2021/03/03

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [2021年3月3日]

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [2021年3月3日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Tokyo [March 3rd, 2021]

 
東京都が本日2021年3月3日に報道発表した感染者数は316名でした。1月24日以降は減少のペースが緩やかになっています。感染者数のプロファイルの解析を本日の確定日データで更新しました。
 
前回のブログ(2月14日更新)の"東京都の感染者数プロファイルの解析"では,第3波を3つのプロファイルA,BとCで表しました。本日の解析では,Bには前回解析から変化がほとんど無く,Cは変曲点(日別感染者数のピーク)が遅くなり,幅も広がりました。第3波についての環境収容力(全期間の感染者数)の合計は約85,800名となり,前回よりも約6,700名増えました。以下の日付は確定日ベースで,報道発表データよりは概ね1日早くなります(1日差し引く)。なお,実効再生産数は感染が生じた日が基準なので,"再生産率"を実効再生産数に対応させる際は日付から7日を差し引いてグラフをご覧ください。
 
図1は,日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),本ブログの解析による日別の感染者数の計算値(日別calc),そして"再生産率"を挙げます。"第3波"としてはプロファイルA,BとCの和として日別の感染者数の計算値をプロットしてあります。黒い破線の"第3波B1/23"は,1月23日時点での解析での第3波Bの計算値で,緊急事態宣言の効果がまだ表れていないはずのものです。
 
"再生産率"は"実効再生産数"に相当する値で,1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1でピーク,1よりも小さければ小さいほど収束に向かう傾向が大きくなります。再生産率は,日別の感染者数のピークにあたる変曲点の1月10日に1を切ってからは1を下回っていますが,2月14日には0.83まで上昇しました。その後は緩やかな減少に転じ,現在は0.67となっています。再生産率が0.7近辺にあることから,日別感染者数の減少は1週間で約3割減(2週間で半減)の緩やかなペースです。
 
第3波はプロファイルBが卓越しています。なお,年初の日別感染者数の計算値からマイナス分はその後のプラス分でほぼすべてが相殺されています。基本再生産数相当値(R0)が1.9,環境収容力(全期間の感染者数)が約49,100名,変曲点が1月9日で,前回の結果とほぼ同じです。したがって,1月23日の解析結果(第3波B1/23)ともほぼ同じです。したがって緊急事態宣言はBには影響を与えなかったと考えられます。
 
1月24日頃から日別感染者数の減少のペースが鈍化しました。これは,減少するプロファイルBに増加するCが重なったためで,2月4日にはCがBを上回り,現在はBはほぼ終息となりました。プロファイルCはR0が前回解析の2.3から1.6まで低下し,プロファイルの幅が広がり増減が緩やかになりました。環境収容力は約5,200名から約14,000名に,変曲点は2月6日から14日へと遅くなりました。このようにパラメータの値が収束しにくい状態は,ミクロには小さなプロファイルが連続して起き,感染が継続的であることを意味します。マクロなプロファイルとしてのCはミクロの和(線形変換)なので,適宜の更新を行えば,現象を充分に記述する力はあり,過去のデータを如実に表現できています
 
緊急事態宣言が寄与してくる1月24日以降にCが明確に現われ,減少のペースが鈍化したように,感染者数だけを見れば思われがちです。実際には,緊急事態宣言が無い場合の東京都のデータが存在しないので,比較は本来できないものです。ただ,緊急事態宣言が発出されなかった茨城県の場合は,Bに対応するプロファイルは幅広になっている(基本再生産数相当値が小さくなる)こと,Cに対応するプロファイルがBに比べて大きめであることから,茨城県(北海道もほぼ同じ傾向)と比較すると,緊急事態宣言の効果が東京都の場合は小さいながらもあったと言えそうです。それでも,2月中旬以降のプロファイルCの挙動を見ると,パラメータが変化し続けており,この傾向が続くと,現象のペースがさらに鈍化し,あるいは新たなプロファイルが出現して増加に転ずるかもしれません。
 
メモ: 感染者数がこのように増加に転ずることを"rebound"と呼んでいる方もおられますが,変な用法です。rebound は improve(改善) の意味合いがあり,resurgeの使用がふさわしいでしょう。たとえば,While COVID-19 cases resurge again, stock prices rebound.

1. 東京都が3月3日発表の確定日別データ(3月2日まで)に基づく [図をクリックすると拡大]

図2に東京都の感染者数プロファイルの詳細を示します。第3波に先行するプロファイル(日別感染者数はD f2' calc),第3波のプロファイルA(D f3A calc),プロファイルB(D f3B calc),プロファイルC(D f3C calc)とこれまでのすべてを合成した計算値(日別calc)を示しています。感染者数の累計値(累計obs')に計算値を最適化した結果(累計calc')も図2に示してあります(最新の累計感染者数で除して最大値が1となるように規格化した値です)。

図2. 東京都の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [クリックで拡大]

第3波の3つの近接・連続するプロファイルのパラメータは,一連の累計感染者数データから求めた便宜的なもので,和としてのプロファイルの方が意味のあるものです。第3波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は第3波BにCの寄与を繰り込んだものです。この2つの指標が合致していれば,データへのプロファイルの最適化が良好であることを意味します。ここ数日の
"τ×平均"が高くなっているのが気になります。あらたなプロファイルの始まりでしょうか?

図の見方は,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご参考ください。

2021/02/14

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [2021年2月14日]

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [2021年2月14日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Tokyo [Feb. 14th, 2021]

 
東京都が本日2021年2月14日に報道発表した感染者数は371名でした。感染の診断が確定された日の"確定日"ベースでは,感染者数は漸次に修正・更新されていきますが,1月6日の2,549名が現時点での日別の最大数で,1月26日の1,075名の後は1千名を越える日は無く,減少の傾向が続いています。しかしながら,1月24日以降は減少のペースが緩やかになり,これまでの解析プロファイルとの一致が低下しました。そこで,第3波に新たなプロファイルCを導入し,感染者数のプロファイルの解析を本日の確定日データで更新しました。
 
前回のブログ(2月7日更新)の"東京都の感染者数プロファイルの解析"までは,第3波を2つのプロファイルAとBで表していました。新たなプロファイルCを導入した第3波についての環境収容力(全期間の感染者数)の合計は約79,100名となり,前回よりも約3,000名増えました。以下の日付は確定日ベースで,報道発表データよりは概ね1日早くなります(1日差し引く)。なお,実効再生産数は感染が生じた日が基準なので,"再生産率"を実効再生産数に対応させる際は日付から7日を差し引いてグラフをご覧ください。
 
図1は,日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),本ブログの解析による日別の感染者数の計算値(日別calc),そして"再生産率"を挙げます。"第3波"としてはプロファイルA,BとCの和として日別の感染者数の計算値をプロットしてあります。黒い破線の"第3波B1/23"は,1月23日時点での第3波Bの計算値です。
 
"再生産率"は"実効再生産数"に相当する値で,1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1でピーク,1よりも小さければ小さいほど収束に向かう傾向が大きくなります。再生産率は,日別の感染者数のピークにあたる変曲点の1月10日に1を切ってからは1を下回っていますが,2月4日前後には0.74まで上昇しました。その後はまた減少に戻って,現在は0.40の低い値になっています。
 
第3波のプロファイルAは,基本再生産数相当値(R0)が1.5,環境収容力(全期間の感染者数)が約24,560名,変曲点が11月30日となりましたプロファイルBは,R0が1.9,環境収容力は約49,370名,変曲点は1月10日です。プロファイルCは,R0が2.3,環境収容力は約5,200名,変曲点は2月6日です。前回のBの環境収容力は約57,200名でしたが,今回との差は主にAに割り振られ,Cにも増加分とし約3,000名が含まれています。 なお,Cが日別感染者数として最初に出現するのは1月1日以降です。
 
第3波B1/23は,R0が1.9,環境収容力は約47,840名,変曲点は1月10日なので,ほとんど1月24日からプロファイルBには変化はありません。緊急事態宣言はBには影響を及ぼしてはいないと言えます。緊急事態宣言が寄与してくる1月24日以降にCが明確に現われ,減少のペースが鈍化したように,感染者数だけを見れば思われがちです。実際には,緊急事態宣言が無い場合の東京都のデータが存在しないので,比較は本来できないものです。ただ,緊急事態宣言が発出されなかった茨城県の場合は,Bに対応するプロファイルは幅広になっている(基本再生産数相当値が小さくなる)こと,Cに対応するプロファイルがBに比べて大きめであることから,茨城県(北海道もほぼ同じ傾向)と比較すると,緊急事態宣言の効果が東京都の場合は小さいながらも確実にあったと言えそうです。
 
1. 東京都が2月14日発表の確定日別データ(2月13日まで)に基づく [図をクリックすると拡大]

図2に東京都の感染者数プロファイルの詳細を示します。第3波に先行するプロファイル(日別感染者数はD f2' calc),第3波のプロファイルA(D f3A calc),プロファイルB(D f3B calc),プロファイルC(D f3C calc)とこれまでのすべてを合成した計算値(日別calc)を示しています。感染者数の累計値(累計obs')に計算値を最適化した結果(累計calc')も図2に示してあります(最新の累計感染者数で除して最大値が1となるように規格化した値です)。

図2. 東京都の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [クリックで拡大]
 
第3波の3つの近接・連続するプロファイルのパラメータは,一連の累計感染者数データから求めた便宜的なもので,和としてのプロファイルの方が意味のあるものです。第3波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は第3波BにCの寄与を繰り込んだものです。この2つの指標が合致していれば,データへのプロファイルの最適化が良好であることを意味します。

図の見方は,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご参考ください。

2021/02/13

COVID-19 茨城県の感染者数プロファイルの解析 [2021年2月13日]

COVID-19 茨城県の感染者数プロファイルの解析 [2021年2月13日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Ibaraki Pref. [Feb. 13th, 2021]

茨城県の新型コロナウイルス感染症の感染者数のプロファイルをロジスティック関数への最適化により解析しました。使用したデータは,茨城県が公表している「新型コロナウイルス感染症陽性者一覧」で,本日2021年2月13日までの最新の累計感染者数です。

茨城県については,前回のブログ"COVID-19 茨城県の感染者数プロファイルの解析 [1月30日]"では,第3波としては3つのプロファイルで表していました。12月半ばから増加していた第3波のプロファイルCは,1月14日にピークに達した後に順調に減少を続けていましたが,1月24日頃からは減少のペースが遅くなりました。そこで,新たなプロファイルDを導入し,これまでと同じ方法で感染者数のプロファイルを解析しました,その結果,感染者数の経過をより詳細に表すことができました。 

図1に,日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),累計の計算値から得られる日別の感染者数の計算値(日別calc)をプロットしました。なお,9月26日以前のグラフについては過去のブログをご覧ください。第3波AからDは,第3波の個別のプロファイルによる日別の計算値です。黒い破線の"第3波C1/23”は,1月23日の解析で得られた第3波Cのプロファイルで,本日の結果による"第3波C"との比較のために載せました。

図1. 茨城県の感染者数と最適化による計算値: 2月13日結果 [図をクリックすると拡大]

Data source: 茨城県が公表している「新型コロナウイルス感染症陽性者一覧」https://www.pref.ibaraki.jp/1saigai/2019-ncov/ichiran.html

図の"再生産率"は,実効再生産数に相当する指標で,ある日の日別calcの傾き(微分係数)から7日後の感染者数を計算し,ある日の感染者数で除しています。再生産率が1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1ならばその状態が継続,1よりも小さければ小さいほど収束に向かう傾向が大きくなります。1を切る時点がピークです。

第3波はプロファイルA,B,CとDで表されています。これらの環境収容力の和は約4,690名(前回のブログでは約4,320名)で,今後の感染者も含めた第3波全体の累計感染者数です。プロファイルAとBは既に終息しており,現在はCとDが主体です。Cの環境収容力は約3,000名で,前回の約3,020名とほぼ同じです。基本再生産数の相当値は1.90,変曲点(ピーク)は1月14日で,Dの導入によって,1月23日の解析とほとんど同じプロファイルに収束しました。このことは,解析の確度が極めて高いことを証明しています。

プロファイルDは,環境収容力が約410名,基本再生産数の相当値が2.90,変曲点が2月6日で,減少を続けているCに乗っていて,しかも変曲点からの経過日数が短いため,まだ確度は低いと思われます。なお,現在の再生産率が0となっているのは,CとDが合わさった感染者数の減少のペースが大きいためで,プロファイルの将来の計算値から再生産率を算出する方式では0.3程度になります。

第3波は,1月24日頃から減少のペースが遅くなり,2月1日頃には再生産率が1に近くなって減少にいったんブレーキがかかりました。その後は,Dが変曲点を越えたので,減少のペースが急に大きくなりました。Dの基本再生産数相当値が大きいのでその減少も急で,2月下旬にはほとんど寄与しなくなり,Cのペースでの減少ペースの多くを占めます。Dは,1月17日頃に発生し,これまでのA,BとCのプロファイルとは異なるものです。感染者数プロファイルをこのブログの方法で解析することには,新たな感染プロファイルの発生を感知できるという大きなメリットもあります。

図2. 茨城県の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [クリックで拡大]
 
図2は,各プロファイルからの日別感染者数の計算値(第3波のAがD f3A calc,BがD f3B calc,CがD f3C calc,DがD f3D calc)と,これらを合成した計算値(日別calc)を示します。感染者数の累計値(累計obs')に計算値を最適化した結果(累計calc')は図2に示してあります(最新の累計感染者数で除して最大値が1.2となるように規格化した値です)。
 
第3波CにDを繰り込んだ"τ×平均"と"τ×増加率"の指標を図2に示しています。τ×平均は実質的な増加率であり,最適化の計算で得られるτ×増加率が上下に振れながら,τ×平均を追随しています。

図の見方などについては,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご覧ください。

2021/02/07

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [2021年2月7日]

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [2021年2月7日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Tokyo [Feb. 7th, 2021]

 
東京都が本日2021年2月7日に報道発表した感染者数は429名でした。累計の感染者数は2月1日に10万名を越え,本日は103,845名となりました。感染者数は,最大数が1月7日の2,447名で,29日以降は1,000名未満となり,確実に減少しています。感染の診断が確定された日の"確定日"ベースでは,感染者数は漸次に修正・更新されていきますが,6日の2,548名が現時点での最大数です。1千名以上となった最後は1月26日でした。感染者数のプロファイルの解析を本日の確定日データで更新し,以下に述べます。
 
第3波についての環境収容力(プロファイルの全期間の感染者数)の合計は約76,000名となり,東京都の感染者数では,第3波が3/4を占めるに至りました。致死率は低下傾向にありましたが,1月22日頃の0.84の最小値を底に,0.98まで上昇しました。また,感染の様式が,施設などからのクラスター感染(Clusters of cases)から,感染経路が特定できないケースが増えた市中感染(Community transmission)に変化したことが,自治体別の感染者数からも示唆されます(後述)。

前回のブログ(1月30日更新)の"東京都の感染者数プロファイルの解析"では,第3波の2つのプロファイルAとBのうち,後の方のプロファイルBが第3波の大部分を占め,変曲点(日別の感染者のピーク)は1月10日で,速やかな減少を続けていること,しかし,僅かに幅が広くなってきたこと指摘しました。本日までのデータでは,幅が広がる,すなわち減少のペースが低下する傾向がより強まっています。
 
確定日ベースの感染者数を用いて,これまでと同じ方法によってロジスティック関数の最適化を行ない,感染者数のプロファイルを解析しました。なお,以下の日付は確定日ベースで,報道発表データよりは概ね1日早くなります(1日差し引く)。なお,実効再生産数は感染が生じた日が基準なので,"再生産率"を対応させる際は日付を7日程度差し引いてグラフをご覧ください。
 
図1は,日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),本ブログの解析による日別の感染者数の計算値(日別calc),そして"再生産率"を挙げます。"第3波"としてはプロファイルAとBの和として日別の感染者数の計算値をプロットしてあります。黒い破線の"第3波1/23"は,1月24日時点の解析による第3波の計算値です。
 
"再生産率"は"実効再生産数"に相当する値で,1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1でピーク,1よりも小さければ小さいほど収束に向かう傾向が大きくなります。再生産率は,日別の感染者数のピークにあたる変曲点の1月10日に1を切ってから順調に低下し続け,現在は0.31まで低下しています。
 
第3波のプロファイルAは,基本再生産数相当値(R0)が1.6,環境収容力(全期間の感染者数)が約19,400名,変曲点が11月26日となりましたプロファイルBは,R0が1.76,環境収容力は約57,200名,変曲点は1月10日です。です。前回のブログよりも基本再生産数相当値が小さくなりました (時間・空間的に広がった)。
 
本日の第3波プロファイルは,1月24日頃からは"第3波1/23"よりも広がり,減少のペースが緩やかになっています。AとBの環境収容力の和は76,550名となり,第3波1/23の和の73,130名よりも,3,420名だけ増えました。現在の和のうち,本日までに感染者数として出現したのは73,630名で,今後も現在のプロファイルが継続した場合に見込まれる感染者数は2,920名となります。なお,これまでの解析の実績からは,変曲点を3週間程度経過後の環境収容力の確からしさ,およそ1%なので,これら数値は確度が高いものです。
 
1. 東京都が2月7日発表の確定日別データ(2月6日まで)に基づく [図をクリックすると拡大]

実際の感染のピークは2日ないし3日となり,6日からの大きな感染者数が報道される前,緊急事態宣言の発出の8日のもっと前です。発症のピークが4日という東京都のエピデータともよく対応します。プロファイルは23日頃までは,日別aveともよく合致し,また解析の詳細を表す図2の平均も増加率の追随性が良好です。解析によるプロファイルはほぼ1月半の期間から得られているので,このような合致は,23日頃までは緊急事態宣言の発出の影響がほぼ無いこと,それまでの感染への対応が継続していたことを意味します。この時点までの感染者数の減少は,年初の多数の感染者によって都民にブレーキが働いたのではなく,それ以前の対応の結果であると理解できます。
 
1月24日以降は,第3波1/23よりも現プロファイルが上方にあり,実際の感染者数と日別aveが現プロファイルよりも上方にあります。これは減少の傾向が減速していることを示します。24日以降は緊急事態宣言の効果が現れてきているはずで,そうならば減少の傾向が強まるはずですが,解析の結果はその逆の結果を示しています。ただし,このことは緊急事態宣言の効果が無い(あるいは逆の効果をもたらした)ことを意味しているのではありません。緊急事態宣言が無かった場合の事例データは存在せず,比較できないからです。もしも緊急事態宣言が無かったら,感染数がもっと増えていたかもしれないのです。
 
緊急事態宣言が発出された埼玉県,千葉県と神奈川県の場合には,1月下旬にはプロファイルに減少傾向の加速が見られます。このような加速の傾向は通常は見られないことから,宣言の効果があったと考えることができます。ただ,これら3県の変曲点が東京都よりも遅く,効果が現れやすい時期であった可能性があります。緊急事態宣言がどれほどあるのかは,その社会・経済に与える影響は甚大で,効果の検証には綿密な分析が必要ですが,効果の検証は極めて重要です。しかるに,緊急事態宣言が発出された4月から5月の効果の検証が充分になされたとは言えず,残念です。財政,政策など政治・行政の効果検証をしっかりと行うことが我国の課題(マスコミ,専門家などの責務)なのではないでしょうか。

図2. 東京都の感染者数プロファイルの最適化の詳細: 2月7日付 [クリックで拡大]

第2波の"主要"なプロファイル(日別感染者数はD f2 calc),第3波のプロファイルA(D f3A calc)とプロファイルB(D f3B calc),これらすべてをを合成した計算値(日別calc)を図1と図2に示しています。"第3波"はAとBの和です。感染者数の累計値(累計obs')に計算値を最適化した結果(累計calc')は図2に示してあります(最新の累計感染者数で除して最大値が1となるように規格化した値です)。

第3波の2つの近接するプロファイルのパラメータは,連続的な累計感染者数から求めた便宜的なもので,和としてのプロファイル(図1と2の"第3波")の方が意味のあるものです。東京都,周辺の埼玉県,千葉県と神奈川県の場合は同じようなプロファイルで,感染者数が増加の傾向が続き,ピークにはまだ到達していません。

図2に東京都の感染者数プロファイルの詳細を示します(2月16日まで)。第3波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は第3波Bに関するものです。τ×平均は実質的な増加率であり,年初には大きく減少していますが,その後は12日頃までは増加しています。この増加分を年初の減少分に移動すると,最適化で得られるτ×増加率の追随性を著しく改善します。年初の大きな減少がその後の増加で相殺されていること,23日頃までは両方の指標が合致することから,これら期間の実際の感染者数はプロファイルの範疇にあることを証明しています。なお,24日以降はτ×平均がτ×増加率よりも僅かに大きくなっており,また累計obs'よりも累計calc'よりもやはり多めになっています。これは図1で見られた感染者数の減少が減速傾向であることに対応しています。

図の見方は,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご参考ください。

自治体別感染者数: 東京都の感染者数を自治体ごとに,人口10万人当たりの1週間または5日間の新規感染者数で比べ,図3と図4に示します。2021年1月19日からは,自治体ごとの相対的な偏差は小さくなり,感染リスクはどこでも同じようです。 第3波では,夜の街・飲食店が多そうな区が感染の大部分を占めていました。

図3. 東京都の2021年1月中旬の自治体(区部と市部)ごとの感染者数

図4. 第3波での自治体ごとの感染者数

特別区部と市部を,人口10万人当たりの1週間の新規感染者数で比べてみたのが図5です。 第2波の7月には区部が市部の約7倍,第2波で約3倍,11月23日以降は2倍を下回りました。 1月18日以降は1.36倍まで低下し,自治体間の差が縮小(市中感染に変化)しています。様々な解釈があり得ますが,たとえば飲食店等の感染が区部では減少した結果が反映されているなどです。なお,この時期には65歳以上の感染者が占める割合も増加していました。

図5. 特別区部と市部の感染者数とその比率の変化


2021/01/30

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [2021年1月10日; 30日更新]

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [2021年1月10日; 17日; 22日; 30日更新]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Tokyo [Jan. 10th, 2021; Updated 17th, 22th and 30th]

 
東京都が2021年1月10日に報道発表した感染者数は1,493名でした。累計の感染者数は74,944名です。1月1日から4日までは1,000名未満であったものが,7日から9日までは2,000名を越える大きな感染者数となり,7日の2,447名がこれまでの最大数です。感染の診断が確定された日の"確定日"ベースでは,感染者数は漸次に修正・更新されていきますが,6日の2,367名が現時点での最大数です。年末・年初の少なかった数がその後の新たな数の増加によって補われ,ほぼ帳尻が合ってきたようです。そこで,感染者数のプロファイルの解析を更新し,以下に述べます。
 
感染者数の増減を相殺するように計算した解析プロファイルは,ほぼこれまでの経過を踏襲しても良いという結果です。しかし,そのパラメータには大きな変化がありました。まず,環境収容力(プロファイルの全期間の感染者数)が著しく大きくなりました。これはクラスター感染(Clusters of cases)から市中感染(Community transmission)に感染の様式が変化したことを示唆します。次に,これまでは変曲点(ピーク)に達しそうな時期が何度かありました。そのたびに機会が生かされずに,変曲点が後へと伸び,感染拡大が継続する状況にありました。
 
前回のブログ(1月10日)の"東京都の感染者数プロファイルの解析"では,第3波が2つのプロファイルAとBから成るモデルとし,後の方のプロファイルBが増え続けていることを述べました。確定日ベースの感染者数を用いて,これまでと同じ方法によってロジスティック関数の最適化を行ない,感染者数のプロファイルを解析しました。なお,以下の日付は確定日ベースで,報道発表データよりは概ね1日早くなります(1日差し引く)。
 
1月30日更新プロファイルを30日までの"確定日"データ(29日まで)での解析を更新しました(感染者数は図0-4)。 1月22日更新のときのプロファイルC(第3波C1/21)を図中に黒い破線で示します。本日のプロファイルとは重なっていて,変化は僅かですが,幅が少し広くなりました。変曲点(日別の感染者数のピーク)は1月10日ですが,約1時間40分だけ遅くなりました。環境収容力(プロファイルの終焉までの累計の感染者数)も約2,000名増えました。それでも,2月中旬までのプロファイルと感染者数は前回の更新の結果との差は僅かです。
 
図0-4. 東京都が1月30日発表の確定日別データ(1月29日まで)に基づく [図をクリックすると拡大]

1月22日更新プロファイルを22日までの"確定日"データ(21日まで)での解析を更新しました(感染者数は図0-3)。 変曲点(日別の感染者数のピーク)がさらに早まり,1月10日となりました。 
 
実際の感染のピークは2日ないし3日となり,6日からの大きな感染者数が報道される前,緊急事態宣言の発令のもっと前です。発症のピークが4日という東京都のエピデータともよく対応します。 都民の感染抑止への自主的な対応が機能したと言えます。現在の再生産率(実効再生産数に相当する指標)は0.46まで低下しています。
 
解析のパラメータは,20日,21日,本日22日の解析ではほぼ一定の値が得られました。本日は変曲点から12日間も経過していることから,パラメータの確度は高くなっています。経過がこのまま順調ならば,来週の金・土曜日には日別の感染者数は400名台となるはずです。なお,緊急事態宣言の効果はパラメータからは認知できてはいませんが,効果があると300名台となるかもしれません。
 
プロファイルBの環境収容力は48,000名まで減少しました。内的自然増加率は0.1294(基本再生産数に相当する値R0が1.90)まで増加しました。このパラメータが大きくなるのは,データの日付が変曲点を経過するときで,増大はプロファイルの急峻化を表し,環境収容力の低下,変曲点の早期化をもたらします。プロファイル解析の詳細を図0-4に示します。プロファイルBの増加率2と平均2が初期の値の1/2よりも小さくなり,ピークアウトは明確です。また両者は互いに合致しています。更新は以上。
 
図0-3. 東京都が1月22日発表の確定日別データ(1月21日まで)に基づく [図をクリックすると拡大]

図0-4. 東京都の感染者数プロファイルの最適化の詳細: 1月22日付 [クリックで拡大]
 
1月17日更新プロファイルを17日までの"確定日"データ(16日まで)を用いて解析を更新しました(感染者数は図0-1)。 年初の多数の感染者で都民にブレーキが働いたのか,ピークが早まり,ほぼピークに入ったようです。 緊急事態宣言の効果と見るには早すぎるでしょう。 9-11日の休日の影響から,先週の前半は数が少なかったのですが,この過少が週後半の過大で相殺する解析でも,先週のデータには減少傾向の先駆けが現われているようです。
 
プロファイルBの環境収容力は87,000名に減少し,変曲点が17日に早まりました。内的自然増加率は0.0796(基本再生産数に相当する値R0が1.55)まで増加しました。このパラメータが大きくなることはあまり無く,増大はプロファイルの急峻化を意味し,環境収容力の低下,変曲点の早期化をもたらします。プロファイル解析の詳細を図0-2に示します。
 
最近の東京都の感染数の発表には,混乱が現われているように見えます。17日の午後3時の速報の報道数は1,592名でした。 夜9時頃の確定数を見ると,前日の16日分が952名で,なんと253名分が7日以上も前(過去)の感染者数です。これまでは7日以前の数は速報値の2%程度でした。大きな過去数は過去最大数であった1月7日にもありました。また,1月14日の1,502名のうち前日分はわずか318名でした。集計が確定数の実態を追い切れていないようです。医療崩壊が集計にも表れているのでしょうか。報道では,17日は日曜日としては過去最多と言われていましたが,内訳を見ると実情とは異なります。更新は以上。
 
図0-1. 東京都が1月17日発表の確定日別データ(1月6日まで)に基づく [図をクリックすると拡大]

図0-2. 東京都の感染者数プロファイルの最適化の詳細: 1月17日付 [クリックで拡大]

以下は1月10日の元々の記述です
 
最適化した最もよくデータと合致する解は,プロファイルBの内的自然増加率が0.0571(基本再生産数に相当する値R0が1.40)での場合で,その環境収容力は約290,000名,変曲点が2月14日,その時の日別感染者数が最大となり4,150名です。このブログでの解析では,プロファイルBはほぼ期間が3ケ月間のデータを反映していますが,この先1月を見渡すほどの確度は疑問です。しかし,これが最もありうる想定です。図4に2月1日までの,日別感染者数と累計感染者数の計算値を示します。
 
内的自然増加率が0.0641(R0が1.45)の場合を計算すると,環境収容力は約170,000名,変曲点が2月1日,最大の日別感染者数が2,730名となりました。なお,感染者数は休日・曜日等により大きく変動しますが,2週間程度のスパンでは非常によく実際の数と解析の値は対応しています。図5に2月1日までの,日別感染者数と累計感染者数の計算値を示します。
 
希望的な解析として,もっと早くピークアウトするケースとして,内的自然増加率が0.0714(R0が1.50)の場合を計算すると,環境収容力は約123,000名,変曲点が1月25日,最大の日別感染者数が2,200名が得られました。年初の感染者の数,非常事態宣言に入ったこと,11日の休日を考えて,この日頃にはピークアウトして欲しいという意味での試算です。図3に2月1日までの,日別感染者数と累計感染者数の計算値を示します。
 
図1に,R0が1.50の場合の1月16日までの,日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),本ブログの解析による日別の感染者数の計算値(日別calc),そして"再生産率"を挙げます。"第3波"としてはプロファイルAとBの和として日別の感染者数の計算値をプロットしてあります。"再生産率"は"実効再生産数"に相当する値で,1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1でピーク,1よりも小さければ小さいほど収束に向かう傾向が大きくなります。
 
再生産率は,11月末にほぼ1.0となり,いったん日別の感染者数のピークに達した後にすぐ感染者数が増加に転じました。その後,12月28日頃に最大値1.33となってから,再生産率は小さくなり始めました。それでも現在は1.25で,感染者数の増加が続いています。再生産率は小さいのですが,感染者数自体が大きいので,(再生産率)×(感染者数)が示す,およそ1週間後の感染者数は大きな数となっています。
 
第3波のプロファイルAは,基本再生産数相当値(R0)が1.7,環境収容力(全期間の感染者数)が約14,400名,変曲点が11月23日ですプロファイルBは,R0が1.50の先述の環境収容力と変曲点です。前回のブログよりも基本再生産数相当値が小さくなり (時間・空間的に広がった),環境収容力はさらに大きくなりました。別のR0での計算では違った値になりますが,最適解のR0=1.40の計算では,これらR0前回のブログとほぼ同じで,プロファイル自体には変化ほぼ無いことを意味します。
 
プロファイルBの変曲点はかなり先の時点で,解析結果は暫定的で,不確定の要素は大です。変曲点までの累計の感染者数は環境収容力の半分です。この数は約62,000名ですので,これからの2週間で,これまでの累計感染者数の約75,000名に近い新規感染者が見込まれることになります(楽観的なケースでも)。
 
図1. 東京都が1月10日発表の確定日別データ(1月9日まで)に基づく: R0=1.50 [図をクリックすると拡大]

第2波の"主要"なプロファイル(日別感染者数はD f2 calc),第3波のプロファイルA(D f3A calc)とプロファイルB(D f3B calc),これらすべてをを合成した計算値(日別calc)を図1と図2に示しています。"第3波"はAとBの和です。感染者数の累計値(累計obs')に計算値を最適化した結果(累計calc')は図2に示してあります(最新の累計感染者数で除して最大値が1となるように規格化した値です)。

第3波の2つの近接するプロファイルのパラメータは,連続的な累計感染者数から求めた便宜的なもので,和としてのプロファイル(図1と2の"第3波")の方が意味のあるものです。プロファイルAはほぼ終息に達しましたが,Bはまだ収束段階(ピークアウト)には入っていません。東京都,周辺の埼玉県,千葉県と神奈川県の場合は同じようなプロファイルで,感染者数が増加の傾向が続き,ピークにはまだ到達していません。
 
図2. 東京都の感染者数プロファイルの最適化の詳細: R0=1.50 [クリックで拡大]

図2に東京都の感染者数プロファイルの詳細を示します(1月16日まで)。第3波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は第3波AにBを繰り込んだものです。τ×平均は実質的な増加率であり,最適化で得られるτ×増加率を追随していて,12月末の大きな感染者数,年末・年初の減少が先週の大きな増加で相殺されていることから,実際の感染者数はプロファイルの範疇にあることを指し示しています

第2波はピークを過ぎて日別感染者数がピークの半分に近くに減ってから,再生産率が1近辺の値に留まり,収束には至りませんでした。第3波の日別の感染者数がピークを過ぎても,実際に感染を惹起する感染者数はさらに1週間程度は増え続けます。したがって,感染者数が多いと,感染が再拡大してしまう,クラスターが発生し易い,のように感染プロファイルを変えてしまう要因は多々ありえます。

図4-6に,第1波,第2波,第3波の感染者数とその計算プロファイルを挙げます。これらの感染の規模と経過を把握できるでしょう。

図3. 東京都の確定日別の感染者数のデータと計算値: R0=1.50 [クリックで拡大]

図4. 東京都の確定日別の感染者数のデータと計算値: R0=1.40 (最適解)[クリックで拡大]

図5. 東京都の確定日別の感染者数のデータと計算値: R0=1.45 [クリックで拡大]

図の見方は,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご参考ください。

COVID-19 茨城県の感染者数プロファイルの解析 [2021年1月30日]

COVID-19 茨城県の感染者数プロファイルの解析 [2021年1月30日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Ibaraki Pref. [Jan. 30th, 2021]

茨城県の新型コロナウイルス感染症の感染者数のプロファイルをロジスティック関数への最適化により解析しました。使用したデータは,茨城県が公表している「新型コロナウイルス感染症陽性者一覧」で,本日2021年1月30日までの最新の累計感染者数です。12月半ばから増加していた第3波のプロファイルCは,1月14日にピークに達した後,減少を続けています。しかし,1月24日頃からは減少のペースが遅くなったように見えます。

茨城県については,前回のブログ"COVID-19 茨城県の感染者数プロファイルの解析 [1月14日]"にて採り上げた後,21日に直近の更新を行いました。1月15日にはこれまでの最大の感染者数の159名がありました。23日には132名もの感染者数が報道されましたが,その前後にはこのような大きな数は現れず,この大きな数は単発的で,プロファイルを大きく変えることはありませんでした。第3波としては3つのプロファイルを採るものとする,前回と同じ方法で感染者数のプロファイルを解析しました。

図1に,日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),累計の計算値から得られる日別の感染者数の計算値(日別calc)をプロットしました。クラスターの発生に起因する日別obsの大きなばらつきが,日別aveでは滑らかになっています。1日ないし2日の鋭く棒状に増えている日別感染者数は典型的なクラスターの発生を示唆します。なお,7月26日以前のグラフについては過去のブログをご覧ください。黒い破線の"日別1/23”は,1月23日の解析で得られた第3波Cのプロファイルで,この日と本日の結果の比較のために載せました。

図1. 茨城県の感染者数と最適化による計算値: 1月30日結果 [図をクリックすると拡大]

Data source: 茨城県が公表している「新型コロナウイルス感染症陽性者一覧」https://www.pref.ibaraki.jp/1saigai/2019-ncov/ichiran.html

図の"再生産率"は,実効再生産数に相当する指標で,再生産率が1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1ならばその状態が継続,1よりも小さければ小さいほど収束に向かう傾向が大きくなります。1を切る時点がピークです。また,(再生産率)×(日別感染者数)がほぼ1週間後の感染者数となります。

第3波はプロファイルA,BとCで表されています。これらの環境収容力の和は約4,320名で,今後の感染者も含めた第3波全体の累計感染者数です。プロファイルAとBは既に終息しており,現在はCがほぼ全てです。Cの環境収容力は約3,020名,基本再生産数の相当値は1.90,変曲点(ピーク)は1月14日でしたが,最近は半日遅くなった15日と算出されています。このプロファイルは,変曲点に到達する頃の解析では,基本再生産数が小さく,環境収容力も大きく見積もられていました。本日は変曲点から2週間を経過しているので,パラメータの確度は高くなっています。23日の解析でのプロファイルCと本日のものとの差異は極めて小さくなっています。

第3波Cのうち,これまで出現した数は2,635名となり,今後に見込まれる感染者数は約370名まで小さくなっています。なお,1月24日の解析では,Cの環境収容力は2,880名,基本再生産数相当値が1.96でした。本日の解析との差は僅かですが,有意なものと考えています。

第3波は,再生産率が10月24日頃に1を越えて急に大きくなり,11月8日頃には2.2の最大値を示しました。その後の減少も早く,11月24日頃には1を切り,日別感染者数はいったんピークとなりました。12月10日頃には0.5まで低下してからは増加に転じ,第3波Cが卓越しだしました。12月18日には1を越えて感染者数は増加に転じ,29日には1.65まで大きくなってから減り始め,1月14日頃に1を切りました。これが感染者数のピークです。その後の減少も順調で,本日は0.33まで小さくなっています。

現在の日別感染者数は,計算上はピークのほぼ半分となっています。このままのペースが続くと,2月11日頃の感染者数は12名程度と見込まれます。しかしながら,23日のプロファイルの幅よりも本日現在の幅が広くなっており(内的自然増加率,基本再生産数が小さくなる傾向にある),減少のペースが遅くなる可能性が解析では現われています。とくに,25日以降は日別の感染者数の減少が小さくなっているように見えます。この傾向には十分な注意が必要です。

図2. 茨城県の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [クリックで拡大]
 
図2は,各プロファイルからの日別感染者数の計算値(第2+γ波がD f2' calc,第3波のAがD f3A calc,BがD f3B calc,CがD f3C calc)と,これらを合成した計算値(日別calc)を示します。感染者数の累計値(累計obs')に計算値を最適化した結果(累計calc')は図2に示してあります(最新の累計感染者数で除して最大値が1.2となるように規格化した値です)。
 
第3波Cについて"τ×平均"と"τ×増加率"の指標を図2に示しています。τ×平均は実質的な増加率であり,最適化の計算で得られるτ×増加率が上下に振れながら,τ×平均を追随しています。年末年初の減少とその後の増大が顕著で,休日の11日の後に少し減り,またτ×増加率に近づいています。これら指標が初期の値の1/2になる時点が変曲点ですので,変曲点からは大きく経過しています。1月25日頃からは"τ×平均"が"τ×増加率"よりもやや大きなっていることない注目ください。

図の見方などについては,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご覧ください。