2020/11/11

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [11月11日]

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [11月11日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Tokyo [November 11th, 2020]

 
東京都が本日11月11日に発表した感染者数は293名で,8月21日以後の最大数となりました。第3波に突入したと言えます。

前回のブログ(10月25日)に記載した"東京都の感染指数プロファイルの解析"では,感染者数の減少の兆しがありました。本日の解析では,第3波に新たなロジステック関数を割り当ててプロファイルを最適化した結果を用い,最新日のものとしました。感染者数は10月25日には増加に転じており,先週からは拡大の傾向が明瞭となりました。

図1に,日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),本ブログの解析による日別の感染者数の計算値(日別calc),そして"再生産率"を挙げます。第2波の主要なピークの計算値は7月23日に記した"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"のプロファイルとほぼ同じです。
 
図1. 11月11日発表の東京都の確定日別データ(11月10日まで)に基づいています [図をクリックすると拡大]
 
図1の"再生産率"は"実効再生産数"に相当する値で,1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1よりも小さければ小さいほど収束に向かう傾向が大きくなります。

再生産率は,9月4日以降10月25日までは1.0+/-0.08の範囲にありました。その後は1よりも大きくなり,直近では1.25に近い値となっています。10月下旬の再生産率は,減少傾向の"第2+γ波"の影響によって,第3波本来の特質である基本再生産数(1.8と見積もりました)よりは小さくなっています。

第2波の主要なプロファイル(日別感染者数はD f1 calc),"第2+β波"(D f2 calc),"第2+γ波"(D f3 calc),さらに"第3波"のプロファイル(D f4 calc)も計算に含め,これらを合成した計算値(日別calc)を図1と図2に示しています。感染者数の累計値(累計obs')に計算値を最適化した結果(累計calc')は図2に示してあります(最新の累計感染者数で除して最大値が1となるように規格化した値です)。

図2. 東京都の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [クリックで拡大]

図2に東京都の感染者数プロファイルの詳細を示します。第3波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は,第2+γ波(主要な第2波とほぼ同じ基本再生産数の相当値です)に第3波を組み込んだものです。τ×平均は実質的な増加率であり,最適化で得られるτ×増加率を追随しています。第3波については,様子が明瞭となってから1週間程度なのでパラメータの確度はまだ低いままです。

第2波の主要なプロファイルの環境収容力(プロファイル全体の累計感染者数)は17,160ですが,第3波の環境収容力はこの値に近づいていますが,変曲点(ピーク)が来週以降と見積もられ,まだ見通すことはできていません。基本再生産数の相当値は1.8程度と見積もられ,主要な第2波の1.5よりもかなり大きな値です。第2波の7月16日頃のプロファイルの傾きと,現在の第3波の傾きを比べると,第3波の拡大がやや急であるようです。減少傾向の第2+γ波と重なっていることから,第3波の拡大は図の見かけの増加傾向よりも大きいことに注意です。

"第2波"と"第2+β波"は既に収束し,"第2+γ波"は収束に向かっており,第3波が多くを占めています(図2)。第3波の累計感染者数への寄与は既に2,600を越えており,変曲点がいつになるかでプロファイル全体の感染者数が決まりますが,早ければ来週半ば,遅ければ12月に食い込むかもしれません。遅ければ感染者数は第2波(主要)の2倍を超えてしまいます。実効再生産数(再生産率)よりもむしろ,いつピークが来るかに注目です。
 
図の見方は,以下,あるいは,COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご覧ください。

COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析 [11月11日]

COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析 [11月11日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Hokkaido [November 11th, 2020]

 
北海道のCOVID-19新型コロナウィルス感染症の感染者数について,本日11月11日発表までのデータを使用して,感染者数のプロファイルを解析しました。11月7日以降は大きな感染者数となり,急速に増大した第3波はまだまだ先を見通すことは困難です
 
北海道のデータについては,前回11月2日に"COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析"としてこのブログで記載しました。11月4日までは感染者数が最多を更新することはあっても,100名を越えることはありませんでした。しかし,8日には200名に達するなど,以後は大きな数が続いています。ロジステック関数でプロファイルを最適化する方法で今回の解析は前回と同様に行いました。

図1に7月1日から本日までの,日別の感染者数(日別obs),日別感染者数の7日間移動平均値(日別ave)を示します(7月以前のプロットについてはこれまでのブログをご覧ください)。累計calcは最適化によって得た累計値の計算値,日別calcは累計calcから算出した日別感染者数の計算値です。
 
9月上旬までの感染者数と解析したプロファイルについては,先の2つのブログの内容から大きな変更はありません。図1では,日別感染者数の計算値も第3波(先駆)として,9月中旬からのなだらかな幅広いプロファイル5をプロットしています。急峻に立ち上がっているプロファイル6が第3波(急峻)です。このプロファイル6はまだピークに達していないようで,得られたパラーメータの精度は詳細を記述するには充分ではありません。

第3波(先駆)のプロファイルは,環境収容力(得られたパラメータが継続するとしたときの全感染者数)は1,160名に達し,基本再生生産数の相当値は1.6,ピークは10月12日頃となりました。第3波(先駆)と第3波(急峻)のプロファイルは,本日までに2,770名の感染者数をカバーしており,4月の第1波の3倍を既に超えています。

第3波(急峻)の基本再生産数の相当値は2.1程度(1週間で倍増するペース)と大きい値が見積もられました。第3波(急峻)のピークの時期は未だ見越せないのですが,第3波全体としての環境収容力が7,000名に達すると,第1波の約8倍,第2波の約14倍と大きな数になります。これはピークが来週の初めにあるとしたときの見積もりで,ピークが後になるほどさらに大きな数となります。

1. 北海道の感染者数プロファイルの詳細と再生産率 [図のクリックで拡大]

Data source: 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報: 北海道オープンデータポータル https://www.harp.lg.jp/opendata/dataset/1369.html

図1には,再生産率をプロットしてあります。この再生産率は日別感染者数の計算値から求めたもので,詳細は"COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [10月11日]"(図の見方,説明などもこちら)をご覧ください 。再生産率は,1人の感染者が新たに引き起こす感染者の数,すなわち,実効再生産数に相当する値です。

図2の再生産率を見ると,その高いところの値は基本再生産数の相当値に対応して現れていますが,プロファイルが重なっているために鈍化して低めの値となっています。再生産率が1を越えると日別の感染者数が増えだし,1を切って小さくくなるところでピークを迎えて減少し始めます。COVID-19では,ある時点での感染者数に再生産率を乗じた数の感染者が,1週間後の新たな感染者数の目安となります。
 
第3波は,9月6日に再生産率が1を越え,11月3日に1.78に達し,本日は1.5とまだとても大きい値です(2週間で倍増のペース)。この1.5は,減少する第3波(先駆)と第3波(急峻)の和が寄与したもので,第3波(急峻)のみを見ると2.1から始まる大きな値です。
 
再生産率(実効再生産数)は感染の拡大・縮小の目安となる指標ですが,規模の大小を示すものではありません。感染のプロファイルではその幅(ピークまでの期間)と高さが規模を表し,これをまとめた指標が環境収容力です。このブログの解析では,累計の感染者数から,環境収容力,内的自然増加率(基本再生産数を与える)と変曲点(ピークの時刻)を算出しています。このパラメーター数3のの3倍の日数の感染者数のデータがあれば,パラメータの確度は良好となります。しかし,ピークを概ね1週間経過するまではロジステック関数の最適化の精度が充分ではないので,第3波(急峻)の推移にはご注意ください。 
 
2 北海道の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [図のクリックで拡大]
 
図2には,最適化解析の詳細として,各プロファイルの日別感染者数の計算値(第2波プロファイル4についてD f1 calc,第3波(前駆)プロファイル5についてD f2 calc,第3波(急峻)プロファイル6についてD f3 calc)などを示します。

図2での感染者数の累計値は,累計数の直近の値(最大値)で除して1となるように規格化して累計obs',最適化した累計値も同じ値で除して累計calc'としてプロットしてあります。この2つのプロットがよく重なっていれば最適化が良好であることを意味します。
 
第3波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は,第3波(先駆)に第3波(急峻)を組み込んだものです。値は,日別感染者数をプロファイルの累計感染者数で除したものに感染惹起期間τを乗じたもので,平均は感染者数の移動平均値(日別ave),増幅率は最適化から得た計算値(日別calc)を,それぞれ累計の計算値で除して算出しています。

τ×平均は実質的な増加率であり,最適化で得られるτ×増加率を追随しています。これは計算モデルが適切であること,モデルが実際を充分に追跡できていることを意味しています。図2の矢印は,直近の計算値の追随性について留意すべき箇所(赤い矢印)を指します。
 
図の見方などは,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"もご覧ください。

2020/11/02

COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析 [11月2日]

COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析 [11月2日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Hokkaido [November 2nd, 2020]

 
北海道のCOVID-19新型コロナウィルス感染症の感染者数について,本日11月2日発表までのデータを使用して,感染者数のプロファイルを解析しました。最新のプロファイルとして,第3波について,前回までのプロファイルを先駆部とし,急速に増大しつつある新たなプロファイルを急峻部として導入しました。
 
北海道のデータについては,10月18日に"COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析",10月25日にも"COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析"として,このブログで記載しました。感染者数が多い状況が続き,月曜日は報告される感染者数が通常は少ないのですが,本日は96名と最多を更新しました。ロジステック関数でプロファイルを最適化する方法で今回の解析も同様に行いました。

図1に4月20日から本日までの,日別の感染者数(日別obs),日別感染者数の7日間移動平均価(日別ave)を示します(2月10日からのプロットは10月18日をご覧ください)。累計calcは最適化によって得た累計値の計算値,日別calcは累計calcから算出した日別感染者数の計算値です。
 
9月上旬までの感染者数と解析したプロファイルについては,先の2つのブログの内容からの大きな変更はありません。図1では,日別感染者数の計算値も第3波(先駆)として,9月中旬からのなだらかな大きいプロファイル5をプロットしています。

感染者数は10月23日から大きく増えはじめ,とくに先週から本日までは感染者数がさらに増えました。第3波(先駆)のプロファイルのみでは感染者数の動向を表現しきれなくなったので,前回のブログで述べたように,新たに第3波(急峻)としてプロファイル6を導入しました。このプロファイル6はまだピークに達していないようで,得られたパラーメータの精度は詳細を記述するには充分ではありませんが,最近の3週間の感染者数をよく反映しています。

第3波(先駆)のプロファイルは,環境収容力(得られたパラメータが継続するとしたときの全感染者数)は890名,基本再生生産数の相当値は第2波と同じ値の1.7,ピークは10月7日頃と得られました。第3波(急峻)のプロファイルは,本日までに660名の感染者数をカバーしており,ピークは1週間程度先と算出されました。したがって,感染者数が多い状況が3週間程度は続くのではと,とても危惧されます。

第3波(急峻)の基本再生産数の相当値は2.1程度(1週間で倍増するペース)と大きい値が得られています。第3波全体としては,2つのプロファイルの和なので,ピークの時期と環境収容力はまだ精度が充分ではないのですが,和としての環境収容力は3,600名と算出され,第1波の約4倍,第2波の約7倍と大きな数です。これまでに報告された感染者数として,第3波に帰属される感染者数は約1,470名で,9月7日以降の感染者数に対応します。

1. 北海道の感染者数プロファイルの詳細と再生産率 [図のクリックで拡大]

Data source: 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報: 北海道オープンデータポータル https://www.harp.lg.jp/opendata/dataset/1369.html

図1には,再生産率をプロットしてあります。この再生産率は日別感染者数の計算値から求めたもので,詳細は"COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [10月11日]"(図の見方,説明などもこちら)をご覧ください 。再生産率は,1人の感染者が新たに引き起こす感染者の数,すなわち,実効再生産数に相当する値です。

図2の再生産率を見ると,その高いところの値は基本再生産数相当値に対応して現れていますが,プロファイルが重なっているために鈍化して低めの値となっています。再生産率が1を越えると日別の感染者数が増えだし,1を切って小さくくなるところでピークを迎えて減少し始めます。COVID-19では,ある時点での感染者数に再生産率を乗じた数の感染者が,1週間後の新たな感染者数の目安となります。
 
第3波は,9月6日に1を越え,10月28日に1.63に達し,本日は1.5とまだとても大きい値です(2週間で倍増のペース)。この1.5は,減少する第3波(先駆)と第3波(急峻)の和が寄与したもので,第3波(急峻)のみを見ると2.1から始まる大きな値です。なお,ピークを概ね1週間経過するまでは最適化の精度が充分ではないので,第3波(急峻)の推移にはご注意ください。
 
2 北海道の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [図のクリックで拡大]
 
図2には,最適化解析の詳細として,各プロファイルの日別感染者数の計算値(第2波プロファイル4についてD f1 calc,第3波(前駆)プロファイル5についてD f2 calc,第3波(急峻)プロファイル6についてD f3 calc)などを示します。

図2での感染者数の累計値は,累計数の直近の値(最大値)で除して1となるように規格化して累計obs',最適化した累計値も同じ値で除して累計calc'としてプロットしてあります。この2つのプロットがよく重なっていれば最適化が良好であることを意味します。
 
第3波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は,第3波(先駆)に第3波(急峻)を組み込んだものです。値は,日別感染者数をプロファイルの累計感染者数で除したものに感染惹起期間τを乗じたもので,平均は感染者数の移動平均値(日別ave),増幅率は最適化から得た計算値(日別calc)を,それぞれ累計の計算値で除して算出しています。

τ×平均は実質的な増加率であり,最適化で得られるτ×増加率を追随しています。これは計算モデルが適切であること,モデルが実際を充分に追跡できていることを意味しています。図2の矢印は,直近の計算値の追随性について留意すべき箇所(赤い矢印)を指します。
 
図の見方などは,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"もご覧ください。

2020/11/01

COVID-19 大阪府の感染者数プロファイルの解析 [11月1日]

COVID-19 大阪府の感染者数プロファイルの解析 [11月1日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Osaka Pref. [November 1st, 2020]

 
大阪府の新型コロナウイルス感染症COVID-19の感染者数(大阪府発表,11月1日現在)の増加が急峻なことから,感染者数プロファイルをロジスティック関数への最適化により解析しました。使用したデータは,大阪府が公表している「大阪モデル モニタリング指標の状況」からの感染者数です。
 
解析の手法と結果の見方などについては,9月11日の"東京都の感染者数プロファイルの解析"のブログをご覧ください。
 
図1に, 日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),累計の計算値から得られる日別の感染者数の計算値(日別calc)をプロットしました。第2波の主要なプロファイルの日別calc,そして全期間の"再生産数"も図に示してあります。
 
このブログでの大阪府のCOVID-19の第1波は,環境収容力(そのプロファイル全体の感染者数)は1,790名,ピーク(変曲点)は4月13日,基本再生産数の相当値(1人の感染者が引き起こす新たな感染者の最大数の目安)は1.94でした。第2波の主要プロファイルは,環境収容力は5,370名,ピークは8月4日,基本再生産数相当値は1.90で,既に収束状態にあります。第2波に重なるように第2+α波のプロファイルが現れ,環境収容力はおよそ4,000名,ピークは9月6日頃,基本再生産数相当値は1.47で,なだらかな減少傾向が続いています。なお,第2+α波のプロファイルは,主要な第2波と次のプロファイルの橋渡し的かつ連続的なもので,計算では変動し易くて確度の低いものです。
 
10月11日を過ぎた頃からかなり急峻に増加するプロファイル(第2+γ波)が現れ,まだ増加の傾向にあります。現時点ではまだプロファイルの解析精度は十分ではないのですが,基本再生産数相当値は1.7程度と大きく,概ね1,700名の感染者数が本日までに現れたことになります。ロジスティック関数は対称的なので,3,400名を超える環境収容力となります。なお,ピークを1週間以上は過ぎないと,感染者数などのパラメータの見積もりの精度は低いので,ご注意ください。
 
図1. 大阪府の感染者数と最適化による計算値 [図をクリックすると拡大]
 
Data source: 大阪府が公表している「大阪モデル モニタリング指標の状況」http://www.pref.osaka.lg.jp/iryo/osakakansensho/corona_model.html
 
図1の"再生産率"は"実効再生産数"に相当する値で,1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1ならばその状態が継続,1よりも小さければ小さいほど収束に向かう傾向が大きくなります。1を切る時点がピーク(変曲点)です。
 
第2波の再生産率は,拡大期では最大で1.78で,8月6日頃に1.0となって第2波は減少に転じました。その後,8月18日頃に0.68まで低下しましたが,以後は第2+α波が1に近い値で経過しました。10月7日頃には1を越えて日別の感染者数は増加に転じ,第2+γ波のプロファイルが顕著に優勢となりました。この再生産率は10月26日に1.42に達し,現在はピーク(再生産率は1)に向かって減少に転じたように見受けられますが,確定的ではありません。
 
累積の感染者数(累計obs)について最小二乗法により3つの関数プロファイルを最適化しました。図2は,各プロファイルからの日別感染者数の計算値(第2波の主要な分がD f1 calc,第2+α波がD f2 calc,第2+γ波がD f3 calc)と,これらを合成した計算値(日別calc)を示します。感染者数の累計値(累計obs')に計算値を最適化した結果(累計calc')は図2に示してあります(最新の累計感染者数で除して最大値が1となるように規格化した値です)。
 
図2. 大阪府の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [クリックで拡大]
 
第2波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は,第2+α波と第2+γ波を組み込んだものです。τ×平均は実質的な増加率であり,最適化で得られるτ×増加率をよく追随しています。
 
図の見方などについては,COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご覧ください。

2020/10/25

COVID-19 茨城県の感染者数プロファイルの解析 [10月25日]

COVID-19 茨城県の感染者数プロファイルの解析 [10月25日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Ibaraki Pref. [October 25th, 2020]


茨城県の新型コロナウイルス感染症の感染者数のプロファイルをロジスティック関数への最適化により解析しました。使用したデータは,茨城県が公表している「新型コロナウイルス感染症陽性者一覧」で,最新の10月25日までの累計感染者数です。
 
茨城県については9月22日のブログにて記載しています。今回は,9月11日の"東京都の感染者数プロファイルの解析"で述べた解析の改良を踏まえて,感染者数が比較的少ないケースでもある茨城県の感染者数のプロファイルの解析を更新しました。
 
図1に, 日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),累計の計算値から得られる日別の感染者数の計算値(日別calc)をプロットしました。第2波の主要なプロファイルの日別calcと"再生産数"も図に示してあります。なお,日別感染者数の目盛りは1人単位の離散的なものであることにご留意ください。
 
茨城県の場合は感染者数が少ないこともあり,小規模のクラスターの発生があると日別感染者数は目立って大きくなります。10月7日にピークがあるプロファイル(第2+γ)は,千葉県柏市のクラスターからの余波として茨城県に感染者が現れたケースが主に反映されています。このようなクラスターは,1日ないし2日程度の鋭い棒状のグラフとして現れます。
 
先述のプロファイルは, 基本再生産数の相当値(1人の感染者が引き起こす新たな感染者の数の目安)は2.2と大きく,環境収容力(そのプロファイル全体の感染者数)は120となっています。このプロファイルが出現したこともあって,第2波の収束は1月近く遅れましたが,再生産率が0となって,ほぼ収束といえる状態となりました。
 
図1. 茨城県の感染者数と最適化による計算値 [図をクリックすると拡大]
Data source: 茨城県が公表している「新型コロナウイルス感染症陽性者一覧https://www.pref.ibaraki.jp/1saigai/2019-ncov/ichiran.html
 
図1の"再生産率"は"実効再生産数"に相当する値で,1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1ならばその状態が継続,1よりも小さければ小さいほど収束に向かう傾向が大きくなります。1を切る時点がピーク(変曲点)です。

第2波の再生産率は,1.7で始まり,8月8日頃に1.0となって第2波は減少に転じました。その後,9月4日ころに1を越えた時期があり,9月18日からは1を越えて先述のプロファイルが優勢となりました。10月5日には1を切ってピークを迎え,以後は減少し続け,現在は0です。

累積の感染者数(累計obs)について最小二乗法により3つの関数プロファイルを最適化しました。図2は,各プロファイルからの日別感染者数の計算値(第2波の主要な分がD f1 calc,第2+β波がD f2 calc,第2+γ波がD f3 calc)と,これらを合成した計算値(日別calc)を示します。感染者数の累計値(累計obs')に計算値を最適化した結果(累計calc')は図2に示してあります(最新の累計感染者数で除して最大値が1となるように規格化した値です)。
 
図2. 茨城県の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [クリックで拡大]
 
第2波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は,第2+β波と第2+γ波を組み込んだものです。τ×平均は実質的な増加率であり,最適化で得られるτ×増加率を追随しています。

図の見方などについては,COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご覧ください。

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [10月25日]

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [10月25日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Tokyo [October 25th, 2020]

 
東京都が本日10月25日に発表した感染者数は124名で,ここ2週間を取り込んだ解析では,減少の兆しが表れているように見えます。

前回のブログ(9月11日)に記載した"東京都の感染指数プロファイルの解析"で指摘した傾向が続いています。第2波を3つロジステック関数を用いてプロファイルを解析し,最新日のものとしました。

図1に,日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),本ブログの解析による日別の感染者数の計算値(日別calc),そして"再生産率"を挙げます。第2波の主要なピークの計算値は7月23日に記した"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"のプロファイルとほぼ同じです。
 
図1. 10月25日発表の東京都の確定日別データ(10月24日まで)に基づいています [図をクリックすると拡大]

図1の"再生産率"は"実効再生産数"に相当する値で,1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1よりも小さければ小さいほど収束に向かう傾向が大きくなります。

再生産率は,9月4日頃に1.0を超えて(感染者数では底)増え,以降は1.0+/-0.08の範囲にありましたが。直近では0.80になりました。図1の"日別ave"と図2の"τ×平均"を見ると,計算値が実際を追随しているように見受けられます。この1月間余り続いた1近い値からようやく減少し始めたようです。

第2波の主要なプロファイル(日別感染者数はD f1 calc),"第2+β波"のプロファイル(D f2 calc)に"第2+γ波"のプロファイル(D f3 calc)も計算に含め,これらを合成した計算値(日別calc)を図1と図2に示しています。感染者数の累計値(累計obs')に計算値を最適化した結果(累計calc')は図2に示してあります(最新の累計感染者数で除して最大値が1となるように規格化した値です)。

図2. 東京都の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [クリックで拡大]
 
図2に東京都の感染者数プロファイルの詳細を示します。第2波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は,第2+β波と第2+γ波を組み込んだものです。τ×平均は実質的な増加率であり,最適化で得られるτ×増加率を追随しています。ただ,10月に入っての先週の変化はまだ追随しきれていない,あるいは,変化が過度的なものかもしれません。
 
第1波の環境収容力(プロファイル全体の累計感染者数)は5,090,主要な第2波の環境収容力は16,930,"第2+β波"の環境収容力は1,800となりました。"第2+γ波"の変曲点(ピーク)は10月12日,環境収容力は8,980,基本再生産数相当値は1.5で主要な第2波とほぼ同じです。

"第2波"と"第2+β波"は既に収束し,現在は"第2+γ波"が大部分を占めています(図2)。"第2+β波"と"第2+γ波"はこれまでに8,080の累計感染者を生じ,既に第1波をはるかに凌いでいます。この2つのプロファイルを合わせると,10,800の累計感染者数が見込まれ,第1波の2倍を超える大きな数です。"第2+γ波"を第3波と呼んだほうが適切かもしれません。

図の見方は,以下,あるいは,COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご覧ください。

グラフの見方


感染確定日データの日別の感染者数の累計が,"累計obs"です。ただし,最新の値で割って,最大値が1となるようにした"累計obs'"をグラフにプロットしています。

累計obsに合致するようにロジスティック関数を最適化し,最適化した関数による計算値が"累計calc"です。この値を最新の累計obsで割った"累計obs'"と"累計calc'"をプロットしています。最新の"累計obs'"は1です。

"日別obs"は,日別の感染者数です。最適化した関数から計算される日別の感染者数が"日別calc"です。

最適化した関数から計算される内的自然増加率 r から計算される実効再生産数が,"τ×増加率"です。ここでの τ (tau) は,感染者が感染させてしまう平均日数で,値は7を採用しています。初期の頃の"τ×増加率"に1を加えた数が基本再生産数に対応すると考えられ,東京都の第1波では2,第2波では1.55程度です。

日別の感染者数から見積もることができる"τ×増加率"に相当する値について,素のデータが曜日ごとのばらつきが大きいため,7日間の移動平均をとった値が"τ×平均"です。第1波について"τ×平均1",第2波について"τ×平均2"としています。最新の3日間では7日間移動平均が適用できませんが,動向を把握するために,最新日は実際の値そのもの,前日では3日間の,前々日では5日間の移動平均を採用しています。そのため,最新日と前日の値の変動の幅は大きくなっています。

これら"τ×平均"は関数モデルが妥当ならば,"τ×増加率"に次第に合致するはずです。"τ×平均1"は第1波の"τ×増加率"によく沿っていて,"τ×平均2"は変化しながらも第2波の"τ×増加率"に追随しています。

"累計calc'""日別calc""τ×増加率"は日付を指定すれば計算できるので,数日後の値もプロットしています。

日別感染者数がピークに達するとき,"日別calc""τ×増加率"は変曲点に来ます。変曲点に来ると"τ×増加率"が初めのころの値の1/2となります。"τ×増加率""τ×平均"が次第に小さくなって,半分となる時期が感染のピークです。このときの累計感染者数を2倍すると,最大値になります。

"日別calc"はピークを挟んでグラフでは左右対称となります(偶関数です)。ピークの前と後では日別感染者数,および,その累計値(こちらは奇関数)はほとんど同じ値になります。


COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析 [10月25日]

COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析 [10月25日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Hokkaido [October 25th, 2020]

 
北海道のCOVID-19新型コロナウィルス感染症の感染者数について,本日10月25日発表までのデータを使用して,感染者数のプロファイルを解析しました。
 
北海道のデータについては,10月18日に"COVID-19 北海道の感染者数プロファイルの解析"として,前回のブログに記載しました。その後も感染者数が多い状況が続き,24日には60名と最多を更新しました。ロジステック関数で最適化する方法で今回の解析も同様に行いました。

図1に4月20日から本日までの,日別の感染者数(日別obs),日別感染者数の7日間移動平均価(日別ave)を示します(2月10日からのプロットは前回をご覧ください)。累計calcは最適化によって得た累計値の計算値,日別calcは累計calcから算出した日別感染者数の計算値です。
 
ピークが4月24日にあるプロファイル2は,全感染者数が860名,基本再生産数相当値が2.1で,こちらが全国的に第1波と呼ばれるものに相当します(こちらを第2波と呼ぶことがあります)。このピークは東京都のピークから約10日遅れています。

ピークが8月9日のプロファイル4は,全国的には感染者数が多かった第2波に相当し,本日の解析では全感染者数450名で基本再生産数相当値1.7となり,やはり東京都よりは10日近い遅れです。図1では日別感染者数の計算値も第2波(主要)としてプロットしてあります。
 
9月中旬からのなだらかな大きいプロファイル5をここでは第3波と呼びます。10月23日,24日と過去最多の感染者数が更新され,本日の解析では,このプロファイルが継続するとしたときの全感染者数は2,190名,基本再生生産数相当値は1.5,ピークは10月27日頃となりました。前回の解析では全感染者数1,270名,基本再生生産数相当値1.6,ピークは10月14日頃と見積もられていました。

第3波のピークの日時は,多かった先週の感染者数が影響して2週間近く遅くなり,想定される全感染者数が920名にも増えるという結果が得られました。なだらかなピークプロファイル(基本再生産数が小さい)がさらに広がって,全感染者数は第1波の2.5倍が見込まれます。

1. 北海道の感染者数プロファイルの詳細と再生産率 [図のクリックで拡大]
Data source: 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報: 北海道オープンデータポータル https://www.harp.lg.jp/opendata/dataset/1369.html

図1には,再生産率をプロットしてあります。この再生産率は日別感染者数の計算値から求めたもので,詳細は"COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [10月11日]"(
図の見方,説明などもこちら)をご覧ください 。再生産率は,1人の感染者が新たに引き起こす感染者の数,すなわち,実効再生産数に相当する値です。

図2の再生産率を見ると,その高いところの値は基本再生産数相当値に対応して現れていますが,プロファイルが重なっているために鈍化して低めの値となっています。再生産率が1を越えると日別の感染者数が増えだし,1を切って小さくくなるところでピークを迎えて減少し始めます。
 
第1波は,2を越える大きな再生産率でしたが,ピークを過ぎると速やかに減少して順調に下がり,0.22まで低下しました。しかし,収束に至る0近くまでは低下せず,その後は上昇し始め,以後は1を挟んで上昇・下降を繰り返しました。第3波のプロファイル5では,現在は1に近い状態にあります。ピークを概ね1週間経過するまでは最適化の精度が充分ではないので,ご注意ください。

図2には,最適化解析の詳細として,各プロファイルの日別感染者数の計算値(プロファイル3についてD f1 calc,プロファイル4についてD f2 calc,プロファイル5についてD f3 calc)などを示します。
2 北海道の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [図のクリックで拡大]

図2での感染者数の累計値は,累計数の直近の値(最大値)で除して1となるように規格化して累計obs',最適化した累計値も同じ値で除して累計calc'としてプロットしてあります。この2つのプロットがよく重なっていれば最適化が良好であることを意味します。
 
第2波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は,第2波と第3波を組み込んだものです。値は,日別感染者数をプロファイルの累計感染者数で除したものに感染惹起期間τを乗じたもので,平均は感染者数の移動平均値(日別ave),増幅率は最適化から得た計算値(日別calc)を,それぞれ累計の計算値で除して算出しています。

τ×平均は実質的な増加率であり,最適化で得られるτ×増加率を追随しています。これは計算モデルが適切であること,モデルが実際を充分に追跡できていることを意味しています。よく見ると,7月下旬の連休で報告される感染者数の減少を反映してτ×増加率を下回り,その直後は報告数の増加を反映して上回るといった具合に,感染者数の変化も表現しています。このような現象は,8月の連休,そして9月の連休でも表れています。
 
図2の矢印は,直近の計算値の追随性について留意すべき箇所(赤い矢印)を指します。報告される感染者数が現在のプロファイルを大きく越えている(青い矢印)ことから,これが過度的なのか,あるいは,第6のプロファイルが重なって表れてくる可能性を示唆するのか,今後の経過にいっそう注意すべきです。
 
図の見方などは,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"もご覧ください。