日別calc),そして"再生産率"を挙げます。"第3波"としてはプロファイルAとBの和として日別の感染者数の計算値をプロットしてあります。"再生産率"は"実効再生産数"に相当する値で,1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1でピーク,1よりも小さければ小さいほど収束に向かう傾向が大きくなります。
 
再生産率は,11月7日の1.40の最大値から減少に向かい,24日に1を切りいったん感染者数のピークに至りました。しかし,30日には1を越えて感染者数が増加に転じました。その後は感染者数の漸増を表す再生産率1.18程度の日が続き,12月16日現在でも1.16で,増加の勢いは止まっていません。再生産率は小さいのですが,感染者数自体が大きいので,(再生産率)×(感染者数)が示す,およそ1週間後の感染者数は大きく増えています。
 
第3波のプロファイルAは,基本再生産数相当値が1.94,環境収容力(全期間の感染者数)が約8,100名,変曲点が11月18日です。プロファイルBは,基本再生産数相当値が1.53,環境収容力が約35,400名,変曲点が12月27日と得られました。基本再生産数相当値が小さくなり (時間・空間的に広がった),環境収容力はBで著しく大きくなりました。プロファイルBは変曲点にはまだ達していない(ピークに達していない)ので,解析はまだ不確定の要素は大です。
 
図1. 東京都が12月17日発表の確定日別データ(12月16日まで)に基づいています [図をクリックすると拡大]

第2波の主要なプロファイル(日別感染者数はD f1 calc),第2+γ波(D f2 calc),第3波のプロファイルA(D f3A calc)とプロファイルB(D f3B calc),これらすべてをを合成した計算値(日別calc)を図1と図2に示しています。"第3波"はAとBの和です。感染者数の累計値(累計obs')に計算値を最適化した結果(累計calc')は図2に示してあります(最新の累計感染者数で除して最大値が1となるように規格化した値です)。

最近の日別感染者数は,ほとんどが第3波のプロファイルの寄与が占めています。このプロファイルの環境収容力の合計は約43,500名で,最近10日間で約5,200名の増加です。合計は第2波(主要)約17,000名の2.63倍となりました。合計のうち,これまで約19,000名の感染者が報告されたことになり,合計の半分には達しておらず,プロファイルがこのまま推移するとしたら(楽観的な見通し),約25,000名の感染者が今後に生じます。
 
第3波の2つの近接するプロファイルのパラメータは,連続的な累計感染者数から求めた便宜的なもので,和としてのプロファイル(図1と2の"第3波")の方が意味のあるものです。プロファイルAはほぼ終息に達し,現在はBが大部分です。後者の基本再生産数相当値が小さい(拡大が遅い,プロファイルの幅が大きい)のは示唆的です。急速に拡大する感染が他所に拡大し,感染に多相性が現れることは多々あります。同一のプロファイルが日時と場所の広がりで発生すると,プロファイルはこのような幅の広がりを示すことになります。

全国的な第3波の傾向として,ほぼプロファイルに沿ってピークに達した(あるいはその近くに至った)後で,減少に転じないで漸増するケースが目立ちます。東京都の場合は漸増の傾向が続き,ピークにはまだ到達していません。図3に元旦までの感染者数のプロファイルを示します。感染者数が多い状態で,年末から年始に突入する恐れが非常に大です。医療機関が休みに入り,感染者が増え続けるのを想像すると心痛の極みです。今からの少なくとも10日間はとくに感染は避けたいものです。
 
図2. 東京都の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [クリックで拡大]
 
図2に東京都の感染者数プロファイルの詳細を示します。第3波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は第3波Aに第3波Bを組み込んだものです。τ×平均は実質的な増加率であり,最適化で得られるτ×増加率を追随しています。"τ×平均"は,この2日間は増加率よりも大きくなっています。これは,解析のプロファイルよりも実際の感染者数が多い,増える傾向であることを示唆します。プロファイルは過去の,とくに直近2週間以上の,すべてのデータを反映したもので,図3は予測ではなく,過去に基づく計算結果です。

図3. 東京都のプロファイル関数の最適化と計算値(2021年1月1日まで) [クリックで拡大]

第2波はピークを過ぎて日別感染者数がピークの半分に近くに減ってから,再生産率が1近辺の値に留まり,収束には至りませんでした。日別の感染者数がピークを過ぎても,実際に感染を惹起する感染者数はさらに1週間程度は増え続けます。したがって,今後3週間程度は,感染が再度広がってしまう,クラスターが発生し易い,のように感染プロファイルを変えてしまう要因はまだまだあります。

図の見方は,以下,あるいは,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご覧ください。

2020/12/16

COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析 [12月16日]

COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析 [12月16日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Hokkaido [December 16th, 2020]


北海道のCOVID-19新型コロナウィルス感染症の感染者数について,本日12月16日発表までのデータを使用して,感染者数のプロファイルを解析しました。第3波の日別の感染者数のピークは11月18日となり,12月6日頃までは感染者数は緩やかに減少しました。その後,減少のペースが速まり,収束へ向かうようなプロファイルとなりました。

北海道のデータについては,11月23日と前回12月6日の"COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析(前回)"において,ピークを17日頃としてこのブログで述べました。前回以降,日別の感染者数が12月10日には241名となる日がありましたが,16日には85名と11月4日以来初めて100名以下の感染者数となりました。ロジステック関数でプロファイルを最適化する方法で,今回の解析も前回と同様に行いました。

図1に8月1日から本日までの日別の感染者数(日別obs),日別感染者数の7日間移動平均値(日別ave)を示します(7月以前のプロットについてはこれまでのブログをご覧ください)。累計calcは最適化によって得た累計値の計算値,日別calcは累計calcから算出した日別感染者数の計算値です。"第3波"のプロファイルは,プロファイルA(図2のD 3fA calcに相当)とプロファイルB(図2のD f3B calc)の日別の感染者数の計算値の和です。

プロファイルAの変曲点は11月16日,基本再生産数相当値は2.03,環境収容力(プロファイルの終わりまでの全体の感染者数)は6,000名となり,プロファイルBの変曲点は12月8日,基本再生産数相当値は2.04,環境収容力は4,090名となりました。基本再生産数相当値がほぼ等しいプロファイルです。

これら2つのプロファイルのパラメータは,連続的な累計感染者数から求めた便宜的なもので,和としてのプロファイル(図1の"第3波",図2のD f3 calc)の方が有意なものです。ただ,第3波が2つのプロファイルで表され,前者が札幌市が主体(石狩振興局管内),後者が他の地域の状況を担うプロファイルの可能性を前回で示唆しました(前回のブログの「12月8日の追記」もご覧ください)。なお,この傾向はその後も継続しており,石狩振興局管内での収束傾向に比して,プロファイルBに対応して十勝と胆振の地方では感染者数が多い状況が前回以降も続いています。

図1の再生産率を見ると,11月18日に1となりました。この日が第3波のピークです。その後は1を下回りましたが,プロファイルBの寄与に起因して12月3日にはほぼ1近くの0.97まで戻りました。その後は感染者数の減少のペースの速まりに対応して,下降のペースも速まりました。本日の再生産率は0.44近くまで低下しています。図1の日別aveと図2の増加率を見ると,先週中頃からは減少傾向がより強くなっていることを示唆しています。このまま推移すると,12月末には1日の感染者数が20名以下になる計算です。北海道における感染への取り組みが功を奏していることを期待させます。

第3波の合計した環境収容力は10,100名で,前回の8,400名よりは増えました。第3波は本日までに9,000名の感染者数をカバーしており,第3波の今後の分として約1,100名の感染者が見込まれます。さらなるクラスターの発生などがあると,プロファイルが変わり(基本再生産数相当値が小さくなる),見込まれる感染者数が大きくなります。

第1波と第2波は,全国的にもほぼ単一のプロファイルで表され,ピークを過ぎるとそのプロファイルのパラメータを反映する収束の傾向でした。第3波の傾向として,ほぼプロファイルに沿ってピークに達した(あるいはその近くに至った)後で,減少に転じないで横ばいまたは漸増するケースが目立ちます。これは第3波が2つのプロファイルから成る様態を示すことに起因します。

北海道の場合は,ほぼ横ばい状態から減少に転じました。減少のペースは当初は緩やかでしたが,後に現れたプロファイルBがピークを越えると,速やかな収束の傾向を示し始めました。第3波の前の日別の感染者数が多かった都府県では,第3波がいったんピークに近づいてから漸増の傾向が現われているようで,北海道など第3波の前の感染者数が少なかった地方では,収束の傾向が良好のようです。第2波と第3波のそれぞれの始まり(いつ始まったか)に着目し,また,第3波の直前の累計の感染者数に着目すると,これらが第3波の挙動に影響を及ぼしていると考えたほうが理にかないます。こう考えると,第3波を充分に収束させることが,その後の経過(第4波?)には肝要ではないでしょうか。

図1. 北海道の感染者数プロファイルの詳細と再生産率[図のクリックで拡大]

Data source: 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報: 北海道オープンデータポータル https://www.harp.lg.jp/opendata/dataset/1369.html

図1には,再生産率をプロットしてあります。この再生産率は日別感染者数の計算値から求めたもので,詳細は"COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [10月11日]"(図の見方,説明などもこちら)をご覧ください。

再生産率は,1人の感染者が新たに引き起こす感染者の数,すなわち,実効再生産数に相当する値です。 図2の再生産率を見ると,その高いところの値は基本再生産数の相当値に対応して現れていますが,プロファイルが重なっているために鈍化して低めの値となっています。再生産率が1を越えると日別の感染者数が増えだし,1を切って小さくくなるところでピークを迎えて減少し始めます。COVID-19の感染の拡大・縮小期では,ある時点での感染者数に再生産率を乗じた数の感染者が,1週間後の新たな感染者数の目安となります。

図2 北海道の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [図のクリックで拡大]

図2には,最適化解析の詳細として,各プロファイルの日別感染者数の計算値として,第3波(前駆)プロファイル5についてD f3P calc,第3波のプロファイルAについてD f3A calc,プロファイルBについてD f3Bなどを示します。D f3 calcは,プロファイルAとBの和です。

図2での感染者数の累計値は,累計数の直近の値(最大値)で除して1となるように規格化して累計obs',最適化した累計値も同じ値で除して累計calc'としてプロットしてあります。この2つのプロットがよく重なっていれば最適化が良好であることを意味します。第3波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は,第3波のAとBを個別に表したものです。

図の見方などは,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"もご覧ください。

2020/12/06

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [12月6日]

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [12月6日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Tokyo [December 6th, 2020]

 
東京都が本日12月6日に発表した感染者数を用いて,感染者数のプロファイルを解析しました。11月21日頃にはほぼピークに達した後も日別の感染者数が多い日々が続き,27 日に570名,12月5日に584名と報告日別の最大数が更新されました。なお,確定日別の最大数は11月26日の563名でした。注目する期間内に祝日があり,データの変動は著しい(確定日別のデータでは最近の経過はさらにすさまじい)ものでしたが,このような漸増の傾向もどうやら峠を迎えたようです。

前回のブログ(11月23日)に記載した"東京都の感染者数プロファイルの解析"では,暫定的な結果として,第3波のピークを21日頃とし,その様相に2相性があるようだと述べました。本日までの"確定日別"(以下の日付はすべて確定日ベース)の感染者数をもとに,第3波が2つのプロファイルから成るモデルに変えて,これまでと同じ方法によってロジスティック関数の最適化を行ない,結果を検討しました。
 
図1に,日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),本ブログの解析による日別の感染者数の計算値(日別calc),そして"再生産率"を挙げます。"第3波"としてはプロファイルAとBの和として日別の感染者数の計算値をプロットしてあります。"再生産率"は"実効再生産数"に相当する値で,1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1でピーク,1よりも小さければ小さいほど収束に向かう傾向が大きくなります。
 
再生産率は,10月25日に1よりも大きくなり,11月6日には1.45の最大値となりました。その後は減少し,21日に1.05まで低下しました(この日を前回はピークとみなした)。しかし,その後は25日の1.06まで増えてから再び減少に転じました。11月30日には1を切り,ピークに達したことを示唆しています。このように再生産率は,日別感染者数が21日頃にほぼピークに達してからも漸増にあり,30日頃がそのピークとなったことをよく表しています。
 
第3波のプロファイル自体の基本再生産数の相当値は,当初は2.4程度と得られていたものが,前回の解析では1.80と小さくなり,さらにその後1.7まで小さくなりました。単一のプロファイルならばこの相当値はほぼ一定の値のはずです。このように小さくなるのは,プロファイルの性格が変わった,複数のプロファイルの合算である,などによりプロファイルの幅が広がったことを意味すると,前回のブログで述べました。そこで,第3波が2つのプロファイルAとBから成るモデルに変更しました。
 
プロファイルAは,基本再生産数相当値が2.15,環境収容力(全期間の感染者数)が約6,100名,変曲点が11月14日(この日を前々回のブログではピークではないかと考えました)です。プロファイルAは,基本再生産数相当値が2.00,環境収容力が約10,400名,変曲点が12月2日と得られました。これらの和としては,再生産率が示すように30日頃がピークでした。ただ,プロファイルBの変曲点からの日数が少なく,まだまだ不確定の要素が大です。
 
図1. 東京都が12月6日発表の確定日別データ(12月5日まで)に基づいています [図をクリックすると拡大]
 
第2波の主要なプロファイル(日別感染者数はD f1 calc),第2+γ波(D f2 calc),第3波のプロファイルA(D f3A calc)とプロファイルB(D f3B calc)を計算に含め,これらを合成した計算値(日別calc)を図1と図2に示しています。"第3波"はAとBの和です。感染者数の累計値(累計obs')に計算値を最適化した結果(累計calc')は図2に示してあります(最新の累計感染者数で除して最大値が1となるように規格化した値です)。
 
最近の日別感染者数は,ほとんどが第3波のプロファイルの寄与が占めています。このプロファイルの環境収容力の合計は約16,500名で,第2波(主要)とほぼ同じ値となりました。合計のうち,これまで約12,000名の感染者が報告されたことになります。
 
第3波の2つの近接するプロファイルのパラメータは,連続的な累計感染者数から求めた便宜的なもので,和としてのプロファイル(図1と2の"第3波")の方が意味のあるものです。ただ,第3波が2つのプロファイルで表され,後者の基本再生産数相当値が小さい(拡大が遅い,プロファイルの幅が大きい)のは示唆的です。急速に拡大する感染が他所に拡大し,感染に多相性が現れることは多々あります。同一のプロファイルが日時と場所の広がりで発生すると,プロファイルはこのような幅の広がりを示すことになります。東京都の23区特別区の合計感染者数は,1週間の感染者数が11月23日までよりも30日までの方が少なくなっていますが,市部の合計感染者数は30日の方がその前よりも増えています。これらを反映したプロファイルかもしれません

全国的な第3波の傾向として,ほぼプロファイルに沿ってピークに達した(あるいはその近くに至った)後で,減少に転じないで横ばいまたは漸増するケースが目立ちます。東京都の場合は漸増の傾向が続き,ピークはまだ正確には求まっていません。北海道の場合は,東京都と同じような経過を経て,既にピークを過ぎたものと思われます。
 
図2. 東京都の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [クリックで拡大]
 
図2に東京都の感染者数プロファイルの詳細を示します。第3波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は第3波Aに第3波Bを組み込んだものです。τ×平均は実質的な増加率であり,最適化で得られるτ×増加率を追随しています。

第2波はピークを過ぎて日別感染者数がピークの半分に近くに減ってから,再生産率が1近辺の値に留まり,収束には至りませんでした。日別の感染者数がピークを過ぎても,実際に感染を惹起する感染者数はさらに1週間程度は増え続けます。したがって,今後2週間程度は,感染が再度広がってしまう,クラスターが発生し易い,のように感染プロファイルを変えてしまう要因はまだまだあります。

図の見方は,以下,あるいは,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご覧ください。

COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析 [12月6日]

COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析 [12月6日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Hokkaido [December 6th, 2020]

 

北海道のCOVID-19新型コロナウィルス感染症の感染者数について,本日12月6日発表までのデータを使用して,感染者数のプロファイルを解析しました。第3波の日別の感染者数のピークは11月17日でした。その後は感染者の減少はとても緩やかでしたが,29日からはやや早くなりました。

北海道のデータについては,前回11月23日に"COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析"において,ピークを17日頃としてこのブログで述べました。その後,日別の感染者数が11月20日には304名の最大数を記録し,18日から12月4日まで200名越えの日が頻出しました。ロジステック関数でプロファイルを最適化する方法で,今回の解析も前回と同様に行いました。

図1に7月1日から本日までの日別の感染者数(日別obs),日別感染者数の7日間移動平均値(日別ave)を示します(7月以前のプロットについてはこれまでのブログをご覧ください)。累計calcは最適化によって得た累計値の計算値,日別calcは累計calcから算出した日別感染者数の計算値です。

急峻に立ち上がっている第3波のプロファイルは,2つのプロファイルの和で表したものです。前回のブログの後でも多数の感染者があり,元々の1つのプロファイルA(図2のD 3fA calcに相当)ではピーク付近の幅が広がり,基本再生産数相当値(内的自然増加率から算出)が小さくなって,感染者数の様相を表現するにはあまり適切ではなくなりました。そこで新たなプロファイルB(図2のD f3B calc)を追加しました

第3波の当初のプロファイルAの変曲点は11月13日,基本再生産数相当値は2.34,環境収容力は3,170名です。この変曲点の日付は,前々回のブログでピークの可能性を指摘した日付と同じです(前々回の指摘はほぼ妥当であった!)。追加のプロファイルBの変曲点は11月29日,基本再生産数相当値は2.0,環境収容力は5,230名です。

これら2つのプロファイルのパラメータは,連続的な累計感染者数から求めた便宜的なもので,和としてのプロファイル(図1の"第3波",図2のD f3 calc)の方が有意なものです。ただ,第3波が2つのプロファイルで表され,後者の基本再生産数相当値が小さい(拡大が遅い,プロファイルの幅が大きい)のは何かを示唆しているものかもしれません。個別の事例は見ていないのですが,急速に拡大する感染が他所に拡大し,多相性を表していることはあり得ます。同一のプロファイルが日時と場所の広がりで発生すると,プロファイルはこのような広がりを示すことになります。札幌市が主体のプロファイルから道内への感染の拡大のようなケースで,時間の遅れ・広がりと地理的な拡大です。

12月8日追記: 図1aに,石狩振興局管内の感染者数(7,157名)のプロファイルを示します。札幌市が石狩振興局管内の人口の約8割を占め,ほぼ札幌市の状況を反映しているとみなして良いでしょう。なお,居住地が非公表の分(529名)は含まれていません。図1bに,北海道から石狩振興局管内の感染者数を除いた分(3,006名)について,感染者数プロファイルを示します。ともにデータは12月7日までのものです。図1bの第3波のピークは11月17日です。図2bの第3波のピークは11月29日頃で,この頃の感染者者数の多くは上川総合振興局(旭川市を含む)の分(709名)です。11月14日頃の肩状までの多くは上川総合振興局の分ではないようです。非公表の分も含むので,札幌市に由来するものかもしれません。

図1の再生産率を見ると,11月17日に1となりました。この日が第3波のピークです。前回のブログの解析では,この日が変曲点,すなわちピークと解釈していました。その後は1をわずかに下回る日々が続き,29日からはやや下降のペースが速まりました。本日の再生産率は0.54近くまで低下していますが,図2の増加率を見ると,ここ数日は減少が緩やかとなっていることを示唆しているので,小さく見積もっている可能性があります。

第3波の合計した環境収容力は8,400名で,前回の6,940名よりはかなり増えました。第3波(先駆)と第3波と合わせて本日までに8,260名の感染者数をカバーしており,今後は速やかに収束するとしても,第3波の分として約1,500名の感染者が見込まれます。さらなるクラスターの発生などがあると見込まれる数が大きくなります。

全国的な第3波の傾向として,ほぼプロファイルに沿ってピークに達した(あるいはその近くに至った)後で,減少に転じないで横ばいまたは漸増するケースが目立ちます。北海道の場合は,ほぼ横ばい状態から減少に転じたようです。このような挙動は似たようなプロファイルの他の都府県の先駆けと言ってよいでしょう。それでも減少のペースが緩やかのように見受けられ,ピークを長引かせない,収束を遅らせない適切な対処策が必要です。累計の感染者数が多いと感染多発の懸念が長引きます。

図1. 北海道の感染者数プロファイルの詳細と再生産率[図のクリックで拡大]

Data source: 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報: 北海道オープンデータポータル https://www.harp.lg.jp/opendata/dataset/1369.html

図1a. 石狩振興局管内の感染者数のプロファイル [12月7日までのデータ]
 
図1b. 石狩振興局管内の感染者数を除いた全道の感染者数プロファイル [12月7日までのデータ]

図1には,再生産率をプロットしてあります。この再生産率は日別感染者数の計算値から求めたもので,詳細は"COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [10月11日]"(図の見方,説明などもこちら)をご覧ください。

再生産率は,1人の感染者が新たに引き起こす感染者の数,すなわち,実効再生産数に相当する値です。 図2の再生産率を見ると,その高いところの値は基本再生産数の相当値に対応して現れていますが,プロファイルが重なっているために鈍化して低めの値となっています。再生産率が1を越えると日別の感染者数が増えだし,1を切って小さくくなるところでピークを迎えて減少し始めます。COVID-19の感染の拡大・縮小期では,ある時点での感染者数に再生産率を乗じた数の感染者が,1週間後の新たな感染者数の目安となります。 

再生産率(実効再生産数)は感染の拡大・縮小の目安となる指標ですが,規模の大小を示すものではありません。感染のプロファイルではその幅(ピークまでの期間)と高さが規模を表し,これをまとめた指標が環境収容力です。このブログの解析では,累計の感染者数から,環境収容力,内的自然増加率(基本再生産数を与える)と変曲点(ピークの時刻)を算出しています。最大となるピークの日別感染者数は (環境収容力)×(内的自然増加率)/4 で得られます。ピークを概ね1週間経過するまではロジステック関数の最適化の精度が充分ではないので,第3波(急峻)の推移にはご注意ください。

図2 北海道の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [図のクリックで拡大]
 

図2には,最適化解析の詳細として,各プロファイルの日別感染者数の計算値として,第3波(前駆)プロファイル5についてD f3P calc,第3波のプロファイルAについてD f3A calc,追加プロファイルBについてD f3Bなどを示します。D f3 calcは,プロファイルAとBの和です。

図2での感染者数の累計値は,累計数の直近の値(最大値)で除して1となるように規格化して累計obs',最適化した累計値も同じ値で除して累計calc'としてプロットしてあります。この2つのプロットがよく重なっていれば最適化が良好であることを意味します。第3波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は,第3波のAにBを組み込んだものです。値は,日別感染者数をプロファイルの累計感染者数で除したものに感染惹起期間τを乗じたもので,平均は感染者数の移動平均値(日別ave),増幅率は最適化から得た計算値(日別calc)を,それぞれ累計の計算値で除して算出しています。

図の見方などは,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"もご覧ください。