2020/09/17

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [9月17日]

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析

[9月17日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Tokyo [September 17th, 2020]


東京都が本日9月17日に発表した感染者数は171名で,先週と同様にやや多めに推移しています。このブログで9月7日に記載した東京都の感染指数プロファイルの解析で指摘した傾向がより顕著になってきたと考え,本日までの確定日別の感染者数を用いてプロファイルの解析を更新しました。

図1に, 日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),8月22日前後の本ブログの解析による日別の感染者数の計算値(第1波についてD f0 calc,第2波についてD f1 calc)を挙げました。第2波の計算値は(7月23日に記した"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"のプロファイルとほぼ同じものです),8月20日頃までの日別の感染者数の様子をよく反映しています。

図1. 東京都の確定日別の感染者数と最適化による計算値
 
しかし,その後は日別感染者数が計算値を上回る日々が増え,9月に入ってからはいっそう顕著です(青い矢印)。9月6日以降は,計算値よりも多く乖離している分が,計算値そのものよりも多い状態になっています。そのため,感染が拡大している,あるいは,"第3波"が発生しているのではと考える向きもありえます。

今回の解析では,乖離分に相当するロジスティック関数のプロファイルを追加し,累積の感染者数(累計obs)について最小二乗法により3つの関数プロファイルを最適化しました。図2は,各プロファイルからの日別感染者数の計算値(新たな分がD f2 calc)と,これらを合成した計算値(日別calc)を示します。累計obsに最適化した結果が累計calcで,一致がとても良好となっています。

図2. 東京都の累計感染者数と感染者数プロファイル

図3は,これまでのブログで示してきた感染者数プロファイルの詳細を表したものです。図の見方は,COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご覧ください。また,下方にも挙げてあります。

第1波の環境収容力(プロファイル全体の累計感染者数)は5,080,変曲点(日別の感染者数のピーク)は4月13日,基本再生産数の相当値は2.0でした。第2波については,図1に記したプロファイルの寄与分を以下でも第2波とし,新たな追加プロファイルの寄与分を仮に"第2+β波"とよぶことにします。第2波の環境収容力は17,100,変曲点は8月1日,基本再生産数相当値は1.53です。

"第2+β波"については,変曲点は今週中だと考えられますが,データ数が少なくまだよく決まっていないために誤差が大きく,環境収容力はおよそ4,200です。基本再生産数は初期の値ですので値の変動がやや小さく,1.9程度です。"第2+β波"のこれまでの感染者数の寄与は約2,000名で,報告数とはよく対応します。この"第2+β波"は小さなものではなく,東京都の第1波に相当する,感染者数が多い他府県の大部分をも越えるくらい,大きなプロファイルです。
 
図3. 9月17日発表の東京都の確定日別データ(9月16日まで)に基づいています [図をクリックすると拡大]

"第2+β波"は,第2波のピークの近傍から現れだしましたが,第1波に近い関数のパラメータとなっています。そのため,今後の推移は第1波を見ると推察できます。現在がピークだとすると,ほどなく減少に転じ,1か月間ほどで収束すると見込まれます。第2波も日別の感染者数は緩やかですが減少段階にあります。"第2+β波"も減少段階に入ることから,2つのプロファイルの和のプロファイルは第2波の傾きよりもより急峻に減少に向かうと考えられます。それでも,"第2+β波"の発生により,全体としての第2波は2-3週間は収束傾向が遅れることになります。
 
愛知県の感染者数プロファイルの解析(9月6日)では,"第2+α波"を記しました。この"第2+α波"は,第2波と同様に7月初めに最初の感染者が現れ始め,第2+α波はゆっくりと増え続け,8月半ばには第2+α波が優勢となり,8月20日をピークに,ゆっくりと減少し始めました。上記の"第2+β波"とは挙動が異なることから,東京都の場合をこのように"第2+β波"よびます。第3波とよんでも良いでしょう。なお,愛知県の最近のプロファイルを見ると,9月6日に指摘した"第2+α波"はその後も成り立っていて,さらに東京都の"第2+β波"に似た増加の傾向も現れだしました。このような傾向は大阪府などにも見受けられます。

グラフの見方


感染確定日データの日別の感染者数の累計が,"累計obs"です。ただし,最新の値で割って,最大値が1となるようにした"累計obs'"をグラフにプロットしています。

累計obsに合致するようにロジスティック関数を最適化し,最適化した関数による計算値が"累計calc"です。この値を最新の累計obsで割った"累計obs'"と"累計calc'"をプロットしています。最新の"累計obs'"は1です。

"日別obs"は,日別の感染者数です。最適化した関数から計算される日別の感染者数が"日別calc"です。

最適化した関数から計算される内的自然増加率 r から計算される実効再生産数が,"τ×増加率"です。ここでの τ (tau) は,感染者が感染させてしまう平均日数で,値は7を採用しています。初期の頃の"τ×増加率"に1を加えた数が基本再生産数に対応すると考えられ,東京都の第1波では2,第2波では1.55程度です。

日別の感染者数から見積もることができる"τ×増加率"に相当する値について,素のデータが曜日ごとのばらつきが大きいため,7日間の移動平均をとった値が"τ×平均"です。第1波について"τ×平均1",第2波について"τ×平均2"としています。最新の3日間では7日間移動平均が適用できませんが,動向を把握するために,最新日は実際の値そのもの,前日では3日間の,前々日では5日間の移動平均を採用しています。そのため,最新日と前日の値の変動の幅は大きくなっています。

これら"τ×平均"は関数モデルが妥当ならば,"τ×増加率"に次第に合致するはずです。"τ×平均1"は第1波の"τ×増加率"によく沿っていて,"τ×平均2"は変化しながらも第2波の"τ×増加率"に追随しています。

"累計calc'""日別calc""τ×増加率"は日付を指定すれば計算できるので,数日後の値もプロットしています。

日別感染者数がピークに達するとき,"日別calc""τ×増加率"は変曲点に来ます。変曲点に来ると"τ×増加率"が初めのころの値の1/2となります。"τ×増加率""τ×平均"が次第に小さくなって,半分となる時期が感染のピークです。このときの累計感染者数を2倍すると,最大値になります。

"日別calc"はピークを挟んでグラフでは左右対称となります(偶関数です)。ピークの前と後では日別感染者数,および,その累計値(こちらは奇関数)はほとんど同じ値になります。

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