COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [2021年1月10日; 17日; 22日; 30日更新]
Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Tokyo [Jan. 10th, 2021; Updated 17th, 22th and 30th]
東京都が2021年1月10日に報道発表した感染者数は1,493名でした。累計の感染者数は74,944名です。1月1日から4日までは1,000名未満であったものが,7日から9日までは2,000名を越える大きな感染者数となり,7日の2,447名がこれまでの最大数です。感染の診断が確定された日の"確定日"ベースでは,感染者数は漸次に修正・更新されていきますが,6日の2,367名が現時点での最大数です。年末・年初の少なかった数がその後の新たな数の増加によって補われ,ほぼ帳尻が合ってきたようです。そこで,感染者数のプロファイルの解析を更新し,以下に述べます。
感染者数の増減を相殺するように計算した解析プロファイルは,ほぼこれまでの経過を踏襲しても良いという結果です。しかし,そのパラメータには大きな変化がありました。まず,環境収容力(プロファイルの全期間の感染者数)が著しく大きくなりました。これはクラスター感染(Clusters of cases)から市中感染(Community transmission)に感染の様式が変化したことを示唆します。次に,これまでは変曲点(ピーク)に達しそうな時期が何度かありました。そのたびに機会が生かされずに,変曲点が後へと伸び,感染拡大が継続する状況にありました。
前回のブログ(1月10日)の"東京都の感染者数プロファイルの解析"では,第3波が2つのプロファイルAとBから成るモデルとし,後の方のプロファイルBが増え続けていることを述べました。確定日ベースの感染者数を用いて,これまでと同じ方法によってロジスティック関数の最適化を行ない,感染者数のプロファイルを解析しました。なお,以下の日付は確定日ベースで,報道発表データよりは概ね1日早くなります(1日差し引く)。
1月30日更新: プロファイルを30日までの"確定日"データ(29日まで)での解析を更新しました(感染者数は図0-4)。 1月22日更新のときのプロファイルC(第3波C1/21)を図中に黒い破線で示します。本日のプロファイルとは重なっていて,変化は僅かですが,幅が少し広くなりました。変曲点(日別の感染者数のピーク)は1月10日ですが,約1時間40分だけ遅くなりました。環境収容力(プロファイルの終焉までの累計の感染者数)も約2,000名増えました。それでも,2月中旬までのプロファイルと感染者数は前回の更新の結果との差は僅かです。
1月22日更新: プロファイルを22日までの"確定日"データ(21日まで)での解析を更新しました(感染者数は図0-3)。 変曲点(日別の感染者数のピーク)がさらに早まり,1月10日となりました。
実際の感染のピークは2日ないし3日となり,6日からの大きな感染者数が報道される前,緊急事態宣言の発令のもっと前です。発症のピークが4日という東京都のエピデータともよく対応します。
都民の感染抑止への自主的な対応が機能したと言えます。現在の再生産率(実効再生産数に相当する指標)は0.46まで低下しています。
解析のパラメータは,20日,21日,本日22日の解析ではほぼ一定の値が得られました。本日は変曲点から12日間も経過していることから,パラメータの確度は高くなっています。経過がこのまま順調ならば,来週の金・土曜日には日別の感染者数は400名台となるはずです。なお,緊急事態宣言の効果はパラメータからは認知できてはいませんが,効果があると300名台となるかもしれません。
プロファイルBの環境収容力は48,000名まで減少しました。内的自然増加率は0.1294(基本再生産数に相当する値R0が1.90)まで増加しました。このパラメータが大きくなるのは,データの日付が変曲点を経過するときで,増大はプロファイルの急峻化を表し,環境収容力の低下,変曲点の早期化をもたらします。プロファイル解析の詳細を図0-4に示します。プロファイルBの増加率2と平均2が初期の値の1/2よりも小さくなり,ピークアウトは明確です。また両者は互いに合致しています。更新は以上。
1月17日更新: プロファイルを17日までの"確定日"データ(16日まで)を用いて解析を更新しました(感染者数は図0-1)。
年初の多数の感染者で都民にブレーキが働いたのか,ピークが早まり,ほぼピークに入ったようです。
緊急事態宣言の効果と見るには早すぎるでしょう。 9-11日の休日の影響から,先週の前半は数が少なかったのですが,この過少が週後半の過大で相殺する解析でも,先週のデータには減少傾向の先駆けが現われているようです。
プロファイルBの環境収容力は87,000名に減少し,変曲点が17日に早まりました。内的自然増加率は0.0796(基本再生産数に相当する値R0が1.55)まで増加しました。このパラメータが大きくなることはあまり無く,増大はプロファイルの急峻化を意味し,環境収容力の低下,変曲点の早期化をもたらします。プロファイル解析の詳細を図0-2に示します。
最近の東京都の感染数の発表には,混乱が現われているように見えます。17日の午後3時の速報の報道数は1,592名でした。 夜9時頃の確定数を見ると,前日の16日分が952名で,なんと253名分が7日以上も前(過去)の感染者数です。これまでは7日以前の数は速報値の2%程度でした。大きな過去数は過去最大数であった1月7日にもありました。また,1月14日の1,502名のうち前日分はわずか318名でした。集計が確定数の実態を追い切れていないようです。医療崩壊が集計にも表れているのでしょうか。報道では,17日は日曜日としては過去最多と言われていましたが,内訳を見ると実情とは異なります。更新は以上。
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以下は1月10日の元々の記述です
最適化した最もよくデータと合致する解は,プロファイルBの内的自然増加率が0.0571(基本再生産数に相当する値R0が1.40)での場合で,その環境収容力は約290,000名,変曲点が2月14日,その時の日別感染者数が最大となり4,150名です。このブログでの解析では,プロファイルBはほぼ期間が3ケ月間のデータを反映していますが,この先1月を見渡すほどの確度は疑問です。しかし,これが最もありうる想定です。図4に2月1日までの,日別感染者数と累計感染者数の計算値を示します。
内的自然増加率が0.0641(R0が1.45)の場合を計算すると,環境収容力は約170,000名,変曲点が2月1日,最大の日別感染者数が2,730名となりました。なお,感染者数は休日・曜日等により大きく変動しますが,2週間程度のスパンでは非常によく実際の数と解析の値は対応しています。図5に2月1日までの,日別感染者数と累計感染者数の計算値を示します。
希望的な解析として,もっと早くピークアウトするケースとして,内的自然増加率が0.0714(R0が1.50)の場合を計算すると,環境収容力は約123,000名,変曲点が1月25日,最大の日別感染者数が2,200名が得られました。年初の感染者の数,非常事態宣言に入ったこと,11日の休日を考えて,この日頃にはピークアウトして欲しいという意味での試算です。図3に2月1日までの,日別感染者数と累計感染者数の計算値を示します。
図1に,R0が1.50の場合の1月16日までの,日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),本ブログの解析による日別の感染者数の計算値(日別calc),そして"再生産率"を挙げます。"第3波"としてはプロファイルAとBの和として日別の感染者数の計算値をプロットしてあります。"再生産率"は"実効再生産数"に相当する値で,1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1でピーク,1よりも小さければ小さいほど収束に向かう傾向が大きくなります。
再生産率は,11月末にほぼ1.0となり,いったん日別の感染者数のピークに達した後にすぐ感染者数が増加に転じました。その後,12月28日頃に最大値1.33となってから,再生産率は小さくなり始めました。それでも現在は1.25で,感染者数の増加が続いています。再生産率は小さいのですが,感染者数自体が大きいので,(再生産率)×(感染者数)が示す,およそ1週間後の感染者数は大きな数となっています。
第3波のプロファイルAは,基本再生産数相当値(R0)が1.7,環境収容力(全期間の感染者数)が約14,400名,変曲点が11月23日です。プロファイルBは,R0が1.50の先述の環境収容力と変曲点です。前回のブログよりも基本再生産数相当値が小さくなり (時間・空間的に広がった),環境収容力はさらに大きくなりました。別のR0での計算では違った値になりますが,最適解のR0=1.40の計算では,これらR0は前回のブログとほぼ同じで,プロファイル自体には変化ほぼ無いことを意味します。
プロファイルBの変曲点はかなり先の時点で,解析結果は暫定的で,不確定の要素は大です。変曲点までの累計の感染者数は環境収容力の半分です。この数は約62,000名ですので,これからの2週間で,これまでの累計感染者数の約75,000名に近い新規感染者が見込まれることになります(楽観的なケースでも)。
第2波の"主要"なプロファイル(日別感染者数はD f2 calc),第3波のプロファイルA(D f3A calc)とプロファイルB(D f3B calc),これらすべてをを合成した計算値(日別calc)を図1と図2に示しています。"第3波"はAとBの和です。感染者数の累計値(累計obs')に計算値を最適化した結果(累計calc')は図2に示してあります(最新の累計感染者数で除して最大値が1となるように規格化した値です)。
第3波の2つの近接するプロファイルのパラメータは,連続的な累計感染者数から求めた便宜的なもので,和としてのプロファイル(図1と2の"第3波")の方が意味のあるものです。プロファイルAはほぼ終息に達しましたが,Bはまだ収束段階(ピークアウト)には入っていません。東京都,周辺の埼玉県,千葉県と神奈川県の場合は同じようなプロファイルで,感染者数が増加の傾向が続き,ピークにはまだ到達していません。
図2に東京都の感染者数プロファイルの詳細を示します(1月16日まで)。第3波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は第3波AにBを繰り込んだものです。τ×平均は実質的な増加率であり,最適化で得られるτ×増加率を追随していて,12月末の大きな感染者数,年末・年初の減少が先週の大きな増加で相殺されていることから,実際の感染者数はプロファイルの範疇にあることを指し示しています。
第2波はピークを過ぎて日別感染者数がピークの半分に近くに減ってから,再生産率が1近辺の値に留まり,収束には至りませんでした。第3波の日別の感染者数がピークを過ぎても,実際に感染を惹起する感染者数はさらに1週間程度は増え続けます。したがって,感染者数が多いと,感染が再拡大してしまう,クラスターが発生し易い,のように感染プロファイルを変えてしまう要因は多々ありえます。
図4-6に,第1波,第2波,第3波の感染者数とその計算プロファイルを挙げます。これらの感染の規模と経過を把握できるでしょう。
図3. 東京都の確定日別の感染者数のデータと計算値: R0=1.50 [クリックで拡大] |
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図5. 東京都の確定日別の感染者数のデータと計算値: R0=1.45 [クリックで拡大] |
図の見方は,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご参考ください。
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