2021/08/28

COVID-19 日本と東京近県の感染者数プロファイルの解析 [8月28日; 2021年]

COVID-19 日本と東京近県の感染者数プロファイルの解析 [8月28日; 2021年]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Japan and also those for prefectures nearby Tokyo [August 28th, 2021]

 

日本のCOVID-19感染者数と,東京の近県の感染者数について,NHKの集計データ(https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data-widget/)を用いて感染者数のプロファイルを解析しました。データは2021年8月28日までの累計の感染者数です。
 
ここでは日本全体神奈川県千葉県,埼玉県茨城県のプロファイルの解析結果を示します。第5波の主要なプロファイルの変曲点(ピーク)はこれらでは8月22日頃で,東京都の17日よりは遅くなっています。各プロファイルの確度は,変曲点から概ね1週間を経過すると高くなりますが,現時点での日数が少ないことから,県によって異なります。それでも,感染者数の傾向をプロファイルはよく表していると思っています。
 
解析の方法は,ブログ(8月28日)の"東京都の感染者数プロファイルの解析"と同様で,"第5波"の3つのロジステック関数のプロファイル5A,5Bと5Cで表しています。第4波と第5波,およびそれ以前のプロファイルをロジステック関数の和で表し,日々の累計の感染者数に対して,第4波と第5波の各関数のパラメータを最小二乗法により最適化しました。最適化の具体的な方法は上記ブログの東京都と同様です。
 
グラフの図では,日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),本ブログの解析による日別の感染者数の計算値(日別calc),着目している各プロファイルの日別の感染者数の計算値,そして"再生産率"を示しています。"再生産率"は"実効再生産数"に相当する値で,1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1でピーク(増加時。減少時には底の値),1よりも小さければ小さいほど減少・収束に向かう傾向が大きくなります。また,破線の"第5波8/x"として,8月x日時点での解析による第5波の各プロファイルの和をグラフに示してあります。その時点と現在の差異からプロファイルの変化と確度を推察ください。
 
[日本全国]
 
図1は日本全国の感染者数についてのものです。東京都の場合と同様に,第5波はプロファイル5Cが主体で,5Aと5Bはほとんど終息の段階です。5Cの変曲点は8月22日,基本再生産数相当値(R0)は2.13,環境収容力(終息までの全期間の感染者数)は557,000名です。8月23日からのプロファイルの変化が小さくなっているので,5Cのパラメーターは確度が高くなっています。今後やや幅が広がって(R0小さくなって),変曲点が遅くなるかもしれません。
 
1. 日本全体の感染者数とそのプロファイル [図をクリックすると拡大]
 
再生産率は7月24日に最大値の1.7(目安としては,1週間後には日感染者数が1.7倍になる)に達し,8月22日には1を切ってピークを迎えたました。
 
プロファイル5AはR0が1.53で,"アルファ型"(イギリス型)の感染プロファイルを反映していると考えられます。また,プロファイル5Bと5CはR0が2.43と2.13と大きく,両者とも"デルタ型"(インド型)の感染力の強さと,出現の割合を示唆しています。5Aと5Bは流行の時期の差異を映し出しているようです。
 
第5波のプロファイルの合計の累計感染者数(環境収容力。将来に現れる感染者数も含みます)は約814,000となりました。そのうち,約652,000名が本日までに現れているので,今後の累計感染者数は約162,000名です。入院など療養を要する人の数は,感染者数の日付から概ね2週間遅れて来るので,まだピークと想定される数の半数には達してはいないでしょう。また,死亡される方の数は3週間程度の遅れとなるので,感染者数の大きさから,今後が危惧されます。
 
解析では,できるだけ少ない数のロジスティック関数を用いて,関数の和として累積の感染者数へ最適化しています。用いているデータは暦日(日付,曜日,休日)についての過去の累積感染者数のみです。 したがって,予測ではありません。新たなプロファイルが現れた時には,過去のプロファイルからの乖離としてその出現を検知できます。プロファイルの確度は出現の初期には低く,おおむね変曲点を1週間を過ぎると信頼に値する確度になります。もちろん,新たな出現とその性状は見通すことはできません。また,結果も報告(公表)されるデータの性質と正確さに依存しています。結果の解釈は,結果を観る観点にも大いに依存していますので,ご留意ください。

図の見方は,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご参考ください。

[神奈川県]
 
神奈川県についての解析の結果を図2に挙げます。東京都と比べると,プロファイル5Cが大きくなり続けましたが,8月18日頃にはほぼ一定のパラメーターとなりました。第5波Cの変曲点は22日で,東京都の17日よりも5日遅れとなりました。R0は1.76とやや小さいのですが,5BのR0は3.64ととても大きい値です。そのため,7月下旬には急激な感染者数の増大があり,28日には再生産率は1.78まで大きくなっています。5Cの環境収容力は約89,000名で,第5波全体で約107,000名です。
 
2. 神奈川県が8月28日発表の日別データに基づきます [図をクリックすると拡大]
 
[千葉県]
 
千葉県についての解析の結果を図3に挙げます。神奈川県と同様に,プロファイル5Cが大きくなり続けました。8月21日頃までの再生産率が大きく,R0が大きかったのですが,現在は2.1となっています。5Cの変曲点は20日で,東京都の17日よりも3日遅れです。5BのR0は3.15ととても大きい値で,5CのR0は1.76とやはり大きい値です。そのため,7月下旬には急激な感染者数の増大があり,26日には再生産率は1.80まで大きくなっています。5Cの環境収容力は約36,000名で,第5波全体で約57,000名です。
 
8月21日の"第5波8/21"よりもプロファイルの広がりも傾向が顕著です。しかも,8月27日と28日の感染者数は,これまでのプロファイルによるものよりも多く,大きなクラスターの発生,お盆以降の感染者数の増大,あるいは新たなプルファイルの発生を示唆しているかもしれません。
 
3. 千葉県が8月28日発表の日別データに基づきます [図をクリックすると拡大]
 
[埼玉県]
 
埼玉県についての解析の結果を図4に挙げます。プロファイル5Aは第4波に近く,環境収容力が約1,200名と小さい。プロファイル5Bと5Cが大きく,他の近県とは異なっています。5Bの変曲点は8月9日R0は1.80,環境収容力は約37,000名です。現時点で日別感染者数への寄与が大きい5Cは,変曲点が8月22日,R0が2.26で近県の値に近く,環境収容力は約23,000名です。第5波全体では約62,000名です。
 
4. 埼玉県が8月28日発表の日別データに基づきます [図をクリックすると拡大]
 

[茨城県]
 
茨城県については,8月29日までのデータを解析しました。結果を図5に挙げます。プロファイル5Aは第4波に近く,環境収容5が約420名と小さい。プロファイル5Bが大きく,後続の5Cがやや小さく,埼玉県に近い状態ですが,この2つは起点が分かれています。現在はこれら2つともほぼ同じように減少に向かっています。5Bの変曲点は8月8日R0は1.97,環境収容力は約7,000名です。5Cは,変曲点が8月23日,R0が2.87と大きく,環境収容力は約3,300名です。第5波全体では約10,800名です。
 
近県よりは人口当たりの感染者数は少ないのですが,頻発しているクラスターによる感染者数の変動ぶれが大きくなっています。それでも再生産率は7月21日には1.75にも達する大きな値でした。現在の再生産率は0.15近辺まで小さくなっていますが,これはR0が大きい5Cとクラスター発生に由来しており,データの日数が増えると算出されるR0が小さくなって,減少のペースが鈍化するものと考えられます。

5. 茨城県8月29日発表の日別データに基づきます [図をクリックすると拡大]

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