COVID-19 東京都の感染者数プロファイルの解析 [7月3日,10日更新: 2021年]
Profile analyses of COVID-19 affected numbers in Tokyo [July 3rd and 10th updated; 2021]
東京都が発表した確定日別の感染者数を用いて,感染者数のプロファイルを解析しました。
本文は2021年7月3日のデータによるもので,10日のデータによる解析を追加・更新しました。6月の解析についても後述してあります。
[7月10日追加] 2021年7月10日に発表した確定日別データによる
東京都感染者数(7月10日までの確定日データ)では,第5波の傾向が先週に入って変わりました。
先週に入ってからの増分が影響し,ピークが7日間も遅くなっています。図5は図1に相当するものです。
第5波のプロファイルの累計感染者数(環境収容力)は約49,000名となり,第4波のプロファイルよりも大きく得られました。基本再生産数相当値(感染の始まりの再生産数)は1.54,変曲点(ピーク)は7月22日 となりました。9日時点での再生産率(実効再生産数相当値)は1.19で,1週間後は日別感染者数はおよそ1.2倍となるペースです。
この傾向に重みを付加したプロファイル(黒い破線)では,ピークが8月1日まで遅くなって,プロファイルからの累計数が第4波(環境収容力で約44,000名)の倍の約85,000名まで増えてしまいます。
図5. 東京都が7月10日発表の確定日別データ(7月9日まで)に基づく [図をクリックすると拡大] |
図6は図2に相当します。東京都は6月21日までは緊急事態宣言の期間でした。それにも関わらず感染者数は増加の傾向にありました。
図5のグラフを注視すると,6月27日からの週は日別感染者数はやや少なく,7月4日からの週は感染者数は多めになっています。まん延防止等重点措置に入って2週間を経過した先週の7月4日以降は増加のペースが大きくなっています。これにはデルタ株のまん延に起因しているかもしれません。
図6の"τ×平均2"に,減少と増加の様子がより明瞭に現れています。この増加のため,ピークが遅くなりました(まだ値が半減していないのでピークは未確定です)。第4波の"τ×増加率1"と"τ×平均1"は一致度が良好で,値も小さくなって,既に終息状態にあります。なお,図5の黒い破線は,7月4日からのデータについて,最小二乗法の重みを増して得たものです。
緊急事態宣言の期間中の感染者数増加の傾向にもかかわらず,延防止等重点措置に移行した結果として,延防止等重点措置の期間の3週間の感染者数への寄与は,7月11日に緊急事態宣言にまた戻ったとしても,今から2週間は続きます。その間には4連休,オリンピックの開始があります。連休が明けた後は,今年の新年の後,大型連休の後に見られたような,大きな日別感染者数の増大が現れるのでしょうか。一方では,ワクチン接種が進行し,その効果が徐々に現れるのではとの期待の気持ちもありますが,接種の効果は徐々に発現するものと思われます。
なお,東京都の過去の緊急事態宣言とまん延防止等措置の発出は,感染者数の減少にはほとんど効果が無いとの公的な定量的な評価(国立感染症研究所の解析チーム)があり,また,私自身のこれまでの解析からも同様に効果はほとんど無いとの所感です。7月下旬から8月上旬の推移は,最後の山場とも思われ,多大な留意と細心の対処が必要です。
[7月3日] 東京都が2021年7月3日に発表した確定日別データによる
前回のブログ(5月29日更新)の"東京都の感染者数プロファイルの解析"では,第3波を4つのプロファイルA,B,CとDで表していました。第3波Bが年末年始に大きなピークとして現れた第3波の主要なプロファイルです。第4波はただ1つのプロファイルで表していましたが,6月に入って,第4波プロファイルでは記述しがたい感染者数の増加が認められたので,新たなプロファイル"第5波"を導入しました。
図1は,日別の感染者数(日別obs),その7日間移動平均値(日別ave),本ブログの解析による日別の感染者数の計算値(日別calc),そして"再生産率"を挙げます。"再生産率"は"実効再生産数"に相当する値で,1よりも大きければ大きいほど感染は拡大し,1でピーク(または底の値),1よりも小さければ小さいほど減少・収束に向かう傾向が大きくなります。
第4波プロファイルを越える感染者数の乖離増加分が,5月17日頃に現れだしました。6月12日の時点では,増加分を反映する新たなプロファイルを第4波Bとして,その増加の傾向を指摘しました(図3として後述)。6月26日には,このプロファイルを"第5波"として,その特長を調べました(図4として後述)。今回のプログでは,第5波が7月12日頃に変曲点(ピーク)に達し,プロファイルの環境収容力(全期間の感染者数)が第4波のプロファイルよりは少し数が小さくなると考えられます。
第4波のプロファイルは,5月3日が変曲点(ほぼピークに相当)で,基本再生産数相当値(R0)は1.49,環境収容力はおよそ46,000名です。なお,本ブログの日付は確定日ベースで,報道発表データ(当日分は1%程度,前日分が約80%,残りがその前の日付の分です)よりは概ね1日早くなります(1日差し引く)。なお,実効再生産数は感染が生じた日が基準なので,"再生産率"を実効再生産数に対応させる際は,日付から7日を差し引いてグラフをご覧ください。
再生産率は,日別の感染者数が最小となった6月11日から1を上回りはじめ,第5波となりました。6月25日の1.27まで増加し,その後は減少し始めています。増加と減少のペースは第4波よりも早く,現在は1.21と依然として大きな値ですが,7月12日は1よりも小さくなってピークとなる見込みです。
第5波のプロファイルの現在の値は,変曲点が7月12日,基本再生産数相当値(R0)が1.65,環境収容力が32,000名です。現在はまだ変曲点に達していないため,これらの数値の確度は高くありません。変曲点を過ぎておおむね1週間を過ぎると確度はとても高くなります。7月12日の感染者数の計算値(平均の日別aveに近い)は710名で,7月22日には520名の6月26日頃の値に近くなります。なお,週内の曜日ごとの変動を考慮すると,日別感染者数は7月13日頃が最大で930名,6-9日と14-16日には850名程度の大きな数が算出されています。なお,報道発表ベースでは7月14日のように,プラス1日で,やや少なめの50名ほどを減じた数が見込まれます。
図2に東京都の感染者数プロファイルの詳細を示します。第3波のプロファイルB(日別感染者数はD f3B
calc),プロファイルD(D f3D
calc),第4波のプロファイル(D f4
calc),第5波のプロファイル(D f5
calc)と,これまでのすべてのプロファイルを合成した計算値(日別calc)を示しています。感染者数の累計値(累計obs')に計算値を最適化した結果(累計calc')も図4に示してあります(最新の累計感染者数で除して最大値が1となるように規格化した値です)。
今回の最適化解析では,確定日データとして報告される週内の感染者数が土,日,月曜日が少なめ,火,水,木,金曜日が多めになっています。これは週末に少なく診断,確定された感染者数が,その後の日々で補填される形で増えるためです(休祭日があると同様になります)。過去の曜日ごとの減少と増加を統計的に扱い,感染者数の減少と増加の変動を規格化し,変動率を週内で平均化するとほぼ1になります。これらを土曜日から金曜日まで積算すると,週内の変動はほぼ相殺されます。金曜日の累計感染者数は変動の影響を受け難いことから,金曜日の値は変更せずに,週内の変動を補填して補正しています。こうして補正した累計データから日別aveを計算し,図にプロットしています。この補正により,日別aveと日別calcの一致が著しく改善されています。なお,本ブログの解析での精密化は,累計感染者数に対して計算値を最小二乗法で精密化していることから,このような補正は得られるパラメータへは僅かな影響しか及ぼしていません。
第4波と第5波についての"τ×平均"と"τ×増加率"の2つの指標もプロットしてあります。"τ×増加率"は内的自然増加率の理論的な変化を表し,実際のデータからの"τ×平均"が,最適化で得られるτ×増加率をよく追随していれば,解析モデルと実際のデータの一致が良好であることを意味します。第4波プロファイルは,両者の値が0に近づいて既に終息の状態にあり,これらの合致が良好で,感染の形態(変異株の構成が単一,など)が対象の期間にわたって一様であることを示唆します。第5波については,"τ×平均2"と"τ×増加率2"の値が初期の半分を過ぎる時点が変曲点なので,まだピークには達しておらず,その日は7月12日頃と推定されます。
図の見方は,"COVID-19 感染者数プロファイルの計算モデルと見方"をご参考ください。
[6月12日時点]
東京都6月12日発表の確定日別の感染者数で,その日の解析です。図3が図1に相当する解析結果です。
第4波Aが第4波のプロファイルで,第4波Bが本日の第5波のプロファイルとなりました。
図の黒い破線の"第4波5/17"は,5月17日時点の解析で得た第4波のプロファイル("第3波D"と"第4波"の和)です。第4波Bが5月初めに現れても,第4波のプロファイルは6月11日の時点では"第4波5/17"とほぼ同じで,破線の"第4波5/17"よりも上の部分が第5波になっていること,上の部分がロジステック関数で表されることが判ります。この寄与は,既に日感染者数の半分を越えています。また,赤い矢印の箇所で増加傾向が明瞭に表れています。
[6月26日更新]