2020/12/17

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [12月17日]

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [12月17日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Tokyo [December 17th, 2020]

 
東京都が本日12月17日に報道発表した感染者数は822名でした。16日の678名に続いて最大数の更新で,とくに本日は初めての800名越えでした。確定日ベースの感染者数を用いて,感染者数のプロファイルを解析しました。
 
前日データ取り扱いの変更: 11月25日頃にはいったんピークに達した後も日別の感染者数の増加が続いています。データの変動は著しくなっています。確定日別のデータでは最近の経過はさらにすさまじく,過去に遡る修正も多く,前日分が占める割合が0.79から0.65程度まで低下しています(東京都のの集計の質が低下した?)。これまでは発表日の80%が前日分であることから報道発表数を前日のものとして計算に用いていました。発表日の確定日ベースの前日と当日の和を0.664で除した数,発表日の報道発表の数のいずれか小さい数,これら2つの数の平均値を確定日ベースの前日の当座の値とすることに変更しました(12月31日)。この方式では,16日の確定日ベースの感染者数は822名ではなく,804名となります。報道発表ベースの感染者数は,およそ66%が前日分で(13%や40%台の日々も最近にはあった),残りのほとんどはそれ以前の日の分です。以下の日付は,これらに最新の修正が施された確定日のデータに基づいています。

前回のブログ(12月6日)に記載した"東京都の感染者数プロファイルの解析"では,暫定的な結果として,
日別感染者数が21日頃にほぼピークに達してからも漸増にあり,30日頃がそのピークとなったようだと考えました。第3波が2つのプロファイルから成るモデルとしたときの後の方のプロファイルBが増え続けている様子を述べました。これまでと同じ方法によってロジスティック関数の最適化を行ない,結果を検討しました。
 
図1に,日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),本ブログの解析による日別の感染者数の計算値(日別calc),そして"再生産率"を挙げます。"第3波"としてはプロファイルAとBの和として日別の感染者数の計算値をプロットしてあります。"再生産率"は"実効再生産数"に相当する値で,1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1でピーク,1よりも小さければ小さいほど収束に向かう傾向が大きくなります。
 
再生産率は,11月7日の1.40の最大値から減少に向かい,24日に1を切りいったん感染者数のピークに至りました。しかし,30日には1を越えて感染者数が増加に転じました。その後は感染者数の漸増を表す再生産率1.18程度の日が続き,12月16日現在でも1.16で,増加の勢いは止まっていません。再生産率は小さいのですが,感染者数自体が大きいので,(再生産率)×(感染者数)が示す,およそ1週間後の感染者数は大きく増えています。
 
第3波のプロファイルAは,基本再生産数相当値が1.94,環境収容力(全期間の感染者数)が約8,100名,変曲点が11月18日です。プロファイルBは,基本再生産数相当値が1.53,環境収容力が約35,400名,変曲点が12月27日と得られました。基本再生産数相当値が小さくなり (時間・空間的に広がった),環境収容力はBで著しく大きくなりました。プロファイルBは変曲点にはまだ達していない(ピークに達していない)ので,解析はまだ不確定の要素は大です。
 
図1. 東京都が12月17日発表の確定日別データ(12月16日まで)に基づいています [図をクリックすると拡大]

第2波の主要なプロファイル(日別感染者数はD f1 calc),第2+γ波(D f2 calc),第3波のプロファイルA(D f3A calc)とプロファイルB(D f3B calc),これらすべてをを合成した計算値(日別calc)を図1と図2に示しています。"第3波"はAとBの和です。感染者数の累計値(累計obs')に計算値を最適化した結果(累計calc')は図2に示してあります(最新の累計感染者数で除して最大値が1となるように規格化した値です)。

最近の日別感染者数は,ほとんどが第3波のプロファイルの寄与が占めています。このプロファイルの環境収容力の合計は約43,500名で,最近10日間で約5,200名の増加です。合計は第2波(主要)約17,000名の2.63倍となりました。合計のうち,これまで約19,000名の感染者が報告されたことになり,合計の半分には達しておらず,プロファイルがこのまま推移するとしたら(楽観的な見通し),約25,000名の感染者が今後に生じます。
 
第3波の2つの近接するプロファイルのパラメータは,連続的な累計感染者数から求めた便宜的なもので,和としてのプロファイル(図1と2の"第3波")の方が意味のあるものです。プロファイルAはほぼ終息に達し,現在はBが大部分です。後者の基本再生産数相当値が小さい(拡大が遅い,プロファイルの幅が大きい)のは示唆的です。急速に拡大する感染が他所に拡大し,感染に多相性が現れることは多々あります。同一のプロファイルが日時と場所の広がりで発生すると,プロファイルはこのような幅の広がりを示すことになります。

全国的な第3波の傾向として,ほぼプロファイルに沿ってピークに達した(あるいはその近くに至った)後で,減少に転じないで漸増するケースが目立ちます。東京都の場合は漸増の傾向が続き,ピークにはまだ到達していません。図3に元旦までの感染者数のプロファイルを示します。感染者数が多い状態で,年末から年始に突入する恐れが非常に大です。医療機関が休みに入り,感染者が増え続けるのを想像すると心痛の極みです。今からの少なくとも10日間はとくに感染は避けたいものです。
 
図2. 東京都の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [クリックで拡大]
 
図2に東京都の感染者数プロファイルの詳細を示します。第3波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は第3波Aに第3波Bを組み込んだものです。τ×平均は実質的な増加率であり,最適化で得られるτ×増加率を追随しています。"τ×平均"は,この2日間は増加率よりも大きくなっています。これは,解析のプロファイルよりも実際の感染者数が多い,増える傾向であることを示唆します。プロファイルは過去の,とくに直近2週間以上の,すべてのデータを反映したもので,図3は予測ではなく,過去に基づく計算結果です。

図3. 東京都のプロファイル関数の最適化と計算値(2021年1月1日まで) [クリックで拡大]

第2波はピークを過ぎて日別感染者数がピークの半分に近くに減ってから,再生産率が1近辺の値に留まり,収束には至りませんでした。日別の感染者数がピークを過ぎても,実際に感染を惹起する感染者数はさらに1週間程度は増え続けます。したがって,今後3週間程度は,感染が再度広がってしまう,クラスターが発生し易い,のように感染プロファイルを変えてしまう要因はまだまだあります。

図の見方は,以下,あるいは,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご覧ください。

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