2021/03/03

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [2021年3月3日]

COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [2021年3月3日]

Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Tokyo [March 3rd, 2021]

 
東京都が本日2021年3月3日に報道発表した感染者数は316名でした。1月24日以降は減少のペースが緩やかになっています。感染者数のプロファイルの解析を本日の確定日データで更新しました。
 
前回のブログ(2月14日更新)の"東京都の感染者数プロファイルの解析"では,第3波を3つのプロファイルA,BとCで表しました。本日の解析では,Bには前回解析から変化がほとんど無く,Cは変曲点(日別感染者数のピーク)が遅くなり,幅も広がりました。第3波についての環境収容力(全期間の感染者数)の合計は約85,800名となり,前回よりも約6,700名増えました。以下の日付は確定日ベースで,報道発表データよりは概ね1日早くなります(1日差し引く)。なお,実効再生産数は感染が生じた日が基準なので,"再生産率"を実効再生産数に対応させる際は日付から7日を差し引いてグラフをご覧ください。
 
図1は,日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),本ブログの解析による日別の感染者数の計算値(日別calc),そして"再生産率"を挙げます。"第3波"としてはプロファイルA,BとCの和として日別の感染者数の計算値をプロットしてあります。黒い破線の"第3波B1/23"は,1月23日時点での解析での第3波Bの計算値で,緊急事態宣言の効果がまだ表れていないはずのものです。
 
"再生産率"は"実効再生産数"に相当する値で,1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1でピーク,1よりも小さければ小さいほど収束に向かう傾向が大きくなります。再生産率は,日別の感染者数のピークにあたる変曲点の1月10日に1を切ってからは1を下回っていますが,2月14日には0.83まで上昇しました。その後は緩やかな減少に転じ,現在は0.67となっています。再生産率が0.7近辺にあることから,日別感染者数の減少は1週間で約3割減(2週間で半減)の緩やかなペースです。
 
第3波はプロファイルBが卓越しています。なお,年初の日別感染者数の計算値からマイナス分はその後のプラス分でほぼすべてが相殺されています。基本再生産数相当値(R0)が1.9,環境収容力(全期間の感染者数)が約49,100名,変曲点が1月9日で,前回の結果とほぼ同じです。したがって,1月23日の解析結果(第3波B1/23)ともほぼ同じです。したがって緊急事態宣言はBには影響を与えなかったと考えられます。
 
1月24日頃から日別感染者数の減少のペースが鈍化しました。これは,減少するプロファイルBに増加するCが重なったためで,2月4日にはCがBを上回り,現在はBはほぼ終息となりました。プロファイルCはR0が前回解析の2.3から1.6まで低下し,プロファイルの幅が広がり増減が緩やかになりました。環境収容力は約5,200名から約14,000名に,変曲点は2月6日から14日へと遅くなりました。このようにパラメータの値が収束しにくい状態は,ミクロには小さなプロファイルが連続して起き,感染が継続的であることを意味します。マクロなプロファイルとしてのCはミクロの和(線形変換)なので,適宜の更新を行えば,現象を充分に記述する力はあり,過去のデータを如実に表現できています
 
緊急事態宣言が寄与してくる1月24日以降にCが明確に現われ,減少のペースが鈍化したように,感染者数だけを見れば思われがちです。実際には,緊急事態宣言が無い場合の東京都のデータが存在しないので,比較は本来できないものです。ただ,緊急事態宣言が発出されなかった茨城県の場合は,Bに対応するプロファイルは幅広になっている(基本再生産数相当値が小さくなる)こと,Cに対応するプロファイルがBに比べて大きめであることから,茨城県(北海道もほぼ同じ傾向)と比較すると,緊急事態宣言の効果が東京都の場合は小さいながらもあったと言えそうです。それでも,2月中旬以降のプロファイルCの挙動を見ると,パラメータが変化し続けており,この傾向が続くと,現象のペースがさらに鈍化し,あるいは新たなプロファイルが出現して増加に転ずるかもしれません。
 
メモ: 感染者数がこのように増加に転ずることを"rebound"と呼んでいる方もおられますが,変な用法です。rebound は improve(改善) の意味合いがあり,resurgeの使用がふさわしいでしょう。たとえば,While COVID-19 cases resurge again, stock prices rebound.

1. 東京都が3月3日発表の確定日別データ(3月2日まで)に基づく [図をクリックすると拡大]

図2に東京都の感染者数プロファイルの詳細を示します。第3波に先行するプロファイル(日別感染者数はD f2' calc),第3波のプロファイルA(D f3A calc),プロファイルB(D f3B calc),プロファイルC(D f3C calc)とこれまでのすべてを合成した計算値(日別calc)を示しています。感染者数の累計値(累計obs')に計算値を最適化した結果(累計calc')も図2に示してあります(最新の累計感染者数で除して最大値が1となるように規格化した値です)。

図2. 東京都の感染者数プロファイルの最適化の詳細 [クリックで拡大]

第3波の3つの近接・連続するプロファイルのパラメータは,一連の累計感染者数データから求めた便宜的なもので,和としてのプロファイルの方が意味のあるものです。第3波についての"τ×平均"と"τ×増加率"は第3波BにCの寄与を繰り込んだものです。この2つの指標が合致していれば,データへのプロファイルの最適化が良好であることを意味します。ここ数日の
"τ×平均"が高くなっているのが気になります。あらたなプロファイルの始まりでしょうか?

図の見方は,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご参考ください。