2021/01/24

COVID-19 神奈川県の感染者数プロファイルの解析[2021年1月24日]

COVID-19 神奈川県の感染者数プロファイルの解析[2021年1月24日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Kanagawa Pref. [January 24th, 2021]

 
神奈川県のCOVID-19新型コロナウィルス感染症の感染者数のプロファイルを解析しました。使用した感染者数データは,本日1月24日現在の神奈川県が公表の感染者数の累計です。感染者数のピークは1月14日となり,その後の減少は速やかです。
 
前回のブログ(1月1日)では,第3波が2つのプロファイルAとBから成り,Aはほぼ終息しているものの,Bはまだ拡大の傾向にあることを述べました。今回の解析も前回と同様に行いました。

図1に,日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),累計の計算値から得られる日別の感染者数の計算値(日別calc)をプロットしました。曜日,クラスターの発生におもに起因する日別obsの大きなばらつきが,日別aveでは滑らかになっています。
 
年末と年初では感染者数が大きく減少し,その後の7日からは大きな増加が見られました。9日にはこれまでの最大数995名が記録されました。休日の11日の後も減少と増加が見られ,18日までこれら減少・増加は続きました。週末と休日の間とその直後の減少は,その後の増加で相殺されるので,累計すると2週間程度の後では減少・増加の解析結果への影響は小さくなります。神奈川県の場合は,東京都ほどはこの影響が強くなかったので,特別な操作は行っていません。

第3波プロファイルについて,プロファイルAとBの日別感染者数の計算値の和を図示しています。図の"再生産数"は,実効再生産数に相当する指標で,再生産率が1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1ならばその状態が継続,1よりも小さければ小さいほど収束に向かう傾向が大きくなります。1を切る時点がピークです。

第3波のプロファイルはAとBの2つから成り,AとBは相関が強く,AはBが卓越してくるとBの影響を受けて本来(初期)のパラメータから変わってきます。Aは,初期の環境収容力は約3,000名でしたが,現在は約13,000名になり,基本再生産数の相当値が2.0から1.4まで下がりました。変曲点(ピーク)は11月20日から12月9日に移りました。これら変化は,解析がAとBの和の累計感染者数を最適化しているためです。

プロファイルBは既に変曲点を過ぎました。変曲点は14日です。ピークを越えて10日間を経過しており,Bのパラメータの確度は高くなっているはずです。その環境収容力は約24,400名,基本再生産数相当値は1.9と得られました。現在はプロファイルBが感染者数の大部分を占めています。合計した第3波の環境収容力は約37,200名です。合計した第3波のうちこれまで出現した数は30,400名なので,今後に見込まれる感染者数は6,800名となり,かなり少なくなりました。減少が加速すれば,今後の数は多少は少なくなります。

実際に感染がピークとなったのは,感染者数のピーク日の8日程度前と短めでも,1月6日になります。緊急事態宣言の前であり,その後の経過には効果があったのでしょうか。ちなみに,東京都の場合は,感染者数のピークが1月10日,実際の感染のピークが2日または3日です。東京都の発症日のピークはエピデータでは4日頃です。神奈川県は数日遅めです。なお,埼玉県と千葉県のプロファイルは神奈川県とよく似ており,感染者数のピークはまだ暫定的ですが,埼玉県が15日,千葉県が16日と,すこし遅めです。これで首都圏の4都県はピークを越えて明瞭な減少に入りました。

神奈川県の再生産率は,第2波の後も長くほぼ1に近い状態で,第2波の余波が一定の日別感染者数で推移しました。10月中旬には再生産率は1を越えて第3波となりました。増加のペースは12月10日頃から速くなり,1月1日頃には1.41の最大値を示しました。この値は,プロファイルAに,ほぼ同時進行したプロファイルBが大きく寄与しています。その後は減少に転じ,1月14日には1を切りました。ここが日別感染者数のピークです。11月20日頃にも再生産率が1を切りそうな状況がありましたが,Bの寄与が大きくなり,結果としてこのBが大きな感染者数を年初以後にもたらしました。

第2波が終息に至らなかったこと,第3波での11月下旬での減少の機会を逸したこと,などが長く大きな第3波の感染者数をもたらしたようです。この第3波も終息に向かっていますが,未だ感染者数はとても多く,今後の再拡大(第4波?)と高い感染力の変異ウイルスの脅威などを想起すると,感染者数を第2波の余波の状態よりも小さくすることが肝要と考えます。現状の人々の高まった感染への対応意識で,昨年の9月から10月の生活の状態を考えると,さほど不自由ではなく,経済活動も良好に過ごせそうです。

図1. 神奈川県のCOVID-19感染者数のプロファイル解析(1月24日) [図をクリックすると拡大します]

Data source: 神奈川県公表"新型コロナウイルス感染症対策 陽性患者数及び陽性患者の属性データ"
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/t3u/dst/s0060925.html

累積の感染者数(累計obs)について最小二乗法により4つの関数プロファイルを最適化しています。図2は,各プロファイルからの日別感染者数の計算値(第2波(主要)がD f2 calc,これに付随するものがD f2' calc,第3波のAがD f3A calc,BがD f3B calc,合計がD f3 calc)と,これらを合成した計算値(日別calc)を示します。感染者数の累計値(累計obs')に計算値を最適化した結果(累計calc')は図2に示してあります(最新の累計感染者数で除して最大値が1.0となるように規格化した値です)。
 
図2. 神奈川県の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [クリックで拡大]

第3波のプロファイルBについて"τ×平均"と"τ×増加率"を図2に示しています。τ×平均は実質的な増加率であり,最適化の計算で得られるτ×増加率を追随していて,このプロファイルのパラメータが感染者数をよく反映するものであることを意味しています。年末と年初の減少が顕著ですが,その後の一致度は良好です。

図の見方などについては,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご覧ください。

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