2020/12/06

COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析 [12月6日]

COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析 [12月6日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Hokkaido [December 6th, 2020]

 

北海道のCOVID-19新型コロナウィルス感染症の感染者数について,本日12月6日発表までのデータを使用して,感染者数のプロファイルを解析しました。第3波の日別の感染者数のピークは11月17日でした。その後は感染者の減少はとても緩やかでしたが,29日からはやや早くなりました。

北海道のデータについては,前回11月23日に"COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析"において,ピークを17日頃としてこのブログで述べました。その後,日別の感染者数が11月20日には304名の最大数を記録し,18日から12月4日まで200名越えの日が頻出しました。ロジステック関数でプロファイルを最適化する方法で,今回の解析も前回と同様に行いました。

図1に7月1日から本日までの日別の感染者数(日別obs),日別感染者数の7日間移動平均値(日別ave)を示します(7月以前のプロットについてはこれまでのブログをご覧ください)。累計calcは最適化によって得た累計値の計算値,日別calcは累計calcから算出した日別感染者数の計算値です。

急峻に立ち上がっている第3波のプロファイルは,2つのプロファイルの和で表したものです。前回のブログの後でも多数の感染者があり,元々の1つのプロファイルA(図2のD 3fA calcに相当)ではピーク付近の幅が広がり,基本再生産数相当値(内的自然増加率から算出)が小さくなって,感染者数の様相を表現するにはあまり適切ではなくなりました。そこで新たなプロファイルB(図2のD f3B calc)を追加しました

第3波の当初のプロファイルAの変曲点は11月13日,基本再生産数相当値は2.34,環境収容力は3,170名です。この変曲点の日付は,前々回のブログでピークの可能性を指摘した日付と同じです(前々回の指摘はほぼ妥当であった!)。追加のプロファイルBの変曲点は11月29日,基本再生産数相当値は2.0,環境収容力は5,230名です。

これら2つのプロファイルのパラメータは,連続的な累計感染者数から求めた便宜的なもので,和としてのプロファイル(図1の"第3波",図2のD f3 calc)の方が有意なものです。ただ,第3波が2つのプロファイルで表され,後者の基本再生産数相当値が小さい(拡大が遅い,プロファイルの幅が大きい)のは何かを示唆しているものかもしれません。個別の事例は見ていないのですが,急速に拡大する感染が他所に拡大し,多相性を表していることはあり得ます。同一のプロファイルが日時と場所の広がりで発生すると,プロファイルはこのような広がりを示すことになります。札幌市が主体のプロファイルから道内への感染の拡大のようなケースで,時間の遅れ・広がりと地理的な拡大です。

12月8日追記: 図1aに,石狩振興局管内の感染者数(7,157名)のプロファイルを示します。札幌市が石狩振興局管内の人口の約8割を占め,ほぼ札幌市の状況を反映しているとみなして良いでしょう。なお,居住地が非公表の分(529名)は含まれていません。図1bに,北海道から石狩振興局管内の感染者数を除いた分(3,006名)について,感染者数プロファイルを示します。ともにデータは12月7日までのものです。図1bの第3波のピークは11月17日です。図2bの第3波のピークは11月29日頃で,この頃の感染者者数の多くは上川総合振興局(旭川市を含む)の分(709名)です。11月14日頃の肩状までの多くは上川総合振興局の分ではないようです。非公表の分も含むので,札幌市に由来するものかもしれません。

図1の再生産率を見ると,11月17日に1となりました。この日が第3波のピークです。前回のブログの解析では,この日が変曲点,すなわちピークと解釈していました。その後は1をわずかに下回る日々が続き,29日からはやや下降のペースが速まりました。本日の再生産率は0.54近くまで低下していますが,図2の増加率を見ると,ここ数日は減少が緩やかとなっていることを示唆しているので,小さく見積もっている可能性があります。

第3波の合計した環境収容力は8,400名で,前回の6,940名よりはかなり増えました。第3波(先駆)と第3波と合わせて本日までに8,260名の感染者数をカバーしており,今後は速やかに収束するとしても,第3波の分として約1,500名の感染者が見込まれます。さらなるクラスターの発生などがあると見込まれる数が大きくなります。

全国的な第3波の傾向として,ほぼプロファイルに沿ってピークに達した(あるいはその近くに至った)後で,減少に転じないで横ばいまたは漸増するケースが目立ちます。北海道の場合は,ほぼ横ばい状態から減少に転じたようです。このような挙動は似たようなプロファイルの他の都府県の先駆けと言ってよいでしょう。それでも減少のペースが緩やかのように見受けられ,ピークを長引かせない,収束を遅らせない適切な対処策が必要です。累計の感染者数が多いと感染多発の懸念が長引きます。

図1. 北海道の感染者数プロファイルの詳細と再生産率[図のクリックで拡大]

Data source: 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報: 北海道オープンデータポータル https://www.harp.lg.jp/opendata/dataset/1369.html

図1a. 石狩振興局管内の感染者数のプロファイル [12月7日までのデータ]
 
図1b. 石狩振興局管内の感染者数を除いた全道の感染者数プロファイル [12月7日までのデータ]

図1には,再生産率をプロットしてあります。この再生産率は日別感染者数の計算値から求めたもので,詳細は"COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [10月11日]"(図の見方,説明などもこちら)をご覧ください。

再生産率は,1人の感染者が新たに引き起こす感染者の数,すなわち,実効再生産数に相当する値です。 図2の再生産率を見ると,その高いところの値は基本再生産数の相当値に対応して現れていますが,プロファイルが重なっているために鈍化して低めの値となっています。再生産率が1を越えると日別の感染者数が増えだし,1を切って小さくくなるところでピークを迎えて減少し始めます。COVID-19の感染の拡大・縮小期では,ある時点での感染者数に再生産率を乗じた数の感染者が,1週間後の新たな感染者数の目安となります。 

再生産率(実効再生産数)は感染の拡大・縮小の目安となる指標ですが,規模の大小を示すものではありません。感染のプロファイルではその幅(ピークまでの期間)と高さが規模を表し,これをまとめた指標が環境収容力です。このブログの解析では,累計の感染者数から,環境収容力,内的自然増加率(基本再生産数を与える)と変曲点(ピークの時刻)を算出しています。最大となるピークの日別感染者数は (環境収容力)×(内的自然増加率)/4 で得られます。ピークを概ね1週間経過するまではロジステック関数の最適化の精度が充分ではないので,第3波(急峻)の推移にはご注意ください。

図2 北海道の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [図のクリックで拡大]
 

図2には,最適化解析の詳細として,各プロファイルの日別感染者数の計算値として,第3波(前駆)プロファイル5についてD f3P calc,第3波のプロファイルAについてD f3A calc,追加プロファイルBについてD f3Bなどを示します。D f3 calcは,プロファイルAとBの和です。

図2での感染者数の累計値は,累計数の直近の値(最大値)で除して1となるように規格化して累計obs',最適化した累計値も同じ値で除して累計calc'としてプロットしてあります。この2つのプロットがよく重なっていれば最適化が良好であることを意味します。第3波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は,第3波のAにBを組み込んだものです。値は,日別感染者数をプロファイルの累計感染者数で除したものに感染惹起期間τを乗じたもので,平均は感染者数の移動平均値(日別ave),増幅率は最適化から得た計算値(日別calc)を,それぞれ累計の計算値で除して算出しています。

図の見方などは,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"もご覧ください。

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