2020/05/23

COVID-19 神奈川県の感染者数の推移と予測


COVID-19 神奈川県の感染者数の推移と予測

(2020年5月23日)

Logistic Growth Estimation for COVID-19 Pandemic in Kanagawa Pref., Japan (As of May 22, 2020)


神奈川県のCOVID-19新型コロナウィルス感染症の感染者数について,ロジスティック関数を最適化してみました。

方法は,北海道についてのページと同様に,ロジスティック関数2つの和を,累計のPCR陽性者数を感染者数として,これらに最適化しています。

報告されている感染者数データは,曜日などに依存して,とても大きなばらつきを示していますが,そのまま計算に使用しました。したがって,この点を考慮しながら結果を解釈しましょう。

高いピークの変曲点は4月14日(内的自然増加率は0.125)で,日本国内全体と東京都の値と近いものです。後の小さなピークの変曲点は5月15日(内的自然増加率は0.210)で31日間の遅れです。こちらは,神奈川県内のクラスターの発生(第2波といえるか?)を反映しているようです。

なお,感染者データの日付は,実際に感染が生じた日付からは少なくても7~9日間程度の遅れがあるものと考えらえます。よって,感染のピークは4月6日とその前後と推測できます。

用いたデータは5月22日までのものですが,関数の計算値は6月2日まで示してあります。
なお,このページは,計算結果の検証を目的とし,将来をなんら保証するものではありません。


Data source: 神奈川県:新型コロナウイルス感染症対策 陽性患者数及び陽性患者の属性データ
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/t3u/dst/s0060925.html 内の「陽性患者数と陽性患者の属性」

COVID-19 北海道の感染者数の推移と予測

COVID-19 北海道の感染者数の推移と予測

(2020年5月23日)

Logistic Growth Estimation for COVID-19 Pandemic in Hokkaido, Japan (As of May 21, 2020)


第2波が来たという北海道のCOVID-19新型コロナウィルス感染症の感染者数について,ロジスティック関数を最適化してみました。

今回は,ロジスティック関数Ni 2つの和Nを,累計のPCR陽性者数を感染者数として,これらに最適化しています。
      N = Sum i {Ni}
Nを累計calcとして,時間微分dN/dt を日別calcとしてグラフにプロットしてあります。 

最初の変曲点は3月3日(内的自然増加率は0.176),後の大きなピークの変曲点は4月24日(内的自然増加率は0.154)となりました。これらの間隔は52日間もあります。

大きなピークの変曲点は日本全体と東京よりもおよそ10日間の遅れで,全国的な感染が遅れて到来し,第2波のように現れたものでしょうか。

なお,感染者データの日付は,実際に感染が生じた日付からは少なくても7~9日間程度の遅れがあるものと考えらえます。よって,感染のピークは4月16日とその前後と推測できます。

報告されている感染者数データは,とても大きなばらつきをもっていますが,計算した関数は分布をよく反映していると思います。

用いたデータは5月21日までのものですが,関数の計算値は6月2日まで示してあります。

このまま今後も推移すると,北海道全体で感染者数がすぐに1~2人になりそうです(既になっている?)。今後の感染者数の推移が,緑の実線よりも大きい傾向を示せば,新たなクラスターの発生など,今までと異なるトレンドに入った可能性を示唆します。

Data source: 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報 北海道オープンデータポータル www.harp.lg.jp/opendata/dataset/1369.html

2020/05/18

COVID-19感染者数の今後の推移の予測 (日本と東京)

COVID-19感染者数の今後の推移の予測 (日本と東京)

(2020年5月18日)

Logistic Growth Estimations for COVID-19 Pandemic in Tokyo and in Japan

(As of May 18, 2020)

あくまでも目安として,新型コロナウイルス感染症COVID-19の感染者数の推移を,ロジステック関数を用いて,今後を計算してみました。

今日は何人,それでは明日は? 1週間後は...?
気になり,話題にも上がるでしょう。
以下は,計算結果の検証を目的とし,将来をなんら保証するものではありません。

日本国内の感染者数


次のグラフは,4月30日までの日本国内の感染者数のデータだけを用いて,5月31日までの関数の計算値をプロットしたものです。棒グラフは,5月1日の後に報告された感染者数です。

感染者数は,曜日,休日などの状況や,報告から報道までの時間などに依存して,かなりの偏りがあります。それでも,4月30日時点での関数は,これまで(5月17日)のデータをよく反映していると私は考えます。
 
Fig.1. 日本の感染者数の予測
Data source:
感染者数は朝日新聞に掲載されている国内の感染者数
"日本の感染収束傾向も4月下旬には推測できた?"ページの4月30日の関数パラメータ
 
図3は,5月18日から6月3日までの感染者数(うすい黄色の棒グラフ)を書き加えたものです。
緑の線の計算値を上回る数の感染者数を見ることができます。これらの増加傾向は新たな感染パターンの発生を示唆します。


Fig. 3. 日本の感染者数の増加傾向

東京都の感染者数


東京都の日別の感染者数を,最新(5月16日)の確定日別の感染者数のデータを用いて,5月31日までの関数の計算値をプロットしました。棒グラフは報告された感染者数です。

報告数には偏りがある,比較的に小規模なクラスターの発生があった,今後も偏りと発生がありうることに留意して,推移を見ていこうと思います。
 
Fig. 2. 東京都の感染者数の予測
Data source:
感染者数は東京都公開データ https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/の確定日別のデータ
"東京都の感染収束傾向は4月下旬には推測できた?"ページの最新の日別clacの関数パラメータ
 
図4は,5月17日から6月3日までの感染者数(うすい黄色の棒グラフ)を書き加えたものです(5月16日の感染者数は発表が後日修正され,図4では修正後のものです)。赤い線の計算値を上回る数の感染者数を見ることができます。これら増加傾向が新たな感染パターンの発生を示唆したことから,第2波の感染者数プロファイルを導入しました。

6月18日までの感染者数データを用いて第2波の感染者数への寄与を計算したものが修正値です。第1波の計算値に修正値を加えたものが更新値です。このグラフから,5月16日時点での計算値はその後の経過をよく説明しており,第2波の到来を予測できるものであることが判ります。また,第2波の修正値も妥当なことが判ります。
 
Fig. 4. 東京都の感染者数の増加傾向と第2波プロファイルの導入

2020/05/16

日本の感染収束傾向も4月下旬には推測できた?

日本の感染収束傾向も4月下旬には推測できた?

(5月16日)

"COVID-19感染者数へのロジスティック関数の最適化"を5月15日までのデータを用いて,日本の国内感染者数について行いました。
 
結果と結論は私の先の東京都についてのblogとほぼ同じです。


Data Source: 朝日新聞に掲載されている国内の感染者数
 

日本の国内での感染収束の傾向は4月の下旬には推測できた?


同じデータを用いて,過去のある時点までのデータで関数の値を推測してみました。

4月23日までのデータだけを用いてロジスティック関数を見積もりました。さらに,4月25日,30日,5月5日,5月10日,15日(最新)の時点までのデータでも見積もりました。 

結果は,カーブの変曲点は4月14日で,4月23日,4月25日と最新の結果に近づき,4月30日以降は,最新の結果と見分けがつかないほど,一定の結果を示しました。ピークは4月14日,内的自然増加率は0.138に収れんしました。
 

日本の国内での感染収束の傾向は,東京都の場合と同じく,4月の下旬には推測できたかもしれません。
 
その他,東京都について推測の記載をご覧ください(東京都のデータは確定日ベースなので1~2日早いので,関数の収れんも早かった)。また,ロジステリック関数の取り扱いも先のblogページをご覧ください。

東京都の感染収束傾向は4月下旬には推測できた?

東京都の感染収束傾向は4月下旬には推測できた?

(2020年5月16日)

Logistic Growth Model for COVID-19 Pandemic in Tokyo, Japan (As of May 16, 2020)


東京都は"PCR検査陽性者の発生動向(確定日別による陽性者数の推移)"のデータを公開し始めました。

そこで,"COVID-19感染者数へのロジスティック関数の最適化"を5月14日までのデータを用いて行いました(私の以前のblogページは,報告日別のデータしか公開されておらず,そのデータを使用)。

報告された日別データは,曜日に著しく依存する傾向が見られましたが,最適化された累計のカーブ(calc)の一致度は改善されています。
Data source: 東京都公開データ https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/
  2020/5/15 19:15 更新の5月14日までのデータ

感染収束の傾向を推測する


この公開データを用いて,もし4月13日確定日までのデータだけを用いてロジスティック関数を見積もるとどのような結果が得られるかを調べました。さらに,4月15日,20日,25日,30日,5月5日,5月10日,14日(最新)の時点までのデータでも見積もりました。

結果は,カーブの変曲点の4月13日の後の,4月15日以降のほぼすべての時点でよく合致したロジスティック関数が得られました。

この結果を見ると,4月下旬には収束をかなりよく推測できたと考えられます。

得られた r (内的自然増加率)は0.15~0.16の値で,最近のデータによる値0.1455に近いものです。

感染からPCR検査確定までの日数を,潜伏期間4日間,発症から検査まで4日間,検査から確定まで1日間とすると,感染させる状況の期間は7日間程度と想像され,これに r を乗ずると1に近い値となります。これは実効的な患者1名の感染増加率として考えることができます。

実効的な感染増加率は,最初は内的自然増加率に対応した最大値,時間の経過とともに(1-N/K)に比例して小さくなります。 変曲点(4月13日)では N=K/2 なので0.5程度,4月27日頃には0.25程度まで低下していたことを示唆します。

感染の推移,収束の傾向をより早く,確実に見通せるならば,経済,社会,各人の心構えに計り知れないメリットと希望をもたらすと期待されます。

2020/05/13

COVID-19感染者数へのロジスティック関数の最適化

COVID-19感染者数へのロジスティック関数の最適化

2020年5月12日

このような解析では門外漢ですが,徒然なるがままに,日本国内の感染者数のデータにロジスティック関数を最適化してみました。

図のように,日々の感染者数は曜日,休日などの影響を反映してかなりばらついています。それでも,累計の感染者数のトレンドを関数はとてもよく反映しています。

ロジスティック関数はわずか3つの値で表されます。図から,過去の増加数のピークと,今後の感染者数の最大数と増加数を読み取ることができます。ロジスティック関数の近似の良好さと,最大値は何を意味しているかを考えると,今後の感染への対策へのヒントを与えてくれます。

感染はローカルな小さなクラスターで発生し,クラスター間の相関が小さく,各クラスターではロジスティック方程式がはぼ成り立つようです(「感染者数の時系列」のページをご覧ください。地域ごとに感染者数と時期がかなり違っています)。

より大きな集団(たとえば全国)としては,これらクラスターの和となっているのでしょう(環境収容力が異なっていても,内的自然増加率がほぼ同じならば,ロジスティック関数の和の関数をロジスティック関数で表されそうです)。1つの感染の集団が大きいならば,環境収容力も大きいことになり,感染も爆発的に大きくなるはずです。しかし,最適化した環境収容力は小さいものです。

ここに挙げたグラフは,感染者数が世界的には少ないという日本の状況と対策の有効性を表していると思います。
Data Source: 朝日新聞に掲載されている国内の感染者数

ロジスティック関数は,
   N = K/{1+exp[-r(t-T)]}
で表されます(Wikipediaの日本語と英語のサイトを参考にしました)。

N はある時刻 t での個体数。
K は環境収容力とよばれ,ここでは最大となる感染個体数を表します。
r は内的自然増加率とよばれ,1個体がとりうる最大の増加率を示します。 
T は変曲点(N K の半分となる,または増加数が最大となる点)の時刻です。

ロジスティック関数は,関数の微分の形であるロジスティック方程式
   dN/d = r N (1-N/K)
の微分方程式の解です。ここでは,時刻を日の単位としているので,ロジスティック方程式の値は各時刻(日)における増加数を表しています。

私の見積もりでは,累計の感染者数のデータに N をよく合致させるため,残差の2乗が最小となるように KrT の3つの値を最適化しました。

ロジスティック関数の最大値は漸近的に環境収容力 K に等しくなります。また,増加数が峠となった変曲点の時刻は T です。

ロジスティック関数は変曲点に関して奇関数,ロジスティック方程式は偶関数です。したがって,将来の値は,変曲点を挟んで反対側の時刻を遡ると,知ることができます。国内の感染者数の変曲点の時刻は4月14日なので,5月12日とその先は,3月16日とその前の値を見れば知ることができます。なお,ここでの内的自然増加率は0.123です。


東京の感染者についても掲載します。


日本国内のデータよりも曜日,休日などによって大きくばらついています。それでもロジスティック関数はよい近似となっています。

Data Source: 東京都新型コロナウイルス感染症対策本部報の公開データ

変曲点の時刻は4月15日,内的自然増加率は0.129です。

2020/05/10

COVID-19 感染者数の累計の時系列

COVID-19 感染者数の累計の時系列

感染者数の累計を,期間ごとに区切って積み上げました。

各期間について,人口10万人当りの感染者数を積み上げグラフで表してます。

都道府県と東京都の自治体ごとに,感染者数は大きく異なります。
期間ごとに見ると,感染者数の大小と変化が把握できます。

期間の感染者数が前後の期間より目立って多いのは,クラスター発生を示唆してます。
多くの自治体で,感染が終息に向かっている様子も判ります。

道府県別 (5月9日現在)

Data source:厚生労働省と日本経済新聞が発表の数値データに基づく
「5月11日換算」は,5月9日までの3日分の数値を5日分に換算してある。

東京都の区と市(5月8日現在)



Data source: 東京都発表"新型コロナウイルスに関連した患者の発生について"より
最新は下記
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/007/846/2020050903.pdf
他に都外159名,調査中551名(永寿総合病院関連195名を含む)があり,計4096名のデータから作成

新型コロナ感染症COVID-19の状況

新型コロナ感染症 COVID-19 の状況

個人的に関心がある国,地域,自治体のCOVID-19の累計患者数(10万人当りの罹患率)と致死率です。
2020年5月8日 作成




致死率[Case Fatality Rate]=(死亡者数)/(感染者の累計数)

Data Source:
 WHO Situation Report
 Wikipedia; 2019–20 coronavirus pandemic by country and territory
 厚生労働省,東京都などの Web 資料




2020/05/09

死亡率と致死率

死亡率と致死率

厚生労働省の発表”新型コロナウイルス感染症の国内発生動向”
 mhlw.go.jp/content/109060 
はすさまじい。

「死亡率」2.5%とは! 

ずうっと「致死率」と取り違え,誤って発表している。 それとも,新たな解釈・定義なのかな?

死亡率(death rate, mortality rate)は
「死亡率」=「一定期間における死亡者数」/「(総)人口」 

死亡率2.5%ならば, 日本の総人口に対しては315万人の死亡者です。

致死率(case-fatality rate: CFR)は,死因ともなりえる急性の病気の流行が起こったときに
「病気aの致死率」=「一定期間における病気aによる死亡者数」/「一定期間における病気aの患者数」

5月5日の陽性者数15,186人で致死率2.5%ならば,死亡者数は380人(厚労省は,重複事例の精査を行っているため,約170人少なく死者数を計上している)。

なお,罹患率(りかんりつ、Incidence rate)は,
「病気aの罹患率」=「一定期間における病気aの患者数」/「病気aの危険にさらされる人口」 (×「乗数」)
「乗数」としては1000人,10万人,100万人などの値が適宜用いられます。

したがって,
「病気aの死亡率」=「病気aの罹患率」×「病気aの致死率」 (×「乗数」)


2020/05/08

再生産数とは

新型コロナ感染症を抑えるためには  再生産数とは

2020413

人との接触を80%に減少させることの意味


1つの個体(感染者)が,R0個の個体を生み出す(人に感染させる)とき,R0を基本再生産数という。
Basic Reproduction Number
図1 基本再生産数R03の場合には,1人の感染者が3人の新たな感染者を生み出す。

このような考え方は,人口の将来問題について採用されている。1人の女性が,平均して生涯に1人の女性を産めば,基本再生産数は1です。生まれた子供の2人に1人が女性なので,基本再生産数を2.08倍した値を合計出生率(合計特殊出生率)として,この値が問題になる。日本の2018年の合計特殊出生率は1.42である。このときの基本再生産数は0.71となる。この数値は,15歳から49歳までの1人の出産適齢女性について,一生の間に何人の子を産むかを表している。
 
基本再生産数が1より大きければ,大きいほど感染者数(人口)は増大し,1より小さければ小さいほど減少する。もちろん,1ならば,数は一定レベルに落ち着く。
 
合計特殊出生率が1.42ならば,1世代ごとに出生人口は0.71倍となり,2世代目では0.50倍となり,人口は著しく減少する。ちなみに,2019年の韓国の出生率は0.92といわれ,1世代ごとに出生人口は0.46倍,2世代目では,なんと0.21倍まで低下する。
 
感染症の場合,基本再生産数R0は,1感染個体(感染者)により直接生み出される感染個体数の平均と考えられる。感染を引き起こす病原体の感染力(b),単位期間あたりの接触の頻度(s),感染を惹起する期間(t)の積で表される。すなわち, 
                R0 = 感染力)×(接触頻度)×(惹起期間 = b s t                1)
基本再生産数R0は,新型コロナウィルス(2019-nCoVまたはSARS-CoV-2 virus)について1.4-5.7,新型インフルエンザ(pandemic H1N1/09 virus)について1.4-1.6の値が報告されている。

病原体への感染は,非感染集団の環境,免疫の有無,社会の防御の仕方(マスクなど)などによって変化し,これらの影響を加味した実効的な値として,実効再生産数Rの方が現実的な指標といえる。管理措置がない場合,R = c R0 c は感受人口の割合など環境の因子)となる。例えば,新型コロナウィルス(2019-nCoVまたはSARS-CoV-2)の実効再生産数Rとし2.93月の東京都では1.7などの値が報告されいる。

今回の政府の説明では,再生産数を2.5としている。外国では,3から6の値も報告されいる。これらをもとに,式1) に従って,接触頻度sと再生産数R' の関係をみてみよう。


管理措置がない場合の再生産数R

1.7
2.5
3.0
4.0

対策によって期待される再生産数R'
接触を40%に(60%減少)
0.68
1.0
1.2
1.6
接触を30%に(70%減少)
0.51
0.75
0.90
1.2
接触を20%に(80%減少)
0.34
0.50
0.60
0.80

 
例えば,再生産数R2.5のとき,接触を80%減少させて20%に下げた場合には再生産数R' 0.5と小さくなる。薄緑で網掛けした領域では,再生産数R' 1より小さくなるので,感染は減少・収束に向かうことが解る。しかし,接触の80%減少の政策スローガンは,過度の減少を目指しているのではないかと,とくに再生産数がより小さい場合には,ことさらこの疑問が残る。もしも,再生産数が5程度ならば,接触の80%減少では不十分なのではないかとの危惧も残る。
 

よって,現実の再生産数の見積もりに応じて,接触減少の度合いは柔軟に見積り,政策指針を改定していかねばならない。何が何でも80%減少の達成を目指す風潮を目にして,採用するモデル,政策目標,社会的なスローガンの固着ぶりが気になる。
ところで,再生産数とは,感染者(出産する女性)に関する数値であり,せいぜいそれらを含む集団に関する指標であることを思い出そう。感染者とその周囲の集団は,現時点では国民の0.01%に過ぎない。接触の減少を99.99%の国民に求めることは,本来は無意味のことである。感染者が特定できないので,国民すべてに接触の減少を要請し,感染者の集団へもその効果が及ぶことをを期待しているのである。感染者の集団が,要請を満たすように行動しなければ,政策は破たんするであろうとの危惧が残る(先日の朝日新聞の記事でもこれら諸点の危惧を指摘していた)。
このことは,出生率の増大のために,子供,老人,男性までにも協力を要請していることに等しい。ただし,女性が出産する環境をよりよくするという意味では,人口政策上は大いに意味がある。
同じような例として,"幸福の手紙"(チェーン・メール: 手紙を受け取った人がある数の手紙を出すように仕向ける)を考えると,このような手紙を控えるように要請する対象は,手紙を差し出すような集団に向けるべきで,国民すべてに要請することは対策としては全く意味を成さない(意識の向上には役立つだろう)。

PCR検査の簡便化と迅速化

さて,1) 式を見直してみよう。再生産数は,接触頻度のみならず,感染を惹起する惹起期間にも直接的に比例する。感染者を直ちに検出して隔離すれば,惹起期間は0となり,再生産数は0となる。現状では,感染したかもしれない時期からPCR検査の結果が出るまでに710日も要している。この期間を半分にすれば生産数は1/2に,かかったかなという時期に検査して翌日に検査結果が出ると再生産数は1/4程度に小さくできる。しかし,このような方策は全く進展していない。
 
惹起期間の短縮は,接触の減少とは異なり,感染者とその集団を対象とするので,生産数を直接的に減少できる。しかも,早期の検査の確定はその後の医療措置を激的に改善することになり,頻発する院内感染やクラスターの増大を防ぐこともできよう。PCR検査が陽性と判明したときには、感染者が亡くなっていることがある現状は悲しすぎ,憤りさえ感じる。
 
感染の診断検査(PCRはその一つ)の簡便迅速化は,接触頻度にして0.2程度を達成することはさして困難なことではない。中国と韓国は既にPCR検査の迅速化で,日本の1か月前に感染の封じ込めに成功している(現状ではそのように見える)。欧米でも、既に日本の100倍ほどのレベルで検査を実施している。幸い現在の日本の人口当たりの感染者数は,欧米の流行地域の100分の1程度と極めて少ない。したがって,必要とされる検査可能な数も相応に少ないので,実行できない訳は全くない。
惹起期間の短縮と接触の減少化を行えば,より有効な対策となり,現在のように大幅に接触を減らす必要がなくなる。当然,社会と経済に及ぼすメリットは計り知れない。経費がかかるアベノマスクの資金を投入すれば,迅速検査は実現できるはずであり,経済の保障に要する数10兆円規模の予算も大幅に減ずることが可能であろう。
行政は,国民に要請するだけの姿勢ではなく,本来は行政が行うべき医療検査の早急な実現,医療体制への補助サポート,国民の健康と円滑な生活の営みの実現にいっそう力を注ぐべきであろう。