2020/12/16

COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析 [12月16日]

COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析 [12月16日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Hokkaido [December 16th, 2020]


北海道のCOVID-19新型コロナウィルス感染症の感染者数について,本日12月16日発表までのデータを使用して,感染者数のプロファイルを解析しました。第3波の日別の感染者数のピークは11月18日となり,12月6日頃までは感染者数は緩やかに減少しました。その後,減少のペースが速まり,収束へ向かうようなプロファイルとなりました。

北海道のデータについては,11月23日と前回12月6日の"COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析(前回)"において,ピークを17日頃としてこのブログで述べました。前回以降,日別の感染者数が12月10日には241名となる日がありましたが,16日には85名と11月4日以来初めて100名以下の感染者数となりました。ロジステック関数でプロファイルを最適化する方法で,今回の解析も前回と同様に行いました。

図1に8月1日から本日までの日別の感染者数(日別obs),日別感染者数の7日間移動平均値(日別ave)を示します(7月以前のプロットについてはこれまでのブログをご覧ください)。累計calcは最適化によって得た累計値の計算値,日別calcは累計calcから算出した日別感染者数の計算値です。"第3波"のプロファイルは,プロファイルA(図2のD 3fA calcに相当)とプロファイルB(図2のD f3B calc)の日別の感染者数の計算値の和です。

プロファイルAの変曲点は11月16日,基本再生産数相当値は2.03,環境収容力(プロファイルの終わりまでの全体の感染者数)は6,000名となり,プロファイルBの変曲点は12月8日,基本再生産数相当値は2.04,環境収容力は4,090名となりました。基本再生産数相当値がほぼ等しいプロファイルです。

これら2つのプロファイルのパラメータは,連続的な累計感染者数から求めた便宜的なもので,和としてのプロファイル(図1の"第3波",図2のD f3 calc)の方が有意なものです。ただ,第3波が2つのプロファイルで表され,前者が札幌市が主体(石狩振興局管内),後者が他の地域の状況を担うプロファイルの可能性を前回で示唆しました(前回のブログの「12月8日の追記」もご覧ください)。なお,この傾向はその後も継続しており,石狩振興局管内での収束傾向に比して,プロファイルBに対応して十勝と胆振の地方では感染者数が多い状況が前回以降も続いています。

図1の再生産率を見ると,11月18日に1となりました。この日が第3波のピークです。その後は1を下回りましたが,プロファイルBの寄与に起因して12月3日にはほぼ1近くの0.97まで戻りました。その後は感染者数の減少のペースの速まりに対応して,下降のペースも速まりました。本日の再生産率は0.44近くまで低下しています。図1の日別aveと図2の増加率を見ると,先週中頃からは減少傾向がより強くなっていることを示唆しています。このまま推移すると,12月末には1日の感染者数が20名以下になる計算です。北海道における感染への取り組みが功を奏していることを期待させます。

第3波の合計した環境収容力は10,100名で,前回の8,400名よりは増えました。第3波は本日までに9,000名の感染者数をカバーしており,第3波の今後の分として約1,100名の感染者が見込まれます。さらなるクラスターの発生などがあると,プロファイルが変わり(基本再生産数相当値が小さくなる),見込まれる感染者数が大きくなります。

第1波と第2波は,全国的にもほぼ単一のプロファイルで表され,ピークを過ぎるとそのプロファイルのパラメータを反映する収束の傾向でした。第3波の傾向として,ほぼプロファイルに沿ってピークに達した(あるいはその近くに至った)後で,減少に転じないで横ばいまたは漸増するケースが目立ちます。これは第3波が2つのプロファイルから成る様態を示すことに起因します。

北海道の場合は,ほぼ横ばい状態から減少に転じました。減少のペースは当初は緩やかでしたが,後に現れたプロファイルBがピークを越えると,速やかな収束の傾向を示し始めました。第3波の前の日別の感染者数が多かった都府県では,第3波がいったんピークに近づいてから漸増の傾向が現われているようで,北海道など第3波の前の感染者数が少なかった地方では,収束の傾向が良好のようです。第2波と第3波のそれぞれの始まり(いつ始まったか)に着目し,また,第3波の直前の累計の感染者数に着目すると,これらが第3波の挙動に影響を及ぼしていると考えたほうが理にかないます。こう考えると,第3波を充分に収束させることが,その後の経過(第4波?)には肝要ではないでしょうか。

図1. 北海道の感染者数プロファイルの詳細と再生産率[図のクリックで拡大]

Data source: 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報: 北海道オープンデータポータル https://www.harp.lg.jp/opendata/dataset/1369.html

図1には,再生産率をプロットしてあります。この再生産率は日別感染者数の計算値から求めたもので,詳細は"COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [10月11日]"(図の見方,説明などもこちら)をご覧ください。

再生産率は,1人の感染者が新たに引き起こす感染者の数,すなわち,実効再生産数に相当する値です。 図2の再生産率を見ると,その高いところの値は基本再生産数の相当値に対応して現れていますが,プロファイルが重なっているために鈍化して低めの値となっています。再生産率が1を越えると日別の感染者数が増えだし,1を切って小さくくなるところでピークを迎えて減少し始めます。COVID-19の感染の拡大・縮小期では,ある時点での感染者数に再生産率を乗じた数の感染者が,1週間後の新たな感染者数の目安となります。

図2 北海道の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [図のクリックで拡大]

図2には,最適化解析の詳細として,各プロファイルの日別感染者数の計算値として,第3波(前駆)プロファイル5についてD f3P calc,第3波のプロファイルAについてD f3A calc,プロファイルBについてD f3Bなどを示します。D f3 calcは,プロファイルAとBの和です。

図2での感染者数の累計値は,累計数の直近の値(最大値)で除して1となるように規格化して累計obs',最適化した累計値も同じ値で除して累計calc'としてプロットしてあります。この2つのプロットがよく重なっていれば最適化が良好であることを意味します。第3波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は,第3波のAとBを個別に表したものです。

図の見方などは,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"もご覧ください。

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