2020/09/06

COVID-19 愛知県の感染者数プロファイルの解析 [9月6日]

COVID-19 愛知県の感染者数プロファイルの解析

[9月6日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Aichi Pref. [September 6th, 2020]


愛知県が発表した感染者数を用いて,解析した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者数のプロファイルを8月6日記載しました。その後,8月24日にも感染者数プロファイル解析を掲載しました。

以下は,本日9月6日発表のデータまでを用いた解析の結果です。8月24日では,クラスターの発生などの影響から,8月10日頃から感染者数が目立って増え,"τ×平均"が"τ×増加率"よりも大きくなって追随しきれておらず,プロファイルはこれまでの第2波の延長線上にないことを指摘しました。そこで,新たな第2波のプロファイルを追加しました。

感染者数のデータは5月17日から8月24日までの累計感染者数です。5月17日の累計感染者数を0名としています。日別の感染者数のばらつきが大きいことから,前後7日間の感染者数の移動平均を橙色の実線の"日別ave"としてグラフに示しています。解析については本ブログの"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"のページをご覧ください。CompartmentモデルのSIRDモデルへの対応付けについては"COVID-19 感染者数プロファイルの概形"をご覧ください。
 
8月6日の計算での変曲点の日付は7月31日でした。これは"日別ave"のピークにも相当します。本日の解析では,図1に示すように,第2波の変曲点は8月1日になりました。"τ×増加率"の初めの頃の値から見積もった基本再生産数は2.6と,先の解析の値2.66とほとんど同じ値です。これは急峻な感染の拡大・収束を意味し,8月末には日別の感染者数はほぼゼロとなることを表してます。

8月12日以降は,"τ×平均"と"日別ave"が計算による回帰曲線を顕著に上まっています。これは,名古屋市での大きなクラスター,飲食店,高齢者施設などでのクラスターの発生を反映していると思われました。このように第2波と想定したプロファイルよりも増えた感染者数の寄与を第2+α波で最適化してみると,報告されている感染者数と全体プロファイルの一致が極めて良好になりました。

第2波の全累積感染者数(環境収容力)は2,760名,基本再生産数相当値は2.6,変曲点は8月1日です。図2に示すように,8月13日以降は第2+α波による日別感染者数(日別calc1)がd第2波の分(日別calc0)を上回り始め,8月末以降はほとんどが第2+α波の分です(日別calcは日別calc0と日別calc1の和)。第2+α波の全累積感染者数は1,550名,基本再生産数相当値は2.0,変曲点は8月20日です。
 
第2波も第2+α波も7月初めに最初の感染者が現れ始め,第2+α波はゆっくりと増え続け,8月半ばには第2+α波が優勢となり,8月20日をピークに,ゆっくりと減少し始めました。この傾向が続けば,9月下旬にはほぼ収束を迎えるでしょう。

グラフの見方」は図の下方にも挙げてあります。

図1. 愛知県が9月6日発表した感染者数のデータに基づいています [図をクリックすると拡大]
Data source:  愛知県新型コロナウイルス感染症対策サイト 
および https://github.com/code4nagoya/covid19/tree/development/data

"τ×平均2"が,"τ×増加率"よりも小さい(下方の)時は収束の傾向(実効再生産数が減少),大きい(上方の)時はいっそう拡大の傾向(実効再生産数が増大)を意味しています。なお,"τ×増加率"自体も日々のデータに応じた最適化により,更新されていることにご注意ください。
図2. 累計感染者数(累計obs)について,第2波(感染者数の日別calc0)と第2+α波(日別calc1)のそれぞれのロジスティック関数の和としての累計calcを最適化しました。それぞれのパラメータは本文をご覧ください。

グラフの見方


感染確定日データの日別の感染者数の累計が,"累計obs"です。ただし,最新の値で割って,最大値が1となるようにした"累計obs'"をグラフにプロットしています。

累計obsに合致するようにロジスティック関数を最適化し,最適化した関数による計算値が"累計calc"です。この値を最新の累計obsで割った"累計obs'"と"累計calc'"をプロットしています。最新の"累計obs'"は1です。

"日別obs"は,日別の感染者数です。最適化した関数から計算される日別の感染者数が"日別calc"です。

最適化した関数から計算される内的自然増加率 r から計算される実効再生産数が,"τ×増加率"です。ここでの τ (tau) は,感染者が感染させてしまう平均日数で,値は7を採用しています。初期の頃の"τ×増加率"に1を加えた数が基本再生産数に対応すると考えられ,東京都の第1波では2,第2波では1.55程度です。

日別の感染者数から見積もることができる"τ×増加率"に相当する値について,素のデータが曜日ごとのばらつきが大きいため,7日間の移動平均をとった値が"τ×平均"です。第1波について"τ×平均1",第2波について"τ×平均2"としています。最新の3日間では7日間移動平均が適用できませんが,動向を把握するために,最新日は実際の値そのもの,前日では3日間の,前々日では5日間の移動平均を採用しています。そのため,最新日と前日の値の変動の幅は大きくなっています。

これら"τ×平均"は関数モデルが妥当ならば,"τ×増加率"に次第に合致するはずです。"τ×平均1"は第1波の"τ×増加率"によく沿っていて,"τ×平均2"は変化しながらも第2波の"τ×増加率"に追随しています。

"累計calc'""日別calc""τ×増加率"は日付を指定すれば計算できるので,数日後の値もプロットしています。

日別感染者数がピークに達するとき,"日別calc""τ×増加率"は変曲点に来ます。変曲点に来ると"τ×増加率"が初めのころの値の1/2となります。"τ×増加率""τ×平均"が次第に小さくなって,半分となる時期が感染のピークです。このときの累計感染者数を2倍すると,最大値になります。

"日別calc"はピークを挟んでグラフでは左右対称となります(偶関数です)。ピークの前と後では日別感染者数,および,その累計値(こちらは奇関数)はほとんど同じ値になります。

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