COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [9月30日]
Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Tokyo [September 30th, 2020]
東京都が本日9月30日に発表した感染者数は194名で,連休後の先週後半の感染者数の多さは,週が明けてもまだ一段落していないようです。このブログで9月17日に記載した"東京都の感染指数プロファイルの解析"で指摘した傾向について,本日までの確定日別の感染者数を用いてプロファイルの解析を更新しました。9月17日に述べたこととほぼ同じような感染者数のプロファイルが継続していますが,ここ数日は,プロファイルを越える感染者数の兆候が伺えます。
図1に,日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),本ブログの解析による日別の感染者数の計算値(日別calc)を挙げます。第2波の主要なピークの計算値は7月23日に記した"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"のプロファイルとほぼ同じです。
図1. 9月30日発表の東京都の確定日別データ(9月29日まで)に基づいています [図をクリックすると拡大] |
9月に入ってから,日別感染者数が計算値を上回る日々が増え,9月17日のブログで述べたように,第1波のプロファイル(日別感染者数はD f0 calc)と第2波のプロファイル(D f1 calc)に,"第2+β波"のプロファイル(D f2 calc)も計算に含め,これらを合成した計算値(日別calc)が図1に示しています。感染者数の累計値(累計obs)に計算値を最適化した結果(累計calc)も図1に示してあります。第2+β波の導入により,報告値と計算値の一致が良好となっています。
図2に東京都の感染者数プロファイルの詳細を示します。第2波についてτ×平均1とτ×増加率1,第2+β波についてτ×平均2とτ×増加率2も図に記載してあります。τ×平均は実質的な増加率であり,最適化で得られるτ×増加率を追随しています。ただ,7月下旬の連休で報告される感染者数の減少を反映してτ×増加率を下回り,その直後は報告数の増加を反映して上回るといように,感染者数の変化も表現しています。こような現象は,8月の連休,そして9月の連休でも表れています。ただ,先の9月の連休後の増加の結果は未だ進行中のようです。
第1波の環境収容力(プロファイル全体の累計感染者数)は5,080,変曲点は4月13日,基本再生産数相当値は2.0と,前回と同じ値です。第2波の環境収容力は16,880,変曲点は7月31日,基本再生産数相当値は1.53とやはりほぼ同じです。
"第2+β波"については,前回はデータ数が少なかったことから,環境収容力はおよそ4,200,基本再生産数相当値は1.9程度と見積もりました。今回の解析では,環境収容力は5,400と大きくなり,第1波を越える数となりました。変曲点は9月19日,基本再生産数相当値は1.7となりました。これら数値の変化は,先の結果よりも第2+β波が大きくなり,まだ拡大の傾向を持っているいることを示唆します。第2+β波のこれまでの感染者数の寄与は約4,000名まで増えました。3波の合成値である累計calcは報告数とよく合致しています。
9月5日以降は,第2+β波が寄与する日別の感染者数が第2波の分よりも多くなり,現時点では第2+β波の寄与が89%と,大部分を占めています。第2+β波は変曲点を過ぎたと思われ,基本再生産数相当値が第1波に近いやや大きい値であることから,減少のペースは第2波よりも速やかです。第2波も日別の感染者数は緩やかに減少していますが,第2+β波と合わせたプロファイルは第2波の減少のペースよりも少し大きくなります。図2の本日のプロットをよく見ると,これらの傾向が把握しやすいでしょう。
ここ数日の感染者数の報告数と解析の結果を見ると,報告数が解析数を少しながら上回っています。この後の数日の感染者数の如何に注目する必要があります。なお,図の見方は,以下,あるいは,COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご覧ください。
グラフの見方
感染確定日データの日別の感染者数の累計が,"累計obs"です。ただし,最新の値で割って,最大値が1となるようにした"累計obs'"をグラフにプロットしています。
累計obsに合致するようにロジスティック関数を最適化し,最適化した関数による計算値が"累計calc"です。この値を最新の累計obsで割った"累計obs'"と"累計calc'"をプロットしています。最新の"累計obs'"は1です。
"日別obs"は,日別の感染者数です。最適化した関数から計算される日別の感染者数が"日別calc"です。
最適化した関数から計算される内的自然増加率 r から計算される実効再生産数が,"τ×増加率"です。ここでの τ
(tau) は,感染者が感染させてしまう平均日数で,値は7を採用しています。初期の頃の"τ×増加率"に1を加えた数が基本再生産数に対応すると考えられ,東京都の第1波では2,第2波では1.55程度です。
日別の感染者数から見積もることができる"τ×増加率"に相当する値について,素のデータが曜日ごとのばらつきが大きいため,7日間の移動平均をとった値が"τ×平均"です。第1波について"τ×平均1",第2波について"τ×平均2"としています。最新の3日間では7日間移動平均が適用できませんが,動向を把握するために,最新日は実際の値そのもの,前日では3日間の,前々日では5日間の移動平均を採用しています。そのため,最新日と前日の値の変動の幅は大きくなっています。
これら"τ×平均"は関数モデルが妥当ならば,"τ×増加率"に次第に合致するはずです。"τ×平均1"は第1波の"τ×増加率"によく沿っていて,"τ×平均2"は変化しながらも第2波の"τ×増加率"に追随しています。
"累計calc'","日別calc"と"τ×増加率"は日付を指定すれば計算できるので,数日後の値もプロットしています。
日別感染者数がピークに達するとき,"日別calc"と"τ×増加率"は変曲点に来ます。変曲点に来ると"τ×増加率"が初めのころの値の1/2となります。"τ×増加率"と"τ×平均"が次第に小さくなって,半分となる時期が感染のピークです。このときの累計感染者数を2倍すると,最大値になります。
"日別calc"はピークを挟んでグラフでは左右対称となります(偶関数です)。ピークの前と後では日別感染者数,および,その累計値(こちらは奇関数)はほとんど同じ値になります。