COVID-19 東京都と近県の感染者数プロファイルの解析 [8月14日, 21日更新; 2021年]
Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Tokyo and nearby Prefectures [August 14th and 21th updated, 2021]
東京都が発表した確定日別の感染者数を用いて,感染者数のプロファイルを解析しました。2021年8月7日のブログでのプロファイルには,その後に顕著な変化が現われました。8月14日のデータによると,感染者数のピークは漸増を示し,8月15日(報道発表の速報データの日付では16日)頃を過ぎてようやく減少となります。東京オリンピック開催の期間が,今回の感染者数の増加の時期と対応しています。
参考までに,神奈川県,千葉県と埼玉県のプロファイルの解析結果を後方に挙げました。東京都,神奈川県と千葉県の第5波の主要なプロファイルは5Cで,基本再生産数相当値はおよそ1.83でほぼ同じ値です。埼玉県のプロファイルはこれらとは異なっていて,第5波の基本再生産数相当値はやはり1.82とほぼ同じです。
前回のブログ(8月7日)の"東京都の感染者数プロファイルの解析"では,"第5波"を2つのプロファイル5Aと5Bで表していました。その後の漸増傾向を本解析に反映するため,3つ目のプロファイ5Cを導入しました。第4波と3つの第5波のプロファイルをロジステック関数の和で表し,日々の累計の感染者数に対して各関数のパラメータを最小二乗法により最適化しました。最適化の具体的な方法は従来の解析と同じです。
[8月21日更新]
図0-1が8月14日の図1に,図0-2が同じく図2に対応する,8月21日の解析結果です。
第5波はプロファイル5Cが主体となり,5Aは僅な日別感染者数,5Bはほとんど終息の状態です。5Cの変曲点は8月18日,基本再生産数相当値は1.80,環境収容力は144,700名です。第5波の全期間の全体の感染者数は21万名となりました。前回の解析よりも約8,000名の増加です。
前回の解析では5Cはまだ変曲点(前回の計算では17日)には到達していませんでしたが,今回の解析では日別感染者数が僅かに増えて変曲点は1日遅くなりました。再生産率も17日には1よりも小さくなっており,このまま経過すると,来週後半には日別感染者数の減少傾向がより明瞭となり,プロファイルの確度も高くなりそうです。
図0-1. 東京都が8月21日発表の確定日別データ(8月20日まで)に基づく [図をクリックすると拡大] |
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更新は以上です。
[8月14日の続き]
最適化の期間内には,7月22日から25日までの4連休と8月8日と9日の連休がありました。報告される感染者数は,連休の影響を受けて,その期間と直後は感染者数は少なく報告されます。連休中と直後の数日は,通常の日曜日とその直後の感染者数の比率(計算値に対する報告数の割合)に近くなると仮定し,また最小二乗法の重みも小さくして解析を行いました。また,この操作の後に,減少分を後日の増加分で補填する処理を行いました。その他の日々については,曜日ごとの過去の比率データで補正して曜日による変動を低減しています。これら操作により,ある期間の累計感染者数は実際の累計数とは乖離させないという条件を付しています(前回までのブログにて説明しました)。
以前の解析の期間には,主要なプロファイルはせいぜい1つで,これに裾を引いた前後のプロファイルが重なっていました。今回の解析では,7月以降は,なんと3つのプロファイルが重なっています。これら3つのプロファイルの個々のパラメータは累計感染者数の日々の値を反映するもので,個々のパラメータの意味するところはこれまでのパラメータの意味よりも低くなっています。典型例と考えてください。
図1は,日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),本ブログの解析による日別の感染者数の計算値(日別calc),そして"再生産率"を挙げます。また,前回の解析での第5波のプロファイルの和を"第5波8/07"としてグラフに示してあります。"再生産率"は"実効再生産数"に相当する値で,1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1でピーク(増加時。減少時には底の値),1よりも小さければ小さいほど減少・収束に向かう傾向が大きくなります。
第4波のプロファイルは,5月3日が変曲点(ほぼピークに相当)で,基本再生産数相当値(R0)は1.48,環境収容力(期間全体の累計感染者数)はおよそ46,000名です。これらのパラメータ値はこれまでのブログからは変化がほとんどありません。本ブログの日付は確定日ベースで,報道発表データ(当日分の数は1%程度,前日分が約80%,残りがその前の日付の分です)よりは概ね1日早くなります(報道発表の日付は1日を加えて考えてください)。なお,実効再生産数は感染が生じた日が基準なので,"再生産率"を実効再生産数に対応させる際は,日付から7日を差し引いてグラフをご覧ください。
再生産率は,日別の感染者数が最小となった6月11日から1を上回りはじめ,第5波となりました。6月30日には再生産率は1.28まで増加し,ほぼ横ばいとなりました。これはプロファイル5Aが寄与したもので,"アルファ型"(イギリス型)の感染プロファイルを反映していると考えられます。その後,7月11日頃から急激な増加を見せ始め,24日には1.71まで大きくなりました。これは1週間でおよそ1.7倍の日感染者を生ずる大きな値です。この様子を反映してるのがプロファイル5Bで,"デルタ型"(インド型)の感染力の強さと,出現の割合を示唆しています。
再生産率は8月4日には1を切ってひとまずピークを迎えたました。その後はまた微増に転じ,第5波プロファイルAとBから乖離する感染者数の増加分が8月7日頃に認められ,5Cのプロファイルを加えました。この間の再生産率は1.06まで僅かに増えました。プロファイル5Cの基本再生産数相当値は5Bよりも小さいので減少の速度は低下しています。再生産率が1よりも小さくなるのは15日で,この時には5Aと5Bの割合が大きく低下しているので,今後の減少傾向は5Cのもので,やや緩やかな減少となります。5Cはやはりデルタ型を反映していると考えています。
第5波はまだ進行中なので,プロファイルの現在の値は暫定的です。とくに5Cは未だ変曲点に達しておらず,しかも4連休と2連休があったこと,3つプロファイルが近接して重なっているので,確度はまだ高くはありません。それでも図1の"第5波8/07"とは極めてよく合致しており,前回と今回の解析の確度は高いと考えています。
プロファイル5Aは,変曲点が7月15日,R0は第4波よりも少し大きい1.57,環境収容力がおよそ34,400名です。5Bは,変曲点が7月31日,R0は2.86,環境収容力がおよそ26,000名です。5Cは,変曲点が8月16日,R0は1.86,環境収容力がおよそ130,000名です。5Aの最大の日感染者数は約700名,5Bは約1,700名,5Cは約4,000名です。これらが重なった8月4日には約4,130名,14日には約4,300名の最大の計算値となっています。東京都の最新のエピカーブ(発症日ごとの感染者数データ)を見ると,7月27日頃に最初のピークがあり,その後にやや大きなピークが認められます。
解析したプロファイルには,診断確定日ベースで7月31日(発症日に約4日を加算した日付)が5Bのピークなので,対応は良好です。
第5波のプロファイルの合計の累計感染者数(環境収容力。将来に現れる感染者数も含みます)は約202,000となりました。前回の合計は104,600名でしたので,この1週間で倍増し,約10万名の増加となりました。この増加は,図1の"第5波8/07"を越える分で,オリンピック開催開始後の1週間に感染した人に起因する数と考えられます。また,直近1週間の感染者数は約3万名で,10万名の増加分は今後にも大きな感染者数をもたらします。なお,第5波は第4波のプロファイルよりもはるかに大きい4.4倍です。
図2に東京都の感染者数プロファイル解析の詳細を示します。第4波のプロファイル(日別感染者数はD f4
calc),第5波のプロファイルA(D f5A
calc),プロファイルB(D f5B
calc)とC(D f5C calc),これまでのすべてのプロファイルを合成した計算値(日別calc)を示しています。感染者数の累計値(累計obs')に計算値を最適化した結果(累計calc')も図に示してあります(最新の累計感染者数で除して最大値が1.6となるように規格化した値です)。
第5波BとCについての"τ×平均"と"τ×増加率"の2つの指標もプロットしてあります。"τ×増加率"は内的自然増加率の理論的な変化を表し,実際のデータからの"τ×平均"が,最適化で得られるτ×増加率をよく追随していれば,解析モデルと実際のデータの一致が良好であることを意味します。第5波プロファイルBとCはこれらの合致が良好で,感染の形態(変異株の構成が単一,など)が対象の期間にわたって一様であることを示唆していました。図の第5波Bについては,"τ×平均"と"τ×増加率"の値が初期の半分を過ぎる時点が変曲点なので,すでにピークを過ぎています。なお8月8-9日頃のこれら両者の指標の一致度は良い(連休の影響を避けるために重みを小さくしています)ので,連休の取り扱いと現在のパラメータは妥当と考えています。
解析では,できるだけ少ない数のロジスティック関数を用いて,関数の和として累積の感染者数へ最適化しています。用いているデータは暦日(日付,曜日,休日)についての過去の累積感染者数のみです。
したがって,予測ではありません。新たなプロファイルが現れた時には,過去のプロファイルからの乖離としてその出現を検知できます。プロファイルの確度は出現の初期には低く,おおむね変曲点を1週間を過ぎると信頼に値する確度になります。もちろん,新たな出現とその性状は見通すことはできません。また,結果も報告(公表)されるデータの性質と正確さに依存しています。結果の解釈は,結果を観る観点にも大いに依存していますので,ご留意ください。
図の見方は,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご参考ください。
[神奈川県]
神奈川県についての8月14日のNHKのデータ(https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data-widget/)による解析を図3(図1に相当)に挙げておきます。東京都と同様に,8月7日(図の"第5波8/07”)以降にプロファイルに変化がありました。オリンピック開催中の感染状況を反映しているはずです。
第5波Cの変曲点は18日で,東京都のものより3日遅れです。基本再生産数相当値は1.83で東京都と千葉県とほぼ同じ,環境収容力は約64,000名です。
[千葉県]
[埼玉県]
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