COVID-19 茨城県の感染者数プロファイルの解析 [2021年1月14日; 18日; 21日更新]
Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Ibaraki Pref. [Jan. 14th, 2021; Updated Jan. 18th then 21th]
茨城県の新型コロナウイルス感染症の感染者数のプロファイルをロジスティック関数への最適化により解析しました。使用したデータは,茨城県が公表している「新型コロナウイルス感染症陽性者一覧」で,本日2021年1月14日までの最新の累計感染者数です。減少していた第3波の感染者数は,12月半ばから再び増え始め,このプロファイルCはかつてない規模で大きく増え続けています。
茨城県については,前回のブログ"COVID-19 茨城県の感染者数プロファイルの解析 [11月27日]"にて採り上げた際に,増加に転ずる兆候があったことから,12月28日,1月1日,1月8日と更新しながら経過をブログに追加してきました。これら追加更新では,これまでの第3波のプロファイルAとBに加えて,プロファイルCを加えて解析を行い,関東4都県で顕著な12月以降の増加傾向と対応する兆候と見て,感染の経過を考察してきました。
1月8日には127名もの感染者数が報道されました。12月中旬までは,大きな感染者数はクラスターに由来する突出した単発の数で,多くは県南部で発生したものでした。それ以降の感染は県内ほぼ全域に広がった,"市中感染"の傾向を示してきたようです。年末と年初には感染者数の減少がありましたが,1月5日からはこれまでにはない数の感染者数の増大となりました。1月5-12日の感染者数は年末年初の減少分を相殺する数を多く含んでおりましたが,これらを考慮しても増加の傾向がほぼ一定の増加率の拡大傾向を示しました。第3波としては3つのプロファイルを採るものとする,前回と同じ方法で感染者数のプロファイルを解析しました。
1月21日更新: 21日までの日別感染者数で計算すると,収束の傾向が明瞭となりました(図0-2)。水曜日と木曜日の感染者数は,少し多くなっていますが,少なめに報告される月曜日と火曜日の数を補っても,計算値よりも少なくなっています。その結果,第3波プロファイルCの変曲点がさらに早まって14日となりました。変曲点を過ぎて7日となっていることから,解析のパラメータは次第に確かなものとなってきました。
環境収容力は約2,770名まで小さくなり,基本再生産数の相当値は2.0まで増えました。これらパラメータの変化は収束傾向が確実さを増したことを示しています。実際に感染が最大となったのは6日ないし7日と考えられ,年初の大きな感染者数が現われ始めた頃です。これは年初には人々が感染に対処し,防ごうとする姿勢を強めたことを物語っています。
関東の他県は未だ明瞭な収束の傾向を見出すことができない状態ですが,東京都は既に10日頃に変曲点を過ぎています。感染最大の日から既に2週間近いこと,基本再生産数の相当値がやや大きいことから,新たなクラスターやプロファイルが出現しなければ,プロファイルCに沿って感染者数は減少するでしょう。更新はここまでです。
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1月18日更新: 先週の15日には159名のこれまでで最大の感染者数が報道されました。それでも,18日までの感染者数で計算すると,収束の傾向が見られます(図0-1)。月曜日の報道される感染者数は少ないこと,第3波プロファイルCはまだ変曲点を過ぎていないことから,以下の解析のパラメータは暫定的です。
環境収容力は約4,240名まで小さくなりました。基本再生産数の相当値は1.76と大きくなり,変曲点は1月19日頃へと早まりました。年初の大きな感染者数を目の当たりにして,人々が感染に対処し,防ごうとする姿勢が強くなったのでしょうか。更新はここまでです。
図0-1. 茨城県の感染者数と最適化による計算値: 1月18日結果 [図をクリックすると拡大] |
図1に,日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),累計の計算値から得られる日別の感染者数の計算値(日別calc)をプロットしました。クラスターの発生に起因する日別obsの大きなばらつきが,日別aveでは滑らかになっています。1日ないし2日の鋭く棒状に増えている日別感染者数は典型的なクラスターの発生を示唆します。なお,7月26日以前のグラフについては前回のブログをご覧ください。
図1. 茨城県の感染者数と最適化による計算値: 1月14日結果 [図をクリックすると拡大] |
Data source: 茨城県が公表している「新型コロナウイルス感染症陽性者一覧」https://www.pref.ibaraki.jp/1saigai/2019-ncov/ichiran.html
図の"再生産率"は,実効再生産数に相当する指標で,再生産率が1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1ならばその状態が継続,1よりも小さければ小さいほど収束に向かう傾向が大きくなります。1を切る時点がピークです。また,(再生産率)×(日別感染者数)がほぼ1週間後の感染者数となります。
第1波のプロファイルの環境収容力(そのプロファイル全体の感染者数)は約170名,基本再生産数の相当値(感染の初期において1人の感染者が引き起こす新たな感染者の数の目安)は2.2,変曲点(日別感染者数のピークの日時)は4月8日でした。第2波の主要なプロファイルは,環境収容力が約410名,基本再生産数相当値が1.7,変曲点が8月8日でした。
第3波のプロファイルAは,環境収容力は約530名,基本再生産数の相当値は2.5,変曲点は11月18日へと更新されました。プロファイルBは,環境収容力は約640名,基本再生産数相当値は2.4,変曲点は12月1日となりました。AとBを合計した環境収容力は約1,170名で,第2波(主要)の3倍近い規模です。Bは11月28日頃から減少に向かい,12月28日頃には感染者数への寄与はゼロとなりました。これに代わって,プロファイルCが大きく現われ,現在はすべてがCの寄与です。
第3波プロファイルCは,まだまだ増加の傾向にあり,以下の解析のパラメータは暫定的です。環境収容力は約8,300名,基本再生産数の相当値は1.61,変曲点は1月31日です。変曲点で,日別の感染者数が最大の180名越えとなり,累計の感染者数は環境収容力の半分の約4,150名です。これらパラメータの確度はピークを越えないと確度は低い(ほぼ単一のプロファイルとなったので最適化の精度はAとBよりは良です)のですが,このCは極めて規模の大きなものです。Cは,11月中頃から現われ,12月中旬に顕在化し,1月末頃に最大となります。その後の経過は,出現の経過を逆に辿るので,収束へ向かう人為的な強い効果が出ないと,3月末まで大きな感染者数を惹起してしまいます。
第3波Cのうち,これまで出現した数はまだ2,160名なので,今後に見込まれる感染者数は4,140名となります。これら感染者数,重症化する割合と"致死率"(概ね0.5%)を数に乗ずると,今後の医療への負担を概算できます。状況は深刻です。
第3波は,再生産率が10月17日頃から急に大きくなりはじめ,20日頃には1を越えました。増加のペースは速く,11月7日頃には2.15の最大値を示しました。この値は,プロファイルAと,ほぼ同時進行したプロファイルBの寄与の分を反映しています。その後は減少に転じ,11月24日頃には1を切りました。この頃に日別感染者数はいったんピークとなりました。
第3波AとBが成すピークを越えてからはプロファイルBの寄与が大きくなり,再生産率が0.45までも低下した後,また増え始めました。この増加はプロファイルCがもたらしたものです。12月17日頃に再生産率は1を越え,12月30日頃に1.52に達してから緩やかな減少に入りました。1月14日現在でも1.40の大きな値を示しています。感染の拡大は再生産率が1を越えた状態なので,拡大の期間が12月中旬からは1.5月間以上も続くことになりそうです。
図の見方などについては,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご覧ください。