2021/05/29

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [2021年5月10日,16日,29日更新]

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [2021年5月10日,16日,29日更新]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Tokyo [May 10th, 16th, and 29th updated, 2021]

 
東京都が本日2021年5月10日に発表した確定日別の感染者数を用いて,感染者数のプロファイルを解析しました。
 
[5月29日更新]
 
5月29日発表の確定日別の感染者数での更新です。図0-1が図3(旧図1)に,図0-2が図3(旧図2)に相当する解析結果です。第4波プロファイルの変曲点(ピーク)の日付が5月3日と変わりませんが,プロファイルの幅が後方に少し広くなり,感染者数の減少のペースが低下しました。
 
0-1. 東京都が5月16日発表の確定日別データ(5月28日まで)に基づく [図をクリックすると拡大]
 
図0-1の黒い破線の"第4波5/17"は,5月17日時点の解析で得た第4波のプロファイル("第3波D"と"第4波"の和)です。現在のプロファイルは,ピーク(和のピークは5月2日)の後(最近側)で"第4波5/17"よりも大きめになって,幅が広がっています。また,26日頃から"日別ave"が高めになっています。これらもあって,感染者数の減少のペースが低下しています。"日別ave"の高めはまだプロファイルには少ししか反映されていませんが,新たなプロファイルの始まりではないか,気になるところです。

第4波のプロファイルの環境収容力(全期間の感染者数)は49,200名,基本再生産数相当値(R0)は1.46,変曲点(ピーク)は確定日ベースで5月3日です。幅の広がりは,小さくなったR0にも表れています。第4波の感染者数として,第3波Dの半数を加算した時には,全期間の感染者数は59,800名となり,前回の47,300名よりも確かに増えています。
 
図0-2. 東京都の感染者数プロファイルの最適化の詳細(5月29日) [クリックで拡大]
 
図0-2の"τ×平均"と"τ×増加率"を見ると,既に日別感染者数のピークを越えてから26日も経過し,プロファイルの外形と減少の傾向は明瞭です。ただし,最近の報告値からの"τ×平均"の値が,理論値の"τ×増加率"よりも大きめになっていることが判ります。[更新は以上]
 
[5月16日更新]
 
5月16日発表の確定日別の感染者数での更新です。図1が図3(旧図1)に,図2が図3(旧図2)に相当する解析結果です。第4波プロファイルの変曲点(ピーク)の日付が5月3日と,およそ2日間だけ遅くなった程度で,特徴には大きな変更はありません。
 
1. 東京都が5月16日発表の確定日別データ(5月15日まで)に基づく [図をクリックすると拡大]
 
第4波のプロファイルの環境収容力(全期間の感染者数)は33,000名,基本再生産数相当値(R0)は1.62,変曲点(ピーク)は確定日ベースで5月3日となりました。 
 
R0が少し小さくなって環境収容力が微増し,プロファイルの幅がピークの後方にやや広がりました。これは前回の時点では大型連休とその後の週末の影響が未だ解消していなかったためで,データへの影響は15日までも及んでいました。日別obsとプロファイルの対応が改善されているのが図にも明瞭に観ることができます。第4波の感染者数として,第3波Dの半数を加算した時には,全期間の感染者数は47,300名となり,前回の42,200名よりは増えていますが,第3波Bの52,200名よりは少ない数です。
 
図2. 東京都の感染者数プロファイルの最適化の詳細(5月16日) [クリックで拡大]

"τ×平均"と"τ×増加率"の値が初期の半分を過ぎる時点が変曲点です。既に日別感染者数のピークを越えてから10日以上経過し,プロファイルの外形と減少の傾向は明瞭になっています。なお,これらカーブの初期の値に1を加えると基本再生産数に相当する値に,カーブの値が半分になる点が実効再生産数1に相当します。
 
兵庫県,大阪府に続いて東京都も第4波にピークを越え,変異ウイルスの影響がずーっと危惧されていましたが,これら都府県の経過はある意味で勇気づけられます。これらのピークの時期は緊急事態宣言が効果を表すと期待される時期の前です。実際に感染が惹起された時期はピークの1週間以上も前ですから,感染は行政の対応以前に峠を越えていたことになります。
 
再生産率の低下が第3波Bよりは緩やかなので,第4波はまだまだ続きます。[更新は以上です]
 
[5月10日]
 
前回のブログ(3月3日更新)の"東京都の感染者数プロファイルの解析"では,第3波を3つのプロファイルA,BとCで表しました。第3波Bが年末年始に大きなピークとして現れた第3波の主要なプロファイルです。そのピークの最大の確定日別の感染者数は1月6日の2,600名で,プロファイルの環境収容力(全期間の感染者数)は52,170名(Aと合計すると71,850名)で,基本再生産数相当値は1.83,変曲点(ピーク)は確定日ベースで1月9日でした。
 
その後の2月下旬以降は,感染者数は穏やかな増加をたどり,4月に入って,変異株の増加を反映したと思われる,増加数の増加がやや大きくなりました。本日の解析では,小さかった第3波Cに続く長期の第3波Dと,新たな第4波を反映する2つのプロファイルを追加しました。第3波Dは第3波Bとともに現れ,3月20日頃にピークを示すものの,長々と続いているプロファイルです。第4波のプロファイルは本解析では4月30日にピークが得られました。なお,本ブログの日付は確定日ベースで,報道発表データよりは概ね1日早くなります(1日差し引く)。なお,実効再生産数は感染が生じた日が基準なので,"再生産率"を実効再生産数に対応させる際は日付から7日を差し引いてグラフをご覧ください。
 
図3は,日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),本ブログの解析による日別の感染者数の計算値(日別calc),そして"再生産率"を挙げます。"再生産率"は"実効再生産数"に相当する値で,1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1でピーク,1よりも小さければ小さいほど収束に向かう傾向が大きくなります。 
 
今回の解析では,年末年始と5月の大型連休の報告される感染者数の減少,その直後の大きな増加が見られたことから,連休の影響を少なくするため,減少分に増加分を充当してします。減少分と増加分は解析したプロファイルの累計計算値からの偏差を算出し,日々の累計データに加算と減算を配分して行いました(最終の累計値は変更しません)。こうして補正した累計データから日別aveを計算し,図にプロットしています。年末年始については減少分の0.947が増加分で補填され,大型連休については0.996が補填されていることから,減少分のほぼすべてがその後の増加分に含まれていたことになります。また,日別aveと日別calcの一致が著しく改善されています。なお,本ブログの解析での精密化は,累計感染者数に対して計算値を最小二乗法で精密化していることから,このような補正は得られるパラメータへは僅かな影響しか及ぼしていません。
 
再生産率は,日別の感染者数が最小となった2月26日から1を上回りはじめ,第4波となりました。3月28日の1.15までゆっくりと増加し,その後はやや増加が大きくなりました。4月12日には最大値1.24まで上昇した後,減少に転じて,29日には1を切りました。現在は0.75となっていて,今後も緩やかなペースでの減少が見込まれます。なお,2回目の緊急事態宣言が解除となったのは3月21日なので,緊急事態宣言中にも関わらず第4波が発生し,進行したと言えます。

3. 東京都が5月10日発表の確定日別データ(5月9日まで)に基づく [図をクリックすると拡大]

第4波のプロファイルは,基本再生産数相当値(R0)が1.67,環境収容力(感染が収束するまでの全期間の感染者数)が約27,600名,変曲点が4月30日と得られました。東京都の緊急事態宣言の実施は4月25日からでしたので,これまでのデータのほぼすべてにその効果は表れていないもとと思われます。とくに,感染者数のピークの4月30日ならば,実際に感染が生じたピークの日は4月23日頃と考えられ,したがって緊急事態宣言は感染にピークには全く影響を与えなかったと考えられます。実際の感染,感染者数のピークに遅れて緊急事態宣言が発出されるという事態は,第1波と第3波と全く同じ状況です。
 
第3波Dのプロファイルは,R0が1.26と小さく,非常になめらかです。顕在化してくるのは1月終わりで,3月20日が変曲点,5月20日頃まは大きな感染者数の日々が続きます。そのため基本再生産数は29,100と大きく,第4波よりも大きい値です。ただ,4月7日以降は第4波のプロファイルの寄与が大きくなり,この状況は5月いっぱいは続きます。第4波の感染者数として,第3波Dの半数を加算した時には,全期間の感染者数は42,200名となり,第3波Bよりも少し少な目になります(5月16日訂正)。

図4に東京都の感染者数プロファイルの詳細を示します。第3波のプロファイルB(日別感染者数はD f3B calc),プロファイルC(D f3C calc),プロファイルD(D f3D calc),第4波のプロファイル(D f4 calc)と,これまでのすべてのプロファイルを合成した計算値(日別calc)を示しています。感染者数の累計値(累計obs')に計算値を最適化した結果(累計calc')も図4に示してあります(最新の累計感染者数で除して最大値が1となるように規格化した値です)。

図4. 東京都の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [クリックで拡大]

第4波についての"τ×平均"と"τ×増加率"の2つの指標もプロットしてあります。"τ×増加率"は内的自然増加率の理論的な変化を表し,実際のデータからの"τ×平均"が,最適化で得られるτ×増加率をよく追随していれば,解析モデルと実際のデータの一致が良好であることを意味します。第4波プロファイルは,これらの合致が良好で,感染の形態(変異株の構成が単一,など)が対象の期間にわたって一様であることを示唆します。ただし,第3波Dが同時期に存在し,次第に第4波のプロファイルが多く占めてきました。"τ×平均"と"τ×増加率"の値が初期の半分を過ぎる時点が変曲点なので,既に日別感染者数のピークは過ぎていることになります。

図の見方は,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご参考ください。

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