2020/12/06

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [12月6日]

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [12月6日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Tokyo [December 6th, 2020]

 
東京都が本日12月6日に発表した感染者数を用いて,感染者数のプロファイルを解析しました。11月21日頃にはほぼピークに達した後も日別の感染者数が多い日々が続き,27 日に570名,12月5日に584名と報告日別の最大数が更新されました。なお,確定日別の最大数は11月26日の563名でした。注目する期間内に祝日があり,データの変動は著しい(確定日別のデータでは最近の経過はさらにすさまじい)ものでしたが,このような漸増の傾向もどうやら峠を迎えたようです。

前回のブログ(11月23日)に記載した"東京都の感染者数プロファイルの解析"では,暫定的な結果として,第3波のピークを21日頃とし,その様相に2相性があるようだと述べました。本日までの"確定日別"(以下の日付はすべて確定日ベース)の感染者数をもとに,第3波が2つのプロファイルから成るモデルに変えて,これまでと同じ方法によってロジスティック関数の最適化を行ない,結果を検討しました。
 
図1に,日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),本ブログの解析による日別の感染者数の計算値(日別calc),そして"再生産率"を挙げます。"第3波"としてはプロファイルAとBの和として日別の感染者数の計算値をプロットしてあります。"再生産率"は"実効再生産数"に相当する値で,1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1でピーク,1よりも小さければ小さいほど収束に向かう傾向が大きくなります。
 
再生産率は,10月25日に1よりも大きくなり,11月6日には1.45の最大値となりました。その後は減少し,21日に1.05まで低下しました(この日を前回はピークとみなした)。しかし,その後は25日の1.06まで増えてから再び減少に転じました。11月30日には1を切り,ピークに達したことを示唆しています。このように再生産率は,日別感染者数が21日頃にほぼピークに達してからも漸増にあり,30日頃がそのピークとなったことをよく表しています。
 
第3波のプロファイル自体の基本再生産数の相当値は,当初は2.4程度と得られていたものが,前回の解析では1.80と小さくなり,さらにその後1.7まで小さくなりました。単一のプロファイルならばこの相当値はほぼ一定の値のはずです。このように小さくなるのは,プロファイルの性格が変わった,複数のプロファイルの合算である,などによりプロファイルの幅が広がったことを意味すると,前回のブログで述べました。そこで,第3波が2つのプロファイルAとBから成るモデルに変更しました。
 
プロファイルAは,基本再生産数相当値が2.15,環境収容力(全期間の感染者数)が約6,100名,変曲点が11月14日(この日を前々回のブログではピークではないかと考えました)です。プロファイルAは,基本再生産数相当値が2.00,環境収容力が約10,400名,変曲点が12月2日と得られました。これらの和としては,再生産率が示すように30日頃がピークでした。ただ,プロファイルBの変曲点からの日数が少なく,まだまだ不確定の要素が大です。
 
図1. 東京都が12月6日発表の確定日別データ(12月5日まで)に基づいています [図をクリックすると拡大]
 
第2波の主要なプロファイル(日別感染者数はD f1 calc),第2+γ波(D f2 calc),第3波のプロファイルA(D f3A calc)とプロファイルB(D f3B calc)を計算に含め,これらを合成した計算値(日別calc)を図1と図2に示しています。"第3波"はAとBの和です。感染者数の累計値(累計obs')に計算値を最適化した結果(累計calc')は図2に示してあります(最新の累計感染者数で除して最大値が1となるように規格化した値です)。
 
最近の日別感染者数は,ほとんどが第3波のプロファイルの寄与が占めています。このプロファイルの環境収容力の合計は約16,500名で,第2波(主要)とほぼ同じ値となりました。合計のうち,これまで約12,000名の感染者が報告されたことになります。
 
第3波の2つの近接するプロファイルのパラメータは,連続的な累計感染者数から求めた便宜的なもので,和としてのプロファイル(図1と2の"第3波")の方が意味のあるものです。ただ,第3波が2つのプロファイルで表され,後者の基本再生産数相当値が小さい(拡大が遅い,プロファイルの幅が大きい)のは示唆的です。急速に拡大する感染が他所に拡大し,感染に多相性が現れることは多々あります。同一のプロファイルが日時と場所の広がりで発生すると,プロファイルはこのような幅の広がりを示すことになります。東京都の23区特別区の合計感染者数は,1週間の感染者数が11月23日までよりも30日までの方が少なくなっていますが,市部の合計感染者数は30日の方がその前よりも増えています。これらを反映したプロファイルかもしれません

全国的な第3波の傾向として,ほぼプロファイルに沿ってピークに達した(あるいはその近くに至った)後で,減少に転じないで横ばいまたは漸増するケースが目立ちます。東京都の場合は漸増の傾向が続き,ピークはまだ正確には求まっていません。北海道の場合は,東京都と同じような経過を経て,既にピークを過ぎたものと思われます。
 
図2. 東京都の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [クリックで拡大]
 
図2に東京都の感染者数プロファイルの詳細を示します。第3波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は第3波Aに第3波Bを組み込んだものです。τ×平均は実質的な増加率であり,最適化で得られるτ×増加率を追随しています。

第2波はピークを過ぎて日別感染者数がピークの半分に近くに減ってから,再生産率が1近辺の値に留まり,収束には至りませんでした。日別の感染者数がピークを過ぎても,実際に感染を惹起する感染者数はさらに1週間程度は増え続けます。したがって,今後2週間程度は,感染が再度広がってしまう,クラスターが発生し易い,のように感染プロファイルを変えてしまう要因はまだまだあります。

図の見方は,以下,あるいは,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご覧ください。

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